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第373話
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離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第380話
「悠良さん、私......私はただ、悠良さんのためを思って......一緒に来たくないなら、そんなにきつく当たらなくてもいいでしょう？」玉巳が涙ながらに訴えると、その儚げな様子に、その場のほとんど全員が彼女を無実だと思い込んだ。つい先ほどまでの悠良の強気な態度は、皆の目にもしっかり焼き付いている。「まったく無礼にも程があるな。あいつ、傲慢すぎるだろ。ここを自分の会社だとでも思ってるのか？」「さっきは妹や継母に無礼な態度をとって、今度は公衆の面前で白川奥様をいじめるなんて」「わかった、きっと自分が『白川奥様』になれなかったから、他人を羨んで妬んでるんだな」「『手に入らないなら壊す』ってやつ？社長が思いやりのある新しい奥さんを迎えたのが、面白くないって思ったんだろ」それを聞いた葉は、胸の奥に怒りがこみ上げ、我慢できずに外野の社員たちへ怒鳴り返した。「何も知らないくせに！悪いのは悠良じゃない、あの人たちの方よ！あの時は白川社長が――」「三浦さん、小林さんと仲が良いのはわかります。でもだからといって、彼女をかばうために、私たちを悪者にしないでください。もし私に何か至らないところがあれば、必ず直しますから......」玉巳はすすり泣きながらも柔らかい声で答え、目元の涙を指先でそっとぬぐった。その儚さに、見ている者の心も揺らぐ。葉は、この女の白を黒に変える巧妙さに、内臓が痛むほどの怒りを覚え、震える指で彼女を指差した。「こ、この嘘つきが！」悠良は葉の手を取った。玉巳の言葉に腹を立てるどころか、むしろ可笑しさすら感じていた。彼女はゆったりと玉巳の目の前まで歩み寄る。もともと背の高い悠良は、微かに視線を落として彼女を見下ろす。その瞳には、軽蔑と嘲りがはっきりと宿っていた。玉巳は、その目つきに胸が塞がれる。まるで腐った魚か何かを見ているような視線だった。彼女は無意識に首をすくめ、怯えた表情を浮かべる。「な、何をするつもり......？」「何年経っても手口は変わらないのね、石川さん。あなたと私の間の決着は、ゆっくり時間をかけてつけましょう。今日は、あなたの芝居を見ている暇なんてないわ。せいぜい、その無能な夫に見せるための芝居でも続けてなさい」「悠良！」史弥は眉をひそめ、信じられないと
離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第379話
史弥は悠良を斜めに見やり、軽蔑を込めた嘲笑を漏らした。「もう怖じ気づいたのか？」莉子は、史弥の手に本当に悠良の弱みがあると思い込み、わざとらしく悠良の前まで歩み寄り、善意を装って諭す。「お姉ちゃん、認めたほうがいいよ。安心して、ここにいみんなは、たとえお姉ちゃんが失礼な物言いをしても、誰も気にしないから」雪江も続けて口を添える。「そうよ、悠良。私たちは家族。だから、ここで騒ぎ立てるのはもうやめましょう」そう言いながら、彼女は二人の警備員に目配せした。「警備員さん、この小林さんを外へお連れして」警備員たちは悠良の左右に立ち、両腕をつかんだ。「小林さん、失礼します！」今にも会議室から連れ出されそうになり、悠良はもがき始めた。「離して！白川史弥、もし本当に証拠があるなら、今ここで出しなさい！」そこへ玉巳が近づいてきた。純真無垢を装い、あくまで善意の態度で悠良に話しかける。「昔悠良さんは史弥を騙して、雲城から姿を消したよね。それはもういいとして、今こうして突然戻ってきたなら、私たちに一言知らせてくれてもよかったのに。それに小林のおじさんが重病の時期に戻ってくるなんて、やっぱり意図的に思えてしまうの。もちろん、私たちは悠良さんを信じてるけど」彼女は会議室の他の人々にも視線を巡らせる。「ここにいる『外の人』たちはきっとあなたを信じない。悠良さんの潔白のためにも、この騒ぎには関わらず、まずは私たちと一緒に帰ったほうがいいよ」そう言って玉巳は悠良を連れて行こうと手を伸ばした。その時、会議室の入口にはすでに野次馬の社員たちが集まり始めており、場の空気は急に変わった。先ほどまで玉巳を罵っていた人たちが、今度は逆に彼女を擁護し始めたのだ。「こうして見ると、石川って案外いい人じゃない？」「だって小林はもう白川と離婚してるのに、彼女はまだ友達みたいにトラブルから遠ざけようとしてるんだよ」「前のニュースにあるじゃない、ある女性が夫の前妻とすごく仲良くして、まるで姉妹みたいで、一緒に事業をやって今じゃ海外進出までしてるって」「本当？そうなら男の有無なんてどうでもよくなるね！」「だよね。それに石川って見た目、温和で害のなさそうな柔らかい子で、噂みたいに計算高いタイプには見えないな」「逆に小林の方、目
