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第1165話

Penulis: 桜夏
理恵が話し終えると、振り返って翼を見た。

翼は、その時になってようやく我に返り、居住まいを正した。

どういうわけか、理恵がこれほどまでに一人の男を深く愛し、その顔に少女のような恥じらいを浮かべているのを見て、彼の心の中に苦いものが広がった。

おそらく、自分に実の妹がいないからだろう。理恵のことを、本当の妹のように思っていたのかもしれない。

この気持ちは、娘が嫁に行くのを惜しむ父親の心境に近いのか。それとも、苦労して守ってきた宝物を、あっさり盗まれてしまったという、あのやるせなさか。

翼は言った。「橘さんは、確かに超一流の男だ。君が夢中になるのも無理はないな」

理恵は、うっとりと言った。「そうなの、本当に、すごく素敵なのよ」

翼はそれを聞き、もうこの話題を続けたくないと思った。

どれほど優秀な男でも、所詮は泥棒だ。それに、理恵が雅人を褒めれば褒めるほど、自分がひどく惨めに思えてくる。

昼食の時間も近づいてきたので、翼は言った。

「昼は、誰かと約束してるのか?もししてないなら、一緒に飯でもどうだ?」

理恵は、とろけるような笑顔で言った。「先約があるの。透子と約束してて
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    執事は静かに首を振った。「事故そのものの対応は、すでに片がついております。補償についても、ご遺族や負傷者のご家族とは話がまとまりました。わたくしが申し上げた厳しい戦いとは、社内の権力闘争のことです。取締役会が開かれました。役員たちは、若旦那様がここ最近、業務から離れていたことに強い不満を示しております」透子は眉をひそめた。「でも、新井さんがわざと仕事をサボっていたわけではないですよね。怪我をして、会社に行けなかっただけなのに」執事の声には、抑えきれない怒りが滲んでいた。「ええ。ですから、それは彼らにとって都合のいい口実にすぎません。取締役会の一部は、すでに博明様とあの隠し子に煽り立てられています。若旦那様が業務を離れ、トップとしての職責を放棄していると責め立てているのです。さらに、旦那様を激怒させて倒れさせたことや、旦那様への思いやりに欠ける、家族を顧みないこと、また少し前に栞お嬢様へ執着して常軌を逸した振る舞いを重ねたことまで、過去の出来事がすべて蒸し返されています。最後には、若旦那様の人格そのものを問題視する流れに持っていかれました」透子はそれを聞き、黙り込んだ。業務能力から人格、さらに身内への思いやりまで、ありとあらゆる方向から蓮司を攻撃している。執事が「厳しい戦い」だと言った意味が、透子にも痛いほど分かった。これは単なる責任追及ではない。蓮司という人間そのものを、根本から否定して引きずり下ろそうとしているのだ。執事は少し声を整え、毅然と続けた。「とはいえ、降りかかる火の粉は払うまでです。博明様とあの隠し子の企みなど、隠しようもなく見え透いております。こちらにだって、彼らの弱みがないわけではございません。彼らは若旦那様に経営能力がないと言いますが、博明様のほうがよほど話になりません。凡庸で、とてもグループを任せられる器ではございません。人格が欠けている、モラルがないと責め立てるなら、婚姻中に不貞を働き、若旦那様と数か月しか年の違わない隠し子を作った博明様に、他人を非難する資格などございません。彼らが世論を使って攻撃してくるなら、こちらも徹底的に反撃いたします。こうした権力闘争はこれまでにも何度かありましたが、博明様が勝ったことはただの一度もございません。当時の不貞によって、若旦那様のお

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