Partager

第457話 恋をする時だ

Auteur: 栗田不甘(くりた ふかん)
鈴は温かなミルクを両手で包み込みながら、不思議と胸の奥がぽっと満たされるような感覚に包まれていた。ふと顔を上げ、仁を見つめる。

「仁さんってさ……まさか、こんなことまでできる人だったとはね。いつの間に覚えたの?」

長い付き合いのはずなのに、こんな隠し玉があるなんて、全然知らなかった。

仁は肩の力の抜けた穏やかな声で答える。

「だいぶ前にね。たまたま今日は役に立っただけ」

――本当は、ずっとこの日を待っていた。

うれしそうに目を細めながら、仁は視線を落とす。

「気に入ったなら、これからも作るよ」

鈴は即答した。

「うん、お願い!なんかすごく得した気分!」

朝食を終えると、仁は車で鈴を帝都グループまで送ってくれた。

車を降りた鈴は、手を振って仁を見送り、それから会社の玄関へと向かった。

だが、ちょうど入ったところで――

「鈴!」

助は大股で歩いてきて、あっという間に鈴の目の前に立った。

じろじろと全身を眺め回すような視線に、鈴は思わず首をかしげる。

「助兄さん、さっきから何見てるの?」

「正直に言え。昨日の夜、なんで帰ってこなかった?」

鈴は一瞬でバツが
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Dernier chapitre

  • 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった   第1120話 式の終盤

    「よし、頑張ってみるか!」二人は顔を見合わせて笑い合い、歩調を合わせて会場へ向かった。式場のホールには、田中家と三井家の親戚や友人が大勢集まり、誰もが笑顔を浮かべ、この幸福な瞬間を共に見守っていた。まもなく時が訪れた。三井鈴と田中仁は和装の婚礼衣装に身を包み、厳かな神前式を挙げた。神前に一礼し、続いて両家の親へと深く頭を下げた。主座に座る三井蒼の顔には、深い慈しみに満ちた笑みが浮かび、その隣で様子を見守っていた田中陽大もまた、感慨深げな表情を浮かべていた。ふと隣に座る菅原麗に目をやると、かつての自分たちの姿が重なった。あの頃の愛おしい日々は、今では遠い記憶となってしまった。彼は静かにため息をついた。新郎新婦に温かいまなざしを向けた。三井鈴と田中仁が頭を下げ終えると、次は両家の両親にお茶を捧げ、口上を述べる儀式が始まった。両家の年長者たちは、それぞれ分厚いご祝儀袋を取り出し、菅原麗に至っては、大切にしまっていた翡翠の念珠を取り出し、その場で三井鈴の手首にそっと嵌めてやった。「今日からあなたたちは夫婦。苦楽を共にし、手を取り合って生きていくのよ」「ありがとう、お母さん」三井鈴は甘えるように微笑みながら答えた。その言葉に菅原麗は何度もうなずきながら満面の笑みで応えた。「いいわ、いいわ、ほんとにいいわ!」神前式が終わったあと、三井鈴は部屋へ戻り、ウェディングドレスに着替え、髪型とメイクも洋装用に整え直した。今、彼女は妊娠しているため、デザイナーが特別にドレスを仕立て直してくれた。長いトレーンが床を引きずる純白のシルク製ドレスには、無数の細かなストーンが散りばめられていた。星のようにきらめき、まるで星海に包まれているかのようだった。そのドレスに袖を通した瞬間、三井鈴はまばゆいばかりの美しさを放ち、見る者すべての目を奪った。準備を終えた彼女は、ブライズメイドたちに囲まれ、ゆっくりと式場へと歩みを進めた。田中仁は黒のオーダースーツに身を包み、式場の入り口で彼女を待っていた。そして、白いドレスに身を包んだ三井鈴の姿を目にした瞬間、その目が輝いた。思わず口からこぼれた。「私の鈴ちゃん、本当に綺麗だな!」三井鈴はふんわりと微笑み、胸が温かくなるのを感じながら目を上げて返した。「仁くんもとっても格好いい。まるで私の理

