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第1090話

Auteur: 似水
高級車が静かに停まり、運転手が後部座席のドアを開けた。

すると、スラリとした長身の男――賢司が姿を現し、その場の空気が一瞬変わった。

裕之と幸美は急ぎ足で近づき、恭しく出迎えた。

「賢司様、本日はようこそお越しくださいました」

裕之の顔には、どこか媚びた笑みが浮かんでいる。

幸美も慌てて続けた。

「ちょうど良いところでございます。さあ、どうぞ船内へ」

賢司は短く「ああ」と応じ、無駄な言葉は一切なかった。

誕生日パーティーはクルーズ船の3階で行われていた。

夕暮れの海を見ようと、多くの来賓がデッキに集まり、シャンパン片手に談笑していた。

だが、賢司の姿が現れると、まるで時間が一瞬止まったかのように場が静まり返る。

それほどまでに、彼の存在感は圧倒的だった。

そしてすぐに人々は我に返り、次々と彼に挨拶をしようと群がっていく。

舞子は、その気配をすぐに察した。

窓越しに外を見やると、賢司が人々の視線を集めながらも、静かにシャンパングラスを手にして立っていた。

まるで群れの中の一羽の鶴――否、それ以上に気高く、冷ややかで、美しい。

舞子の眉がぴくりと動いた。

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