離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第378話
しかし、以前よりもむしろ魅力的になっていた。彼女の服装のスタイルも以前とはまるで違い、今はより成熟した雰囲気を漂わせ、眼差しの鋭さと自信が、まるで彼女に金色の縁取りを与えているかのようだった。史弥はわずかに身を屈め、二人だけに聞こえる声で耳元に囁いた。「この数年、本当に上手く俺を騙してくれたな......だが、まだチャンスはある。もう一度俺とやり直すとさえ言ってくれれば、さっきの言葉は取り消してやる」悠良の瞳の光が一瞬にして翳り、心臓がきゅっと縮み上がる。胸の奥から怒りが一気にこみ上げた。彼女は嘲るように唇の端を上げ、史弥を横目で一瞥した。「白川奥様はまだここにいますよ。そんなことを言えるなんて、どういう神経してるんです？」史弥は、自分の言葉がどれほど非常識かなど微塵も思っていない。「当時の離婚は俺の望むところじゃなかった。あの時、君が突然いなくなって、会社のことも、そして君の離脱による白川家への影響も、全部俺が背負わなきゃならなかったんだ」悠良は、彼が涙ぐましいほどの口ぶりで語っても、胸が動くどころか、むしろ自分が彼から離れられたことを心底幸運に思った。彼女は嫌悪を隠さず、冷ややかに視線を向けた。「もう芝居はやめてくれます？そのうち自分でも信じ込んだら困ります」史弥の表情が険しくなり、彼女の冷たく傲然とした美しい顔をじっと見据えた。「つまり、断るってことか？」悠良は目を細めた。「私に愛人になれってこと？」「そうは言っていないだろ？今の君は一人で、後ろ盾なんていない。だから過去のことは水に流してやる。何年も一緒にいたんだ、そのくらい許してあげる」悠良は意味ありげに頷くと、史弥の背後にいる玉巳に視線を移した。その瞳は、まるで穴が開くほどに見据えている。その瞬間、胸の奥が妙にすっきりした。かつては自分も、こんな目で彼ら二人を見ていた。今や立場が逆転し、玉巳もさすがに顔を引きつらせている。まさに「栄枯盛衰は世の習い」だ。思えば、あの頃は数え切れない日々、二人の仲睦まじい様子を目の当たりにしてきた。しかも、それは自分の目の前で。これでまだ序の口に過ぎない。もっとも、今の彼女には、史弥とこんな茶番を演じている暇はない。横顔のまましばし彼を睨みつけ、その眼差しの嫌悪は、口
離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第377話
史弥は警察署から出てきたばかりで、身に着けている服もまだ着替える暇がなかった。ここ数日、警察署で過ごした様子は一目でわかり、目の下には濃い隈ができ、無精髭まで伸びていた。かつての意気揚々とした姿とはまるで別人。今の彼はまさに落ちぶれ切った姿だったが、悠良にとって目の前のこの男は、もはや見知らぬ人のように感じられた。彼女の心には、波ひとつ立たない。依然として冷淡で距離を置いた表情のままだった。自分が姿を消したあと、史弥は何も行動を起こさなかった――いや、彼女は最初から彼に何かを求めてはいなかった。そもそも離れる時点で、完全に縁を切る覚悟で姿を消したのだ。だがまさか、自分が残していった離婚協議書が、こんな災難を招くとは思ってもみなかった。莉子は、史弥までもが悠良を指差して証言するのを見て、口元に得意げな笑みを浮かべた。彼女は同情するふりをして悠良の前まで歩み寄る。「お姉ちゃん、お義兄さんと一体何があったの？前はあんなに仲睦まじかったのに、どうして今はこんなことに？」一見、何気ない会話。だが悠良には、それがまるで時限爆弾を仕掛けられたように感じられた。莉子の頭が急に冴え渡ったのかと、彼女は意外に思う。これでは形勢がまた変わってしまう。周囲からも声が上がる。「やっぱりな、こんな簡単な話じゃないと思ってたんだ。前は白川社長が彼女に本当に尽くしてたし、雲城で知らぬ者はいなかった」「なのに離婚だけじゃなく、寒河江社長や西垣とのスキャンダルまで出すなんて、白川家の顔を潰すようなものだ」「もういい、誰が悪いかなんて、見ればわかるだろ」その時、警備員も入ってきて、数人が悠良を取り囲む。「小林さん、申し訳ありませんが、ご同行願えますか」唇を固く結び、窮地に立たされても一切怯むことなく、その華やかな顔立ちは相変わらず冷ややかだった。彼女は口をつぐんでいたわけではない。ただ、史弥がここまで事実を捻じ曲げるとは思っていなかったのだ。悠良の瞳は一瞬、冷たい光を帯びる。手にしたペンで、机上の書類をコツ、コツと軽く叩く。その音は大きくも小さくもなく、しかし確実に史弥の耳に届き、彼を一層苛立たせる。そして、彼女はゆっくりと足を踏み出し、史弥の前まで歩み寄った。火花が散る寸前、会議
