共有

第8話

作者: 星野南
時間が経つにつれ、透真と美雪が連れ立って行動する姿は、ますます人目につくようになった。透真は美雪に細やかな気遣いを見せ、2人きりで過ごすところを何度もメディアに撮られていた。

ネット上には、2人が近々結婚するのではないかという噂が溢れ返った。もはや、透真に私という妻がいることさえ、誰も覚えていないようだった。

世間が騒ぎ立てる一方で、私からの連絡は一向に途絶えたまま。メッセージにも返信せず、電話にも出ない私に、透真の表情は日に日に険しくなっていった。そして、再び私を探すよう裕介に依頼した。

「澪はまだ見つかってないのか?」

裕介は困ったように眉を下げる。

「まだだ。まさか、跡形もなく消えるとは思わなくて……」

透真はやり場のない苛立ちを噛み殺し、歯を食いしばった。

「引き続き探してくれ。地面を掘り返してでも、必ず見つけ出せ」

「……わかった」

裕介はそう答えるしかなかった。

その様子を見ていた遼が、嫌味たっぷりに口を挟んだ。

「澪もずいぶん偉くなったもんだな。お前からの連絡まで無視するとは。まさか、どこぞの金持ちを見つけて、お前を捨てたんじゃないだろうな?」

透真は冷ややかな目を遼に向けた。

「そんな度胸があるなら、好きなだけ隠れていればいい。なんなら、二度と顔を見せるんじゃない!」

言い終えるや、手にしていたグラスを投げ捨てた。

床に叩きつけられたグラスは、激しい音を立てて粉々に砕け散った。

透真がここまで激昂する姿を、裕介は見たことがなかった。思わず遼に目をやったが、2人ともそれ以上、口を開くことはできなかった。

その後の数日間、透真と美雪は堂々と連れ立って出歩くようになった。さまざまなパーティーに2人で出席し、メディアはこぞって「美男美女のカップル、ついに結婚か」と大々的に報じた。

一方で、私が思いを募らせて2人の仲を邪魔していたのだと、皮肉交じりに書き立てるメディアもあった。これで透真と美雪がようやく結ばれるのだと、安堵する声さえ上がった。

さらには、私と透真、美雪の過去を掘り起こし、あれこれ詮索する記事まで出始めた。

あるオークション会場でのこと。

透真は16億のダイヤモンドネックレスを落札した。

「氷室様、落札おめでとうございます。後ほどスタッフがご自宅までお届けいたします」

「いや、結構です」

透真は立ち上がると、美雪の手を親しげに取った。

「月島さんに渡してください。彼女のために買ったものです。フラワーズ賞での受賞を願ってな」

その瞬間、会場はどよめきに包まれた。美雪は感激のあまり、目に涙を浮かべていた。

その隙を逃さず、一人の記者が大胆にも質問を投げかけた。

「氷室さん、最近ネット上では、氷室澪さんが月島さんをいじめていたという噂が広がっています。この件について、どうお考えですか?」

「特に話すことはありません」

透真の顔から笑みが消えた。

カメラに向けられたその眼差しは、まるでその向こうにいる私を見据えているかのようだった。

「法を犯した者は、いずれ法によって裁かれます。それだけです」

その発言に、会場のあちこちから驚きの声が上がった。

「氷室さん、それは澪さんが法律に違反しており、法的な処罰を受けるべきだとお考えなのですか?」

「澪さんは、具体的にどのような人物なのでしょうか?」

「氷室さん、もう少し詳しくお聞かせください!」

記者たちが次々と質問を浴びせるなか、透真は取り合うことなく背を向け、会場を後にした。

「透真!」

美雪はこうした場面にも慣れているのか、少しも動じなかった。笑顔で記者たちに挨拶を返すと、彼の後を追って会場を出た。

「どうしたの?何か嫌なことでもあった?」

「別に」

透真は車のドアを開けた。

「送っていく」

「うん」

美雪は何か言いかけたものの、透真の険しい表情を見て、唇を噛んで言葉を飲み込んだ。

車内にしばらく沈黙が続いた後、彼女は気遣うように口を開いた。

「最近、澪さんのことで悩んでいるの?なんだか、ずっと苛立っているように見えるわ」

透真は何も答えなかった。

美雪はさらに続けた。

「澪さんは無茶をするような人じゃないから。きっと大丈夫よ」

「あいつの心配なんかしていない」

美雪の表情が固まった。

もともと彼女は、透真が私のことを気にかけているのではないかと推測していただけだった。けれど、彼があまりにも素早く否定したことで、かえってその疑いが確信に変わった。

