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錬金術師は国から追われる
錬金術師は国から追われる
Autor: 缶小豆

1国を揺るがす錬金術師の駆け落ち

Autor: 缶小豆
last update Fecha de publicación: 2026-07-15 13:44:54

「何か知ってることはないのか? 一番弟子だろ!」

ミレイユの師匠であり、親代わりでもあった錬金術師アリエルと、この国の総司令官ダリウスが国の金を横領して駆け落ちした。

「そういえば、昨夜は帰って来なかったけど......まさか?」

そんな話を聞いたのは、事件が起きた昼のことだった。

街で評判の錬金術師の店『月影亭』は、何でも揃う錬金雑貨屋で、アリエルはそのお店のオーナー兼商品作成、その弟子であるミレイユがお店の実質的な経営や中の商品の管理を行っていた。

石造りの古い建物だったが、お店は清潔感にあふれ、明るく、老若男女問わず訪れやすいお店である。

そこには、師匠アリエルの錬金術の高度で他に引けを取らない技術と適正な価格で届けたいという商売の心が詰まっていた。

だから、このお店は街で知らない人はいないほどに有名になっていたのである。

だが、国の役人が店に押しかけた瞬間、客は慌てて退散し、店員たちの小さな叫び声が響く。

「師匠が総司令官と駆け落ち……?」

ミレイユは思わず立ち上がった。

「国の金を横領?そんなはずない!ここには何もありません。絶対何かの間違いよ!」

でも、私のその声を役人たちは聞こうともしない。私は、証拠隠滅を図らないようにと後ろ手に縛られる。

役人たちは、店の大切な商品が入った扉を乱暴に開け、平気で床に落としていく。

「や、やめてください!大切な商品なんです。中には貴重な素材で作られたものもあるんですから!」

一つの商品を作るのに、時には一ヶ月以上かかるものだってあるのだ。

だが、役人に捕まった自分は叫ぶ以外身動きが取れない。

やがて、店の帳簿な商品、レジのお金も全部、彼らに没収されていった。

「全部没収だ。事情を知ってる奴は吐かせろ」

震える店員たちを前に、ミレイユは必死で叫ぶ。

「大丈夫、みんな。きっと何かの間違いよ!」

でも、ミレイユ自身も何が起こっているのか分からなかった。

師匠アリエルは国一の錬金術師。

総司令官ダリウスは国一の剣士。

二人で、ひそかに愛し合っていることは知っていた。

ミレイユを拾い育ててくれた師匠は、まだ28才と若いが、国からも信頼されている錬金術師である。

総司令官だって、立場はもちろんいうまでもなく高い人だ。

年齢は、40代に入る前で、実力もまだまだ現役。

周りから信頼されていて、トラブルなんて起こさない。

二人は、いつも仲が良さそうに見えた。

ダリウスさんは、師匠と結婚を考えていると言っていた。

そんな二人が、やっと掴んだ幸せを壊すなんて、ありえない。

なのに、どうして誰も信じてくれないんだろう?

「何か知ってることはないのか、一番弟子だろ!」

何度も何度もそう聞かれたけど、本当に知らない。

ミレイユはアリエルにとって、唯一の弟子な上に娘だった。

そのため、国の役人たちにそのまま連行され、まるでリンチのような取り調べを何日も受け続けた。

「知らない!何のことか分からない!私だって知りたい!」

体はボロボロ、心も折れそうだった。

そして、取り調べのあと店に戻ると――

かつて師匠と一緒に築いた『月影亭』は、無惨に荒れ果てていた。

割れた窓。

散らばる薬品。

混ざり合った臭い。

誰もいない、静まり返った店内。

その光景を見て、ミレイユは小さく呟いた。

「……師匠……」

涙がこぼれた。

どうしよう。

取り調べは、異常と思われる怒号が飛び交うもので、拷問みたいだった。

体中が痛い。

でも、私から何も聞き出せないことを焦っているように見えた。

「ここにいるのも危ないわよね。まだ誰かに見られている気がする」

セキュリティなんてないに等しい。

お店はボロボロに壊され、自慢の大きなガラスも割れて、外との行き来が普通にできてしまう状態だ。

「あっ!」

そんな時、部屋の隅にあった割れた薬品の中に、一つだけ無事なポーションが目に入った。

「のど......乾いちゃった」

喉に含むと、甘くてほっとした。

何日も飲み物を口にしていなかったから。

ミレイユは、鞄に錬金道具を詰め込み、木の床に血を垂らす。

「もしもの時に使え」って師匠が言ってたのを思い出したのだ。

もしかしたら、今がその時なのかもしれない。

すると床に隠されていた魔法陣が、私の血に反応して淡く光りだした。

赤い血はだんだん白く輝いて、ミレイユを包み込み、消えていく。

兵士たちがその光に気づき、慌てて駆けつけたときには――

そこには少女の姿も、魔法陣も、何も残っていなかった。

「あの弟子、何か知ってやがった!急げ、報告しろ!」

その役人たちの声が響く頃には、ミレイユはもう安全な場所にいた。

だが、これで終わりじゃない。

むしろ、私の物語は、ここからが本当の始まりだった――。

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