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第707話

Author: 風羽
九条時也は、一瞬、言葉を詰まらせた。

この瞬間、彼は田中詩織との過去を水に流し、彼女の死にたいという願いを叶えてやり、水谷苑と静かに暮らしたいと心の底から思った。

だが、結局彼はその場を去った。

田中詩織が何人ものクズにまわされる忌まわしい光景が、彼の脳裏からどうしても消えなかったのだ。

水谷苑は彼の背中を見送った。

しばらくして、彼女は診察室に戻り、D国の医師の前に座った。

彼女は虚ろな目で医師を見つめ、震える声で言った。「先生、もう一度......今の言葉を繰り返してもらえますか?」

医師は彼女に同情した。

検査結果を水谷苑の前に静かに置き、低い優しい声で言った。「胎児の心臓の発育があまり良くありません。人道的見地からも、中絶することをお勧めします」

水谷苑は診断書に目を落とした。

心臓の発育があまり良くない......

彼女は涙ぐんだ目で医師を見上げ、「この子は苦しいのでしょうか?心臓が悪いと......苦しいのでしょうか?」と尋ねた。

医師は静かに首を横に振った。

水谷苑の顔に苦悩の色が浮かび、診断書を何度も見つめてから、静かにテーブルに置いた。

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