  • 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった   第1119話 結婚式

    「田中仁、あなたなんか死ねばいい!全部自業自得よ!」田中葵は暴れながら、次々と罵声を吐き出し、心の中の鬱憤をすべてぶちまけるようだった。「あなたたち全員、腹の中のクソガキもろとも死ねばいい!」「口を塞げ」田中仁の額には青筋が浮かび、目の奥に陰りが差した。その気配に引きずられるように、三井鈴の顔色も曇った。彼女の不安を察したのか、田中仁はそっと体を回して、彼女がこの場面を見ないようにし、優しく囁いた。「大丈夫、帰ろう」彼は三井鈴を抱き寄せたまま、そのまま田中葵と関わることなくその場を去った。背後のボディーガードたちは即座に動き、布を田中葵の口に無理やり押し込んだ。田中葵は必死に抵抗したが、屈強な彼らに敵うはずもなく、そのまま目を見開いたまま連れ去られていった。この件で三井鈴はすっかり怯えてしまい、その夜はなかなか安らかに眠れなかった。だが田中仁がずっとそばにいてくれたおかげで、夜が更けるにつれて三井鈴の心も徐々に落ち着き、やがて静かに眠りについた。三井鈴の穏やかな寝顔を見つめながら、田中仁はそっと彼女の耳元の髪を整え、額に優しくキスを落とした。そして静かに立ち上がり、寝室を後にした。バルコニーに出ると、田中仁は光を背にして長身のシルエットを落とし、携帯を取り出して耳に当て、通話を開始した。「田中さん、人はすでに連れ戻しました。処理はどういたしましょうか?」受話器の向こうから部下の報告が聞こえてきた。田中仁の口元がわずかに動く。そして冷たく凍りつくような声が静かに空気を震わせた。「手足の腱を切って、あいつが行くべき場所に送り届けろ」その声音には、まるで地獄から響いてきたかのような冷酷さがあった。彼の人に手を出した者には、地獄へ落ちる覚悟が必要だ。「了解しました、田中さん」通話が切れたとたん、ボディーガードたちは一切の躊躇なく部下を指示し、行動を開始した。田中葵は部屋の隅で身を縮め、すでに恐怖に駆られていた。間もなく、女の悲鳴が夜の静寂を切り裂くように響き渡った。……田中陸の銃殺刑が執行された日、フランスには雨が降り、湿った空気が辺りを包み込んでいた。空一面が暗い雲に覆われていた。田中陽大がその知らせを聞いたあと、重い病に倒れた。回復したとはいえ、以前のような体力はもう戻らず、他人に迷惑を

  • 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった   第1118話 婚姻届を提出する

    彼は一人の肩に腕を回し、軽く笑いながら言った。「鈴ちゃん、まだ迷ってるのかよ!今逃したら、次はもうないぜ」まるで彼女がめちゃくちゃ得したみたいな言い方じゃない!でも……彼女は隣にいる男を見上げた。そう考えると、たしかに得したかもしれない。一切の迷いなくうなずき、彼女は微笑んだ。「うん」たった一言だったが、彼女の気持ちははっきりしていた。三井助は思わず歓声を上げた。「よし、もうここまで来たら、日を選ぶより今やろう!今日しかないって!」今日?いくらなんでも、急すぎじゃない?「いいじゃないか。助、お前は鈴の身分証を持ってきてくれ」三井蒼はすぐに指示を出した。三井助は笑いながら返事し、飛び上がりそうな勢いで走っていった。自分の結婚のときよりよほどテンションが高かった。「はいよ、おじいちゃん!」菅原麗もさすがに驚いて、目を見開いた。ちょっと急すぎじゃない?だが迷っている暇もなく、彼女はすぐに赤司冬陽に指示を出して田中仁の身分証を届けさせ、二人は家族に見送られながら出発した。役所に到着し、写真撮影から書類記入、誓約まで一通りの手続きを終えると、二人の手には赤い結婚証明書が握られていた。三井鈴は結婚証明書を見つめ、胸が高鳴るのを感じた。昨日までのすべてが、まるで幻だったかのようだった。今回こそ、彼女は霧を払い、自分だけの幸せを手に入れたのだ。「やあ!田中夫人!」田中仁は彼女を抱きしめ、その瞬間、世界のすべてを手に入れた気がした。三井鈴は目尻を下げて笑い、「こんにちは、田中さん!」と返した。幸せの只中にいる二人は気づかなかった。少し離れた場所から、鋭い殺意の視線が彼らをじっと追っていたことに。田中葵は服の中に隠したナイフを無言で握りしめ、市役所の階段を降りてくる二人をじっと見据えていた。その瞬間、彼女は機を逃さず、一気に距離を詰めて、隠していたナイフを抜き出し、三井鈴に向かって振りかざした。「死ねえっ!」動きは鋭く、狙いは完全に三井鈴。その瞳に宿る憎しみは、すべてを飲み込まんとする勢いだった。狙いは一撃必殺。できれば母子ともに命を奪い、田中仁にも愛する者を失う苦しみを味わわせてやりたい。それが彼女の願いだった。田中葵は狂気の笑みを浮かべ、右手にすべての力を込めていた。だがその

