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第111話

Auteur: いくの夏花
真吾が前に出て遮った。「正気か?」

空気を裂くように、紙の破れる音が響き渡った。

今度は柚香だけでなく、江里子まで目を見開いた。

数十億円の価値があるはずの絵が、こんなにもあっけなく引き裂かれてしまったのだ。

真吾は怒りに震えた。「お前、気でも狂ったのか?よくもそんな真似を!」

遥香は冷然と答え、裂けた紙を皆の前に広げて見せた。「偽物の絵なら、恐れる理由はないでしょう。見てください。この木漿紙は、スプランドゥール・エ・プロスペリテの作者が使っていた画紙とはまるで違います。

スプランドゥール・エ・プロスペリテの作者は竹や絹の紙しか用いなかったんです。紙からして間違っているのに、本物であるはずがないでしょ?」

今度は真吾さえも呆然とし、反論しようと口を開いたものの、一言も出てこなかった。

「この絵が本物のように見えたのは、実際に真作をなぞって転写したからです。ただその線は原本ほど流麗ではなく、だからこそ友人が『生気がない』と評したのも筋が通ります」

展示会に贋作が並んでいた――骨董界にとっては大きな笑い種だ。柚香の顔は青ざめたり蒼白になったりと変わり、周囲は修矢の顔を立て
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