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85 錬金トラップ発動中

作者: 缶小豆
last update publish date: 2026-09-19 20:00:00

みんなが甲殻魔物の殻を洗う班と粉にしようと格闘している班に分かれて活動する横で、レオンハルトは人目を避け、カイルにこっちに来いと腕を引っ張った。

「すいません。もう俺、なんて言っていいか」

悲壮感漂うレオンハルトからの告白に、カイルは何度か口を動かそうとしては止めてため息をついた。

いい言葉が思いつかないらしい。

「普通に考えてくださいよ。どうして、そんなにいい雰囲気になって……それで終了するんですか?」

「ちゃんと理由は言ってるよ。後でミレイユが後悔してみろ。笑い話にならないだろ」

「……その真面目さが、人を一番傷つけるんですよ」

「そうなのかな。やっぱり……そうなのかな?」

「あのさ。あの勝負下着を俺に見せて気になるって言う時は……今度俺のために使うねって意味じゃないのかな。だから期待に応えてね……みたいな」

真剣に尋ねたレオンハルトに、カイルは即答する。

「ないですね。あれは意外性のためのもので、宣言して使うもんじゃないです。むしろ……自分

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  • 錬金術師は国から追われる   87 生きた兵器をめぐる諜議

    息子、ダリウスから「魔導炉の制圧準備は順調」との報告を受けたセドリックは、宰相アドリアンと共に作戦室へこもっていた。話し合うのはクーデターの段取り、そして成功後の兄カールヴァインの処遇についてだ。「……面倒なことになったな」セドリックは樹海の地図を見ながら低く唸った。この国は樹海の魔物に常に脅かされながらも、その樹海こそが隣国からの攻撃を防ぐ天然の盾になっていた。だが、樹海のない反対側には大国がある。 魔法と科学を兼ね備え、何度も戦火を交えた相手だ。いつ呑み込まれてもおかしくない状況を支えてきたのは、《生きた兵器》であるアリエル=ソフィアだ。絶大な攻撃力と絶対の防御、そして致命傷を負っても蘇る異能。大国でさえ、彼女がいる限り侵攻をためらってきた。――だというのに。「王は、相変わらず彼女の価値を理解できない上に失踪にも関与しているらしい。更には魔導炉で魔力を増やし、大国に攻め込むつもりらしい」アドリアンがセドリックに向ける声音には、王に対しての冷え切った怒りと嫌悪感が滲み出ていた。「私は何度も魔導炉を建造するのは難しいと告げてきたんだがね」アドリアンは何度も王から魔導炉建築の費用を捻出しろと言われてきた。だがあれだけの装置を作る費用が突然出来るはずがない。 また、それを稼働させるための魔核は、ほぼアリエルが担っていることを知っていた。「新たな物を増設する費用だけじゃない。出来た後の維持費のことを全く考えていない。今までも全く魔導炉の管理費や修繕費が計上されてないんだ。あの魔導炉が稼働しなくなればこの国の防衛力も落ちるし、機能が全てストップしてしまうというのに……」アドリアンはため息をついた。「アリエル=ソフィアの存在が国力にすべて直結するわけか……」「現状そうです。彼女がいないと回らない国を作ってしまえば、この国は壊れてしまう。だから今までもアリエルなしで回る国づくりを提言してきた。しかし、王は全く耳を貸さないし王妃の言いなりだ」セドリックは眉

  • 錬金術師は国から追われる   86 俺とあいつは似ている

    ダリウスは真面目な顔で、ミレイユから渡された布を受け取った。「ほお、これで魔力抑制ができるのか。すごく薄くて軽いな」だが、笑いを堪えるのに必死だ。 隣にいるレオンハルトの気まずそうな顔が更にいい。騎士団にいた頃のレオンハルトは、隙がない完璧な優等生な団長だった。頼りにはなるが、周囲を少し卑屈にさせてしまうほど非の打ち所がないのが欠点だったのだ。 それが、ミレイユの存在で年頃の男性という顔になった。自分がアリエルと会ったのもそのぐらいの歳だったか?だから余計に自分とレオンハルトは重なるところがある。 但し、ミレイユよりはアリエルの方がこの手のことは過激だった。アリエルは、勝負下着に魅了の糸を縫い込んで製品を作ったのだから。 それに気づいたのは、塔の部屋で嬉しそうに下着を縫っているアリエルがいたからだ。「念の為に聞きたい。その下着は誰のために作ってる?自分で着るのか?」あまりにスケスケじゃないか。 しかも魅了の糸で?頼むから俺のためと言ってくれよ…… ダリウスは恐る恐る尋ねた。「うん、貴族から聞かれたんだ。着るだけで目の前の男性が自分に陥落するものはないかって。だから作ってみるって伝えたんだ」下着をびよーんとダリウスの前で伸ばす。 フリルが揺れるのを見てダリウスの表情は固くなる。「それはダメだよ。いいかい、アリエル。人の心を変える物を作ったら、心だけじゃなくてその人の人生も変えてしまうことになるんだ。それは、もう配ったのかい?」「ううん。まだ試着してない。何度か試して成功しないと人には出さないって決めてるんだ」「そうか……月影亭の方針だったな。でも念の為に聞いておきたい。試してないよな?」「ダリウスで試そうと思った」「そうか……それは試されてみたいけどな……」だが、ドヤ顔でいうことじゃない。「ただ、残念ながらそれは効果がわからないと思う。すでに俺はアリエルに魅了されてるだろう?」「そうか……何度か試さないと外には