  • 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった   第1117話 結婚の話を進める

    田中葵は子安健を思いきり突き飛ばした。彼は体勢を支えきれず、床に激しく倒れ込んだ。「やめてくれ……葵」「ドンッ」という鈍い音とともに、彼の身体は完全に力を失い、まぶたが重くなり、そのまま意識を失った。田中葵はしゃがみ込み、細い指で彼の頬にそっと触れた。そして、何の未練も見せずに立ち上がり、背を向けて去っていった。……このところ田中仁は多くの仕事を断って家に留まり、三井鈴と過ごす日々に専念していた。二人の仲睦まじさは、見ている者が思わず羨むほどだった。それを見ていた両家の年長者たちも、大いに満足していた。久々に皆が集まったこともあり、自然と二人の結婚話が持ち上がった。「今はもう婚約してるとはいえ、やっぱり正式な式を挙げてこそってもんよね」菅原麗は三井鈴をすでに実の娘のように思っていて、彼女に悲しい思いはさせたくなかった。一生に一度の結婚式は、大切な節目なのだ。「心配いらないわ、式の手配は私が全部やるから、あの子たちは当日来てくれさえすればいいのよ」「いいねいいね、本当に頼りになるよ」三井蒼は満面の笑みで頷いた。喜びごとは人を元気にするというが、今の三井家はまさにその通りで、家中に喜びが溢れ、祖父の体調さえも随分と良くなっていた。「二人が幸せなら、俺たち年長者に異論なんてあるわけないさ」その横で三井陽翔がタイミングよく口を挟んだ。「式の準備も必要だけど、鈴と仁くん、まだ籍を入れてないんだよな。そっちを先に済ませたらどうだ?」菅原麗もようやく気づいたように、自分の太ももをぽんと叩いた。「あらまあ、それすっかり忘れてたわ」そう言いながらも、やはり二人の意思を尊重する構えだった。「籍を入れるのは大事なことだし、あの子たちの考えを聞かないとね」三井鈴と田中仁が階下へ降りてくると、ちょうどその話題が耳に入ってきた。二人は同時にぽかんとし、思わず顔を見合わせた。籍を入れることについて、三井鈴も考えたことがなかったわけじゃない。けれど、自分から言い出すなんて、女の子なのに無理でしょ!?自分の面子、どうなるのよ?田中仁はそこまで深く考えていなかった。籍を入れるかどうかなんて、二人の関係には関係ないと思っていた。この人生で、彼が妻にしたいと思えるのは彼女ただ一人だった。田中仁は優しく彼女を見つめ、手を