本当に心配していないのなら、急いで否定する必要もないはずだ。

それでも美雪は笑みを浮かべたまま、尋ねた。

「じゃあ、どうして暗い顔してるの?」

話をしているうちに、車はマンションの前に到着していた。

「そんなことはない。今日は疲れただろう、早めに休むようにな」

美雪の笑顔が一瞬、こわばった。

それでも、すぐに表情を取り繕う。

「うん……わかった。おやすみ」

彼女が車を降り、ドアを閉めた直後だった。

透真のスマホが鳴った。画面を見た彼の眉が、ぴくりと動く。

「氷室透真さんのお電話でしょうか?」

「はい」

「実は本日、西城通りの茂みで女性の遺体が発見されました。亡くなった方が、奥様の氷室澪さんかどうか、ご確認いただきたくご連絡しました」

スマホを握る透真の手に、ぎゅっと力がこもった。

呼吸さえも、張り詰めていく。

「……今、何と言った?」

この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード

最新チャプター

  • 遺骨になった私を夫は愛してやまなかった   第44話

    判決が言い渡され、私もほっと息をついた。「当然の報いよ!自分がやったことの責任くらい、ちゃんと取ってもらわないと!」楓は目を赤くして、憎しみを込めた声で吐き捨てた。傍聴席にいた人たちも怒りを抑えきれず、次々と立ち上がり、手錠をかけられた美雪に罵声を浴びせた。美雪の両親や兄弟は、気まずそうにうつむいていた。もう、彼女を月島家の人間だと認めることさえ嫌なのかもしれない。楓が今にも靴を脱いで美雪に投げつけそうになったのを見て、私は思わず笑いそうになった。本当に、相変わらず無邪気でかわいい子だ。どうか、楓には幸せになってほしい。私のようなつらい人生を歩むことなく、自分だけの幸せを見つけてほしい。「月島さんの財産はすべて寄付され、所有していた不動産もすでに売却されました。あとは裁判所の最終的な判決を待つだけです。これで、澪さんもようやく安らかに眠れるでしょう」「……そうだな」サングラスをかけた透真は静かに頷くと、背を向けてその場を後にした。取材しようと大勢の記者が追いかけてきたが、秘書と弁護士がすべて押しとどめた。私は美雪が刑務所へ戻っていくのを見届け、それから再び家へと戻った。ところが、家の中に入ると、窓という窓のカーテンがすべて閉め切られていた。部屋には煙が立ち込め、息が詰まりそうなほどだった。透真はどこにいるのだろう?不審に思いながら辺りを見回していると、薄暗い部屋の隅に、すっかり生気を失った彼の姿を見つけた。床に座り込み、左手には酒瓶、右手には煙草。目の前には、私の遺骨が納められた骨壺が置かれていた。酒を一口飲んでは、煙草を吸う。そんな姿は、まるで水を失って枯れかけた植物のように、すっかり生気をなくしていた。目尻には、今にもこぼれ落ちそうな涙が浮かんでいる。――どうしたの?そう尋ねたかった。けれど、もし私の声が聞こえてしまったらと思うと、怖くてたまらなかった。結局、何も言えず、ただ彼を見つめることしかできなかった。私の願いは、もう叶った。これからどこへ向かうのか、自分がどうなるのか、正直わからない。だからこそ、もう彼には関わらないほうがいいのだろう。「澪、俺が悪かった。本当にごめん……美雪なんかを信じるべきじゃなかった。自分の気持ちを確かめるために、あいつに近づくべきじゃなかった。もし

