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第617話

Author: 桜夏
「如月さんの容態はもう安定しています。昨夜、見回りに来た看護師の診察記録も、すべて正常でした」

大輔の報告を聞き、蓮司は完全に安堵し、首を回して凝りをほぐした。

一晩中着替えもせず、服はしわくちゃ、髪もぐしゃぐしゃで、まるで街をさまよう浮浪者のようだった。

大輔から粥を受け取ると、彼は命じた。

「後で透子を転院させろ。プライベートホスピタルに移して、療養させろ」

大輔は言った。「お爺様もそのようにお考えで、先ほど執事からメッセージがございました」

蓮司は粥を一口すすり、尋ねた。「昨夜の警察の捜査に、何か進展はあったか?」

「はい。すでに犯人の顔を特定し、経歴も割り出しました」

途端に、蓮司は身を乗り出し、背筋を伸ばした。

大輔はタブレットを開き、名前から報告を始めた。

蓮司は待ちきれずにそれをひったくって自分で確認する。そこに映っていたのは、笑顔の裏に何かを隠しているような、見るからに善人ではない中年男の顔だった。

斎藤剛、四十三歳。以前、窃盗と強姦罪で懲役八年の実刑判決を受け……

強姦罪……

蓮司はその三文字を睨みつけ、脳裏に、制御不能な最悪の想像が駆け巡っ
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