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50 隊内に裏切り者がいる

Auteur: 缶小豆
last update Date de publication: 2026-08-15 20:02:00

一方――樹海防衛部隊では……

レオンハルトとダリウスの声は、壕の外まで響いていたらしい。

レオンハルトの怒鳴り声を聞きつけて、カイルが飛び込んできた。

「団長――じゃなかった、隊長!大丈夫か!」

そう言って隊長室に飛び込んできたが……

「あれ?幻聴か?誰か男の声が聞こえたような気がしたんだけど……」

そう言ってキョロキョロする。

カイルの顔色はひどく疲れていたが、こいつは俺が気の回らないところを全部拾ってくれる。

だからこそ、ミレイユをここに連れてくることは相談なしに決めてはいけないと思っていた。

「実はな。先ほど突然、ダリウス前総司令官が現れて、消えたんだ」

「……は?」

現れて消えた?

何を言ってるんだと言う顔で、カイルは俺の顔を見る。

俺もあの指輪のことを知らなければ同じ反応をするよな

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    レオンハルトが、命に関わる大怪我をしていた頃――ミレイユは、師匠であるアリエルの日記をめくる手を止められなかった。そこには、だんだんと自分の名前が増えていく。そして、その中にある話の幾らかが、自身の記憶にある出来事と重なっていった。師匠から初めて錬金術を習った日。大きな魔物を狩った成果を自慢された日(私は素材の説明だと思って聞いていたけど……)武器に付与する倍率を間違えて大失敗した日――小さな思い出が、紙の上に散らばっていた。「師匠、こんなに人に伝えることが不器用なのに。こんなに一生懸命、私が人らしく生きられるように、努力してくれてたんだ」胸の奥がじんわり熱くなる。師匠は何でも記録に残した。錬金術の小さな気づきや研究レシピも……狩りの方法からその取れる素材のことも……そして、私の育児も。そのうえで、感じたことや考えを「これは人と同じ感覚なのか?」と、頻回にダリウスに尋ねており、そのダリウスの返答まで、記録に残してあった。――自分は他の人と違う。そう理解してから、不安だったのだろう。思い返せば、私が店に出るようになってからは、師匠より従業員と過ごす時間の方が長かった気がする。「ふふっ、ミレイユにお店は任せた!いい新製品、作るからね」そう言っては、すぐ留守にしてしまう。どこかに素材を採りに行くのだと思っていたが、樹海防衛部隊と錬金術師を両立で大変だっただろうし……意識して私と距離を置いたんだと思う。きっと、師匠は、私を普通の子のように育てたかったんじゃないだろうか?(師匠と一緒にいた時間って、意外と少なかったんだな)◆王都で暮らすようになって数年――

  • 錬金術師は国から追われる   50 隊内に裏切り者がいる

    一方――樹海防衛部隊では……レオンハルトとダリウスの声は、壕の外まで響いていたらしい。レオンハルトの怒鳴り声を聞きつけて、カイルが飛び込んできた。「団長――じゃなかった、隊長!大丈夫か!」そう言って隊長室に飛び込んできたが……「あれ?幻聴か?誰か男の声が聞こえたような気がしたんだけど……」そう言ってキョロキョロする。カイルの顔色はひどく疲れていたが、こいつは俺が気の回らないところを全部拾ってくれる。だからこそ、ミレイユをここに連れてくることは相談なしに決めてはいけないと思っていた。「実はな。先ほど突然、ダリウス前総司令官が現れて、消えたんだ」「……は?」現れて消えた?何を言ってるんだと言う顔で、カイルは俺の顔を見る。俺もあの指輪のことを知らなければ同じ反応をするよな。レオンハルトは苦笑して、ダリウスが消えたあたりをチラッと見た。「どう言う仕組みかは分からない。別に幻影ではなさそうだったけどな。彼の言うには、この樹海防衛部隊の前隊長の娘を連れてこいというんだ」「情報多すぎて処理できませんけど!?樹海防衛部隊の前隊長の娘?で、その娘さんはどこにいるんですか?」そもそも、前隊長の名前すら今日俺たちは知ったのに、家族がどこに住んでいるのなんて知りませんよと、お手上げのようにカイルは両手をあげた。レオンハルトは、どう説明しようか迷い、苦笑する。「実は……俺の婚約者なんだ。ただ、彼女が、前隊長の娘というのは知らなかったんだけどな。今、俺が、匿ってる」「……えっ?はっ?今……匿っている?」カイルが固まった。……言ってしまった。縁談話だけなのに、婚約者だなんて。少し恥ずかしい。だ