  • 遺骨になった私を夫は愛してやまなかった   第43話

    「今、何と言った?澪を殺して、遺体をあんな場所に捨てさせたのは、お前だったんだな?」「と、透真……」ようやく我に返ったらしい美雪は、目に動揺を浮かべ、慌てて首を横に振った。「ち、違う……っ、痛い!」透真があまりにも強く肩をつかんでいるため、美雪は目に涙を浮かべて悲鳴を上げた。手を離してほしいと訴えても、透真の眼差しはますます冷たくなるばかりだった。「言い逃れをしても無駄だぞ!今の話は、この耳でしっかりと聞いた。お前が人を雇って澪を殺させたんだろう!どうしてそんなことをしたんだ!」「違う、私じゃない!私は何も知らない!本当に何も知らないの……!」「まだとぼけるつもりか!」透真は美雪を睨みつけた。「俺は心のどこかで、まだお前を信じていた。俺の信頼を裏切るような人間じゃないと、そう願っていた。けど、どうやら俺は甘かったらしい。信じていたばかりに、大切な人を殺されてしまった」透真が手を突き放すと、美雪はよろめきながら数歩後ずさった。そして、ドアの枠にもたれて立っている人物に気づいた途端、その顔から血の気が引いた。「桐谷さん……?ち、違う。私じゃない……透真も何か言ってよ!」透真は沈黙したままだった。けれど、その目に宿る憎悪が、彼の気持ちを何より雄弁に物語っていた。健吾は手にしたボイスレコーダーを軽く振ってみせると、迷いなく、銀色に光る手錠を取り出した。「月島美雪さん。あなたには、氷室澪さんを殺害した容疑があります。署まで同行をお願いします。あなたには黙秘権があります。また、あなたの供述は法廷で証拠として使われる可能性があります」「違う!私じゃない!私は何もしていないし、何も知らないわ!」美雪は必死に抵抗しながら、透真に助けを求めた。「助けて!透真、お願い、助けて!澪さんを殺したのは私じゃない!本当に私じゃないの!」透真は少しも動じなかった。「前も言ったはずだ。お前が何をしようと、俺は大抵のことなら許せた。だが、俺には譲れない一線がある。澪は、その一線なんだ」その一言に、美雪はその場で凍りついた。私もようやく、胸のつかえが下りた。何日も彼女につきまとい、あれこれ探りを入れてきたけれど、どうやら苦労した甲斐はあったらしい。ところが、みんながひとまず安堵した、その瞬間だった。美雪が

  • 遺骨になった私を夫は愛してやまなかった   第42話

    私は口元を押さえ、声が漏れないよう必死にこらえた。それでも涙は止まらず、頬を伝ってこぼれ落ちていく。透真は私の名を呼びながら、必死に追いかけてきた。しばらく走り続け、どれだけ待っても私が姿を現さないと悟ったのか、彼はついに力尽き、その場に膝から崩れ落ちた。「澪、本当に悪かった。もう許してくれなくてもいい。ただ、一度だけでいいから、姿を見せてくれないか?澪……お願いだから」ごめんね、透真。もう、それは叶えてあげられないの。かつては自信に満ちあふれ、意気揚々としていた透真が、急に10歳も老け込んでしまったように見えた。これ以上見ていられず、私は目を背けた。その場を離れると、美雪の病室へ戻った。胸にたまった思いを吐き出したくても、それを聞いてくれる相手はいない。どうせ美雪に何を言ったところで、まともな反応など返ってこない。そう思うと、かえって気兼ねする必要もない気がして、私は思い切って、胸の内をさらけ出すことにした。「月島さんは、透真に抱きしめてもらったこと、ある?ただ抱きしめるだけじゃないんだよ。まるで、自分の腕の中に閉じ込めてしまいたいとでもいうみたいに、ぎゅうっと強く抱きしめるの。今思えば、あの人、本当はずっと愛情に飢えていたのかもしれないね。息ができなくなるんじゃないかってくらい、いつも強く抱きしめてくるんだもの。まったく、困った人だったよ」自分で言っておいてなんだけど、ずいぶん気取ったことを口にしてしまった。思わずぞっとした。まさか、こんな台詞を平然と口にできるなんて。自分でも信じられなかった。「キスしたことは?透真はね、息ができなくなるくらいキスしても、なかなか離してくれないの。甘えてくる子犬みたいにべったりで、もう、うっとうしいったらないんだから。それに、あの人ってすごく子どもっぽいの。私が怒らせると、罰だとか言ってキスしてくるんだけど、これがまた容赦ないの。私が謝るまで、絶対に解放してくれないんだから。ねえ、あなたはどう思……」ガシャン!顔を赤らめながら話していた私の言葉を遮るように、美雪が突然、手にしていたコップを投げつけた。水しぶきが飛び散り、コップは床に落ちて粉々に砕け散る。「いい加減に黙りなさい!」ようやく怒ったか。いくら名女優の美雪でも、こんな話を聞かされて平静を装い続け