離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第376話
声はやや弱々しく、息も絶え絶えなのがはっきりと分かるものの、彼の言葉は最後まで聞き取ることができた。悠良は腕を組み、口元に嘲笑を浮かべながら、悠然とした態度で言った。「これでもなお、遺言書の真偽を確かめるというのかしら？」莉子の顔に、一瞬だけ動揺が走った。まさか孝之が、あの病に倒れ、今にも息絶えそうな状態でありながら、最後の力を振り絞って悠良のために録音証言を残すとは、夢にも思わなかったのだ。血のつながらない娘のために、実の娘をこうまでないがしろにする――これが父親としてすべきことなのか？雪江は、莉子の表情の変化にすぐ気づいた。感情の制御が崩れかけている。もしここで莉子が冷静さを失えば、この勝負は完全に負けてしまう。彼女は慌てて莉子の手を握り、その意識を現実へと引き戻そうとした。莉子は横目で雪江を見やり、ゆっくりと気持ちを落ち着けた。そして鼻をすすり、くぐもった声で言った。「お姉ちゃん、もうやめようよ。皆の笑いものになるだけだわ。この遺言はお父さんが自分で書いたってことにしてもいいの。小林グループを全部持って行ったって、妹の私は何も言わないから」雪江は痛ましそうに莉子の肩を軽く叩き、言葉を添える。「そうよ。たとえ悠良が小林家の生まれじゃなくても、これまで小林家は十分に悠良を大事にしてきたのよ。そこまでする必要がどこにも......ここにいるのは皆あなたの先輩方よ。もう少し譲歩してもいいじゃない。どうして仲の良い家族が、こんな修羅場になるのかしら......」そう言いながら、雪江は顔を覆い、泣き出した。その様子を見た株主たちは、次々と義憤に駆られ、悠良を非難する。「金のために妹と継母をここまで追い詰めるのか？」「こんなんだから白川社長が何年もお前と一緒にいたのに離婚したんだ。少しは自分を省みろ」「最近、白川社長が何の前触れもなく警察に呼び出されたと聞いたぞ。そういう『夫運を食い潰す女』っているんだよな」「まったくだ。お前が戻ってきてからというもの、小林家は大混乱だ。帰ってこなければよかったんだ」「お前がいなかった数年、会社は大きくは儲からなくても順調だった。なのに急にこんな騒ぎとは！」「署名や録音があったとしても、それが脅迫や何らかの手段で書かせたものじゃないと、誰が証明で
離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第375話
「その野心、なんと恐ろしい。小林家がお前をこれまでどれだけ面倒見てきたか、奥様が一から育ててきたのに、まさかこんなふうに育つとはな！」「まったく許せない。小林社長は今も病院にいるんだろう？状況も分からないのに、小林家の養女でありながら小林社長の看病もしない。それどころか、五年間も姿を消して、突然戻ってきたかと思えば金のためだとは......本当に悪質だ！」「悠良、俺たちはみな会社の古参だ。忠告しておくが、分別があるならさっさと出て行った方がいいぞ。このままじゃ、俺たちが証拠を突きつけて、お前がやった醜聞を全部暴くことになる。そうなれば自尊心がズタズタになるだけだ」「まだ顔を潰されないうちに、自分から出て行った方が身のためだ」しかし悠良は、少しも動揺や気まずさを見せず、むしろ脚を組み、全てを見下すような傲慢な視線で場の全員を見渡した。「皆さん、それほど『遊び』が得意なら、今日はひとつ勝負でもしようじゃない。誰が先にこの会議室を出るのか、そして誰が一番の恥をかくのか、見てみましょう」事情を知らない株主たちは快く応じた。「いいだろう。世の中、こんなにも腐っているなんて信じられん。お前のような人間が会社の株を手に入れるなど」「お前の手札が何なのか、さっさと見せてもらおうじゃないか」悠良も確信があるわけではなかった。自分は小林家の実の娘ではない以上、本来なら財産を相続することはできない。だが、彼女は弁護士に相談していた。もし孝之が強引に株式を譲渡する意思を持ち、さらに過去に養女であった事実があれば、不可能ではないという。実際、株式そのものにはそれほど執着はない。ただ莉子と雪江のやり方があまりにひどすぎた。それは自分のためというより、むしろ孝之のための争いだった。孝之が小林家に捧げた努力と心血を、彼女はよく知っている。悠良は孝之の遺言書を取り出した。「原本は私が持っているわ。悪意のある者を防ぐため、皆さんにお見せするのはコピーです。父の筆跡は、皆さんもご存知でしょう」株主たちは遺言書を読み終えると、すぐに抗議の声を上げた。「これは間違いなく、お前が父親を脅して書き直させたものだろう！奥様も莉子も、小林社長が病に伏している間に、お前があらかじめ用意していた遺言書に署名させた現場を見ている！」「これ