  • 錬金術師は国から追われる   85 錬金トラップ発動中

    みんなが甲殻魔物の殻を洗う班と粉にしようと格闘している班に分かれて活動する横で、レオンハルトは人目を避け、カイルにこっちに来いと腕を引っ張った。「すいません。もう俺、なんて言っていいか」悲壮感漂うレオンハルトからの告白に、カイルは何度か口を動かそうとしては止めてため息をついた。 いい言葉が思いつかないらしい。「普通に考えてくださいよ。どうして、そんなにいい雰囲気になって……それで終了するんですか?」「ちゃんと理由は言ってるよ。後でミレイユが後悔してみろ。笑い話にならないだろ」「……その真面目さが、人を一番傷つけるんですよ」「そうなのかな。やっぱり……そうなのかな?」「あのさ。あの勝負下着を俺に見せて気になるって言う時は……今度俺のために使うねって意味じゃないのかな。だから期待に応えてね……みたいな」真剣に尋ねたレオンハルトに、カイルは即答する。「ないですね。あれは意外性のためのもので、宣言して使うもんじゃないです。むしろ……自分のことをないがしろにするなら、もう別の男のために使いますっていう死刑宣告に近いですよ」カイルは、周辺をチラッとみる。「考えても見てくださいよ。ここにはこの件の前からミレイユちゃんのファンが何人もいるんですよ。隙あらばですよ」レオンハルトは、くらっとして思わず壁で体を支える。「えーっ、なんだよ……俺の今までの我慢は。大切に思っていただけなのに」「普通はそこまで大事にしませんもん……」カイルは、困った人を見るような目でレオンハルトを見つめるが、そっと背後に近づく影が――「お前の考え、そのままミレイユに言ったほうがいいぞ」いつの間にかダリウスが立っていた。「どこから聞いてた!?」「カイルは俺が監視してるって言ってただろう」監視って、足首チェーン以外にも!?今度はギョッとしたようにカイルが自分の体についたチェーンを見つめる。「ミレイユの父親代わりだからな。本来なら俺の娘に手を出したお前に今

  • 錬金術師は国から追われる   84 魔力抑制に勝負下着?

    翌朝、ほぼ眠れていないミレイユは、そっとレオンハルトの腕から抜け出し、棚にある懐かしのカイルからのプレゼント【勝負下着】の箱を取り出そうとした。しかし簡単に取り出せない。「なんで!なんで、食料品の奥に押し込められてるんですか!」そうだ。恥ずかしくて私が奥に押し込めたんだった。誰でもない、それをしたのは私だ。必死に音を立てないように、物を倒さないようにゴソゴソしながら、棚のそばのベッドで眠るレオンハルトの様子を確認する。寝息を立てている、大丈夫だ。箱をキャッチしてほっとし、ミレイユは3階に急いで上がる。もちろん、レオンハルトがその音を聞きながら起きていることなど知ることもない。3階に上がり、ごくりと息を呑む。【最後につけてね】というカイルのメッセージ付きの箱を開ける。つけたら、愛想を尽かされるかもしれないんです。本当に余計なものを渡すんですから!あの時は恥ずかしくてすぐに押し込めた下着だが、そもそもどんな下着かもじっくり見たことはない。そっと箱から出すと……「あれ?軽い?」下着は箱に小さく折りたたまれ小さくコンパクトになっている。箱も片手で隠せるサイズ。中身が見える可愛い透明袋に圧縮されて入っていて、おそるおそる下着を取り出した。え?これなんですか?どこにどうやって着るの?小さすぎません?びよーんと広げてみる。生地は向こうが楽々透けて見える。「これ?下着?もう着なくていいんじゃ……」普段見ることがないので、思わずじっと眺めてしまう。これを……レオンハルトさんの前で着るんですか?軽い、透ける、面積が小さい……あれ?何か引っ掛かる?なんだろう。そうだ!月影狼の毛皮だ。もしこんなふうに透けるぐらい軽くて小さくコンパクトに出来れば、