  • 遺骨になった私を夫は愛してやまなかった   第41話

    「知ってる?あなたが私を嫌っているように、私だってあなたが大嫌いなの。いつも泣いてばかりで、まるで自分だけが被害者みたいな顔をして。見ているだけでイライラするし、吐き気がする。そういえば、透真から聞いたことはないでしょうけど、あの人、女が泣くのが大嫌いなんだよ。特にあなたみたいに、自分だけが世界中の不幸を背負っているみたいな顔で、いつまでもめそめそ泣く女はね。見ているだけで気が滅入るんだって」ガシャン!美雪が手に取ったばかりの茶碗が、床に落ちて砕けた。「月島さん、大丈夫ですか?火傷はありませんか?」看護師はぎょっとして、美雪の手に火傷がないか、何度も確かめた。一方、美雪は何が起きたのかもわからないといった様子で、ただ看護師の顔をじっと見つめていた。けれど、私は見逃さなかった。美雪の眉が、ぴくりと動いたのを。――やっぱり!思わず口元が緩んだ。同時に、胸のつかえがすっと下りる。彼女は今まで精神を病んだふりをしていたのだ。私の言葉に反応したということは、何もわからなくなったわけではない。いつまでそうやって逃げ続けられるか、見ものだね。そう思って、私はイタズラを続けた。善人でいるより、悪人になるほうがずっと簡単だ。私は長い間、ずっと我慢してきた。だからこそ、胸の奥に押し込めていた言葉を一気に吐き出すのは、たまらなく気持ちがよかった。「知ってる?透真はね、私が彼を好きになるずっと前から、私のことを愛してくれていたの。あの人がそこまで深く私を想ってくれていたなんて、私自身、知らなかったんだよ」それが本当かどうかなんて、私にもわからない。もちろん、美雪だって、わざわざ本人に確かめたりはしないだろう。今の私は、美雪を悔しがらせるための言葉なら、いくらでもすらすらと思いつくことができた。「透真からプレゼントをもらったことはある?あの人、私のために飛行機の模型を手作りしてくれたことがあるんだよ。しかもね、『どこまでも自由に空を飛んで、広い世界を駆け巡ってほしい』って言ってくれたの。私が体調を崩したときは、ずっとベッドのそばについていてくれたし、料理を作って食べさせてくれたこともあった。花を買って帰ってきたくせに、照れくさかったのか、『拾ってきた』なんて言い張ることもあったんだよ。これで、透真は私に一筋だった

