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第208集

作者: 風待 栞
「六時ちょうどよ!間違いなく六時ちょうどだったわ!」紗夜は自信たっぷりに断言した。

「それはおかしいわね。私が席を立ってレストルームへ向かったのは、六時『十分』よ」水琴が表情を引き締めて告げる。

紗夜は信じられないといった顔で水琴を睨みつけた。「そんなはずないわ!スタッフは六時ちょうどにあなたが席を立ったと言ったのよ」

見かねた雅が横から口を挟んだ。「紗夜さん、スタッフが時間を勘違いしたんじゃないの?とにかく、紗夜さんがレストルームに行っている隙に、この女がこっそり控え室に忍び込んだことに変わりはないわ」

雅の軽率な発言に、紗夜は顔をこわばらせて彼女を横目で睨みつけた。本当に頭の回らない小娘……!

だが、言葉はすでに発せられてしまった。紗夜は覚悟を決め、慌てて取り繕うように言い募った。「静沢さん、いくらなんでも一分一秒まで正確になんて答えられないわ。レストルームへ行くのに、わざわざ時計の針を確認する人なんている?」

「そうね。普通は確認しないわ。でも今日はあなたの結婚式なのだから、時間管理のプロであるメイク担当者は正確な時間を把握していたはずなんじゃないの?」水琴は静かに頷
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  • 離婚後、捨てられた私は人生の頂点に立つ   第208集

    「六時ちょうどよ!間違いなく六時ちょうどだったわ!」紗夜は自信たっぷりに断言した。「それはおかしいわね。私が席を立ってレストルームへ向かったのは、六時『十分』よ」水琴が表情を引き締めて告げる。紗夜は信じられないといった顔で水琴を睨みつけた。「そんなはずないわ!スタッフは六時ちょうどにあなたが席を立ったと言ったのよ」見かねた雅が横から口を挟んだ。「紗夜さん、スタッフが時間を勘違いしたんじゃないの?とにかく、紗夜さんがレストルームに行っている隙に、この女がこっそり控え室に忍び込んだことに変わりはないわ」雅の軽率な発言に、紗夜は顔をこわばらせて彼女を横目で睨みつけた。本当に頭の回らない小娘……!だが、言葉はすでに発せられてしまった。紗夜は覚悟を決め、慌てて取り繕うように言い募った。「静沢さん、いくらなんでも一分一秒まで正確になんて答えられないわ。レストルームへ行くのに、わざわざ時計の針を確認する人なんている?」「そうね。普通は確認しないわ。でも今日はあなたの結婚式なのだから、時間管理のプロであるメイク担当者は正確な時間を把握していたはずなんじゃないの?」水琴は静かに頷きながらも鋭く切り返した。「ス、スタッフの記憶が少しずれていただけかもしれないわ。でも、私が控え室を出た後に席を外したのはあなただけよ。それに、スタッフはあなたが控え室の方へ歩いていくのを確かに見たって言っているの。これだけは絶対に嘘のはずがないわ。だって、今日の招待客の中で、こんな陰湿なことをするほど私を憎んでいる人間なんて、あなた以外に考えられないもの」紗夜はそう言ってうつむき、つけ睫毛を小刻みに震わせる。「紗夜さん。あなたが『私が二階の控え室に行った』と証明できる証拠は一切ないようだけど、私には『席を外した後に二階へは行かず、電話をしていた』という確たる証拠があるのよ」水琴は無表情のまま自分のスマホを取り出すと、通話履歴の画面を開き、紗夜の目の前に突きつけた。「よく見てちょうだい。六時二分に高遠灼也から着信があり、三分間通話しているわね。六時五分には私から小林菫先輩に電話をかけ直して、五分間話しているわ。つまり、私がレストルームへ向かったのは六時十分。しかも通話していたのは一階エントランスのすぐ近くだから、エントランスの防犯カメラにすべて映っているはずよ」水琴はそ

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  • 離婚後、捨てられた私は人生の頂点に立つ   第108話

    医務室のベッド。水琴の足は広範囲にわたって火傷を負い、赤く腫れ上がって皮が剥けていた。腕にも、飛び火したような痛々しい痕が残っている。付き添おうとする紗音を、灼也は制して家に帰らせた。今は一刻を争う処置が必要だったからだ。「……っ」医師が傷口の処置を始めた瞬間、水琴は思わず息を呑んだ。ただ痛いだけではない。焼けるような熱さが肌を支配し、まるで行列をなした虫たちが足や腕を這い回り、皮膚を執拗に食い破っているかのような感覚。その細かな激痛の合間に、神経を逆なでするような鋭い痒みが混じる。たまらず手を伸ばしかけたが、指先がかすかに触れただけで、悲鳴を上げたくなるほどの激痛が走った

  • 離婚後、捨てられた私は人生の頂点に立つ   第7話

    水琴の睫毛が、微かに震えた。もし臣と出逢わなければ、自分は今頃、心理士として歩んでいたはずだ。だが、数年の空白がある。専門知識に錆びつきはない自信があるものの、本当にあの頃のように、自分が最も得意とした場所へ戻れるのだろうか。蓮見は、彼女の心の揺らぎを見透かしたように、穏やかな声で語りかける。「焦る必要はないさ。だが、もし君にその気があるのなら、この老いぼれも喜んで力を貸そう」「先生……ありがとうございます」胸の奥が、じんわりと温かくなる。結婚してからの三年間、一度も顔を見せられなかったというのに、恩師はずっと自分を気にかけてくれていたのだ。水琴は蓮見の体調を気遣い、し

  • 離婚後、捨てられた私は人生の頂点に立つ   第6話

    宗一郎は湯呑みをトン、と乱暴に置く。その視線は遠くを見つめ、声には悲しみが滲んでいた。「あの子が嫁いでから、お前の母親はあれほど彼女に冷たく当たっておきながら、自分の体調が悪い時は、医者の手配から何から、毎回あの子を顎で使っていたではないか。雅が我儘を言ってはその尻拭いをさせられ、財布代わりにされて。……お前が夜更けに帰るたび、夕食を温め直して待っていたのは誰だ。あの女のせいで胃を壊したお前のため、慣れぬ手つきでスープを作り、手に大きな火傷までこしらえて……!」宗一郎は、深く息をついた。「あの子の父親が亡くなり、小林家に身を寄せていた時でさえ、あの子は誰かにあそこまで尽くしたことなどなかっ

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