  • 錬金術師は国から追われる   83 勝負下着の処分計画

    塔に戻り、ミレイユは月影狼の毛皮を前にしていた。塞ぎたい相手に被せたら魔力を抑制できるはず!そう確信がある。ヘルカーンの毛皮が魔導炉の断熱に使われるのは、強い魔力が発生してもそれを外に逃がさないだけの魔力が、毛皮の内側に含まれているからだ。ならば、同じく強大な力を宿し、しかも光と闇の二属性を持つ月影狼なら、それ以上の効果があって当然。「問題は毛皮の分厚さなのよね。狼は毛深すぎよ!」魔導炉なら、魔力の放出を防ぎたい場所に巻き付ければ、そのまま魔力を遮断できるだろう。でも、今回は魔術師という人間に覆い被せて魔力を防ぐ。いくらなんでも、戦いの最中に魔術師に毛皮をかぶせにいくなんて無謀だ。毛皮をつなげてみんなで「せーの」で投げ込む?重いし、そんなことやってる間にやられちゃうわよ。「うーん……」ミレイユは机に頭を突っ伏した。「もう、今日は飲みすぎたからコーヒーは終わりだよ。少し眠ろう。俺は君が眠るのを見届ける役割があるんだからね」レオンハルトが、二階のベッドに横になる準備を始める。狭い小さなベッドだが、二人で抱きしめ合って眠ることに抵抗はなくなり、それぞれ違う階で眠ることはない。むしろ……狭い小さなベッドだからいい。ミレイユは、自分を甘やかすレオンハルトがみんなから「奥手」だとからかわれていることが信じられない。確かに、一線を越えてないから奥手なんだろうけど、実際は自分を奥手だと思い込んでいる天然なんじゃないかしら。だって、彼が熱量をもって触れてきたとき、私は一瞬で女にさせられてしまうんだもの。その小さなベッドでレオンハルトが愛を囁きながら自分に触れる姿を思い出し思わず顔を覆ってしまう。彼は、自分との年齢差や出会い方を気にしているけれど……たぶん大半の女子は、この顔とこの誠実さで、優しくされてあの声で愛を囁かれたら落ちるわよ。私も男性と付き合った

  • 錬金術師は国から追われる   82 勝負下着は二枚目まで

    明日は全員で、今日食べたカニもどきの甲羅を洗って粉末にする作業が待っている。「今日はしっかり休もう。特にミレイユ、お前はひとりでみんなの錬金物を作っている。錬金の際には必ず魔力を通すから、魔力の消費量が激しいはずだ。みんなも意識してミレイユを休ませてやってくれ」「ミレイユ以外でもできる作業はみんなで分担しようぜ」ダリウスからの指示で、素材の洗浄や、確保。資料を探す仕事ならレオンハルトや隊員たちで分担できると確認し合う。「明日のメニューは、カニもどきの身を使った雑炊と、じゃがいもと焼いた塩漬け魔物魚のサラダにしますから、栄養もつけてくださいよ」古参の隊員の4人も、ここの拠点の料理人という役割に収まり、明日の料理に使う素材を見せる。「本格的だな。どこからそんな魔物料理を作ろうと思いついたんだ?」「それが前の隊長からいろんなレシピを教えてもらった……というか、作らされていたんです。レシピ本を持ってきては、魔物を使ってこれっぽいものを食べたいって丸投げするので」苦笑いして答える4人に、レオンハルトは木箱の中にあったレシピ本を思い出す。あの箱の料理レシピは、ミレイユのために作る母の味だけではなく、隊員に作らせる戦闘メシも兼ねられていたのか……「そもそもの魔物が規格外なものが多いんですよね。みなさんも慣れてきたでしょうけど、蟹という食材で見るから調理できますけど普通はそう見ませんから」「たしかに……食べるものがないから食べるけど、前隊長はたべるものがあっても魔物を食べていたってことだよな」それを聞くとアリエルは普通ではないのは確かだ。それが、長い付き合いになったら、ダリウスの常識が崩れて普通じゃないから大丈夫と思ってしまった気持ちもわかる。そして、力はあっても弱い立場だった前隊長のことを理解できていなかったと後悔する気持ちも、国から見放された今だからわかる気持ちなのだろう。「じゃあ、今夜はこれで各部屋で休んでくれ」レオンハルトは明日の分担する

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