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第8話

작가: ジュウイチ
風人は診療所を辞め、私と一緒にこの小さな町で、新しいクリニックを開いた。

交代で患者の診察をしている。

生活は、言ってしまえば退屈なものだ。

同じ日々の繰り返し、決まりきった仕事。

一日、また一日と、時間はただゆっくりと流れていく。

けれど、私はこの穏やかでありふれた日常を、心から慈しんでいた。

一年後。

スイス、アルプス山脈の麓。

中腹に隠れるように建つこの高級療養所は、絶景の中にありながら厳重な警備に守られていた。富裕層が「厄介者」を飼い殺すための、黄金の檻だ。

私は国内の医療機関の代表として、視察と交流のためにここを訪れていた。

手入れの行き届いた庭園を抜け、広々とした芝生の上に、私は彼の姿を見つけた。

渡は患者服を纏い、陽だまりの中で胡坐をかいて、たどたどしい手つきで積み木を積み上げていた。

柔らかな日差しが彼の濃い黒髪に落ち、その姿はどこまでも清らかで無害に見えた。

看護師が牛乳を持って歩み寄る。

「菊川さん、牛乳を飲みましょう。体にいいですよ」

渡が顔を上げた。かつて数多の女を狂わせたその顔には、今や幼子のような茫然とした表情しかない。

私は
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    風人は診療所を辞め、私と一緒にこの小さな町で、新しいクリニックを開いた。交代で患者の診察をしている。生活は、言ってしまえば退屈なものだ。同じ日々の繰り返し、決まりきった仕事。一日、また一日と、時間はただゆっくりと流れていく。けれど、私はこの穏やかでありふれた日常を、心から慈しんでいた。一年後。スイス、アルプス山脈の麓。中腹に隠れるように建つこの高級療養所は、絶景の中にありながら厳重な警備に守られていた。富裕層が「厄介者」を飼い殺すための、黄金の檻だ。私は国内の医療機関の代表として、視察と交流のためにここを訪れていた。手入れの行き届いた庭園を抜け、広々とした芝生の上に、私は彼の姿を見つけた。渡は患者服を纏い、陽だまりの中で胡坐をかいて、たどたどしい手つきで積み木を積み上げていた。柔らかな日差しが彼の濃い黒髪に落ち、その姿はどこまでも清らかで無害に見えた。看護師が牛乳を持って歩み寄る。「菊川さん、牛乳を飲みましょう。体にいいですよ」渡が顔を上げた。かつて数多の女を狂わせたその顔には、今や幼子のような茫然とした表情しかない。私は歩み寄り、彼の前でしゃがみ込んだ。私の影が彼を覆い、作りかけの積み木の家が崩れ落ちた。渡は呆然と顔を上げ、私を見つめた。長く、長く。「ゆ……ゆま……」彼は手にした積み木を放り出した。不明瞭な発音だったが、それは私が嫌というほど聞き慣れた名だった。恐る恐る手を伸ばし、探るように、そっと私の服の裾を掴んだ。その顔には、失った宝物を見つけたような大きな歓喜が広がっていく。「……帰って、きたの?」私は、裾を掴む彼の手に視線を落とした。爪は短く整えられているが、薬の副作用のせいか、指先は不自然に浮腫んでいる。「もう行かないで……ね?」渡は顔を上げ、縋るような目で私を見つめた。不意に、遠い昔の記憶が蘇る。彼がまだ菊川家の権力者ではなく、私もただのボディーガードだった頃。酔った彼は、今と同じように私の裾を掴んで離さなかった。「由真、行かないでくれ。側にいてくれ」……残念だけど、あの由真は、三年前のあの銃撃の中でとっくに死んだのよ。私の前半生は、多くの人から見れば波乱万丈で劇的なものだっただろう。小説やドラマのヒロインのように、彼を激しく

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