  • 遺骨になった私を夫は愛してやまなかった   第40話

    「月島さん?」「……」「月島美雪さん、私のこと、わかりますか?」「……」健吾が何度呼びかけても、美雪はまったく反応を示さなかった。「やはり心を病んでいるかもしれませんね。これでは、しばらく何も聞き出せそうにありません」透真は眉をひそめた。「医師を呼んでくる」ほどなくして医師がやってきて、美雪の様子を診察した。診断は、ストレスが溜まっているため、精神に異常をきたしている可能性がある、というものだった。私は、ベッドの上で膝を抱え、ぼんやりと座り込む美雪を見つめた。けれど、どうしても医師の話を信じきれなかった。確かに、ここ最近、私はちょっとした仕掛けで彼女を怖がらせてきた。彼女自身の口から真実を語らせるためだったけれど、だからといって、精神がおかしくなってしまうほどではないはずだ。彼女の証言が今後の捜査を左右するという肝心なところまで来ているのに、本人が急に精神疾患を患うなんて、さすがに納得はいかなかった。その夜、みんなが帰ったあとも、私は病院に残り、美雪の一挙一動を見張っていた。精神に異常をきたしたとはいえ、美雪の生活は、それまでと大きく変わったわけではなかった。ただ、誰とも口をきかなくなり、スマホを手に取ることもなくなった。食事はきちんととるし、トイレにも行く。身支度も普段どおりに済ませる。けれど、それ以外の時間は、ただ座ったまま、ぼんやりと過ごしていた。そんなふうに一日中過ごすことも珍しくなかった。目はうつろで、ときおり何かをつぶやいても、その声はあまりに小さく、そばにいる人間にも聞き取れない。「ねえ、あなた……いったい何を言ってるの?」また美雪が、ぼそぼそと何かをつぶやいた。気になった私は、たまらず彼女に近づき、声をかけた。けれど、美雪は答えなかった。顔を上げることもなく、まるで私の存在など気にも留めていないかのように、ひたすら独り言を続けていた。何を言っているのか気になって仕方がない。いっそ口をこじ開けて、舌がどう動いているのか確かめたいくらいだった。もちろん、そんなことができるはずもないのだけれど。「月島さん、病気のふりをしたところで、責任から逃れられるわけじゃないんだよ。私をあんな目に遭わせたんだから、たとえ本当に病気になったとしても、罪を問われることに変わりはないんだよ」

  • 遺骨になった私を夫は愛してやまなかった   第39話

    「木下誠さんは、あなたの元夫ですね?」健吾の言葉に、私はまたしても驚かされた。美雪はやっぱり結婚していた。それも、相手が誠だった。いったい、2人はどうやって知り合ったのだろう?私の記憶では、誠は高校時代、成績があまりよくなかった。両親が離婚したあと、どちらの親にも引き取ってもらえず、いつも不良仲間とつるんでいた。一方の美雪は、飛び抜けて優秀というわけではなかったものの、実家は裕福だったはずだ。そんな2人が、どうして結婚したのだろう。「あなたたちは3年間、夫婦でした。離婚したあとも、ずっと連絡を取り合っていたんですね?木下さんが亡くなった夜、どうして彼と一緒にいたんですか?彼に無理やり連れていかれたんですか?それとも、自分の意思で会いに行ったんですか?彼が亡くなる直前、2人はどんな話をしたんです?」健吾は辛抱強く、何度も質問を繰り返した。けれど、美雪はただ黙って涙を流すばかりで、一言も答えようとしなかった。何度も病院へ足を運んでいた健吾も、さすがに苛立ちを隠せなくなった。「月島さん、何があったのかはわかりませんが、きちんと話してもらわないと、こちらもあなたを助けることができません。泣いているだけでは、何も解決しませんよ」いつまで経っても話が進まないのを見かねて、透真が口を挟んだ。「元夫が目の前で死んだんだ。彼女も、まだ気持ちの整理がついていないんだろう。俺から話を聞いてみてもいいか?」健吾は透真を一瞥すると、手帳をしまい、病室を出ていった。透真はこっそり、録音を始めた。「美雪、いったい何があったんだ?話してくれないか?今は俺たち2人だけだから」「と、透真……」しばらくして、美雪はおずおずと顔を上げた。目はすっかり腫れ上がっていた。「誠と知り合ったのは、ほんの偶然だった……でも、彼に無理やり関係を迫られて、結婚までさせられたの。結婚してからは、お酒とギャンブルに溺れるようになって、少しでも気に入らないことがあると、私に暴力を振るった。もう耐えられなくなって、逃げ出したの。そのあと、彼から『金を払えば離婚してやる』と言われて、私はその条件をのんだ。けど、それで終わりじゃなかった。結婚していたことを誰にも知られたくなければ、金を出せって……そのあともずっと脅され続けたの。もう彼の脅しには耐え

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status