  • 錬金術師は国から追われる   49公爵家次男の一途な溺愛

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    アドリアンは戦場では珍しい十代の少女、アリエルをいやらしい目で見つめた。そして、そーっと手を伸ばす。だが、そのアリエルの体に触れようとした瞬間、腕を弾かれ一気に吹き飛ぶ。防御魔法を展開していたらしい。周囲に兵がいるのに、恥をかかされたアドリアンは怒りを露わにした。「お、お前、貴族に対して!」「貴族?」「そうだ!お前みたいな卑しい血の者が――」「卑しい血?貴族の血と何か違うんですか?」アリエルは短剣を取り出した。「な、お前、私を誰だと思っている?その剣をどうするつもりだ!」アドリアンは自分を攻撃する気かと思わず後ずさった。だがその瞬間「刺します」アリエルは自分の腕を刺した。そして、鮮血がその腕を垂れていく。「血は赤いです。貴族の血は違いますか?」無表情で痛そうなそぶりもなし。ダリウスもアドリアンも、そして周りの兵もざわめいた。「血……赤いです」反発というより血に関心がある感じだ。じーっとその流れる血を止めるわけでもなく眺め続ける。女性慣れしていないアドリアンも、さすがにこの子はおかしいと直感する。そのとき――空から攻撃が降り注いだ。「敵襲だ!」ダリウスや騎士団も急いで応戦しようとする。だが奇襲攻撃で、意表を突かれてしまった。爆撃で、多くの兵が吹き飛ぶ。そして、防御魔法を突破して、血まみれになり、左肩から下のアリエルの腕も吹き飛んだ。だが彼女は、無表情のまま、腰からハイポーションを取り出し、一気に飲み干す。そして、腕は生えてきて、その復活と同時に、その新たに生えてきた手をかざすだけで、攻撃方向に爆撃を叩き込む。激しい爆撃音と煙がその空間を支配するが、奇襲攻撃で、アリエル以外まともに立ち上がれるものはいない。それを見て、アリ

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    ミレイユは、師匠アリエルの日記をめくりつづけていた。そこに記されているのは、樹海防衛部隊の隊長になってからの記録。――毎日、どれだけの魔物を、いかに残虐に討伐できたか。そればかりが延々と書き連ねられている。さらに、兵たちに錬金物を持たせ、魔術師と同じように普通の兵でも大量の魔物を狩れる仕組みを検討していた。「今の師匠の考えとは、まるで真逆だわ……」ページを進めると、そこで、初めてダリウスとの出会いが記されていた。「ダリウスと出会ったのは、師匠が隊長になったばかりの頃なんだわ」ミレイユは、そこに、やっと知っている名前を見て、少しだけホッとする。◆「樹海以外の応援ですか。わかりました」淡々と答えたアリエルは、魔術師団長オルフェンに命じられるまま、紛争地帯へ向かう。アリエルは、魔術師としてその頃には、すでにオルフェンを凌ぐほどの力を持っていたと思う。だけど、樹海を支配する魔術師もいるといわれて樹海防衛部隊の隊長になっていたのだ。言われた命令を表情ひとつ変えずに遂行する。生きた兵器――そう言われるのは、アリエルが淡々と職務を遂行して、しくじることもないからだが、本人はわかっていない。「では行きます」錬金術で作り出した道具を山のように抱え、迷いもなく移動する。戦場で、そんなアリエルを迎えたのは、まだ二十代後半の若き第一騎士団長、ダリウスだった。その時、アリエルがダリウスと話した最初の言葉は?――「誰を殺せばいい? どれだけ殺したら終わる?」ダリウスは、アリエルを見て息をのんだ。部下を失い続け、苦しい戦況にあえいでいたダリウスですら、目の前の少女に寒気を覚えた。十代の女の子が、まるで感情を持たない機械のようにそう言ってのける。ダリウスは、「では、あれを殺せ」と言えるほど冷酷にはなれなかった。

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