  • 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった   第1116話 もう一度やり直す

    田中仁は黙ったまま、彼の背中を長いこと見つめていた。過去のすべてがまるで走馬灯のように流れ去り、ようやく心を落ち着けてから、ぽつりと「わかった」とだけ返した。田中陸の事件は予定通りに開廷された。田中家は弁護士に出廷を委ねたが、刑事事件であり、内容も入り組んでいたため、何時間も審理が続いたものの、まだ結論は出ていなかった。豊勢グループ。最上階のオフィスで、田中仁は一人で窓際に立ち、街全体を見下ろしていた。どれくらいの時間が経ったのか分からない頃、ドアの外からノックの音が聞こえ、すぐに赤司冬陽がドアを開けて入ってきた。「田中さん、裁判が終わりました」田中仁の胸の奥が一瞬ざわめき、口元を少し引きつらせながら言った。「判決は?」「予想通り、死刑です」赤司冬陽の言葉は、静かな湖面に石を投げ込んだように、波紋を広げた。二人の命、確かな証拠。この結末はすでに想定されていたものだったが、すべてが終わった今となっては、やはりどこか現実感が薄れてしまう。「田中会長はこのことを知ったか?」「はい、知っています。すぐに気を失いましたが、今はなんとか落ち着いています」赤司冬陽はそう答えたあと、ふと思い出したように続けた。「田中葵も裁判の傍聴に来ていましたが、判決を聞いてすぐにその場を去りました」田中陽大に田中家から追い出されてからというもの、田中葵にはかつての栄華はもう残っていなかった。田中陽大は彼女に与えた全ての不動産を取り上げただけでなく、口座までも凍結していた。今では、宝飾品を売り払ってなんとかその日暮らしをしているありさまだった。田中仁は目を細めた。田中葵が裁判に姿を見せたこと自体は驚くには値しない。ただ、彼女の反応はあまりにも異様だった。彼は気を緩めることなく言った。「誰かをつけておけ。これ以上厄介ごとを起こさせるな」赤司冬陽はすぐに意図を察してうなずいた。「承知しました、田中さん」……薄暗く湿った賃貸アパートの一室で、田中葵は鋭いナイフを取り出し、陽の光に反射して鋭く光を放っていた。彼女はハンカチを手に取ってそっと拭きながら、その瞳には燃え盛るような憎悪が渦巻いていた。子安健はその様子に気づき、咄嗟に彼女の手首を掴んだ。懇願するような声で言う。「葵、何をするつもりだ!そのナイフを置け!」田中葵は微動だ

  • 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった   第1115話 あのときこうしていればと、悔やんでも悔やみきれない

    彼はふらつきながらも立ち上がり、必死に体をまっすぐに保ちながら、一歩一歩、田中仁のもとへと近づいていった。そしてその目の前で足を止めた。二人の視線が交差する。この瞬間、田中陽大の胸には言いたいことが山ほどあった。けれど、口を開いたところで、どこから話せばいいのか分からなかった。深く息を吸い込むと、彼はようやく謝罪の言葉を口にした。「仁、これまでずっと、お前と母さんには本当に申し訳ないことをした」もしあの時、理性を失わなければ。もし一時の迷いに身を任せなければ。あの家は、壊れることはなかった。実のところ、彼はとっくに後悔していた。離婚のあの日から、ずっと悔いていたのだ。ただ、現実から目を背け続けていただけだった。そして今、こんな姿になったのも、ある意味、自分への天罰なのだろう。言い換えれば、これはすべて自業自得ということだ。田中仁の目は伏せがちに光を宿し、静かに言った。「もう、償うかどうかなんてどうでもいい。私も母さんも、もうとっくに乗り越えた」その言葉を聞いた田中陽大は、目を閉じた。こみ上げてくる涙をぐっと堪えながらつぶやいた。「そうか、乗り越えたのか、それでいい、それが一番だ!」その瞬間、彼の中で、やるべきことがはっきりと見えた。田中陽大は書斎の机から一通の書類を取り出し、それをそのまま田中仁に差し出した。「もう俺も歳だ。会社をどうこうする気力もない。豊勢グループは俺が一から築いたものだ。長年、全身全霊を注いできた。でももう疲れたんだ。少し、休ませてくれ。これからはお前に任せたい。今日から、全権を託す」田中仁は受け取ろうとしなかった。だが、田中陽大はそのまま彼の手に書類を押しつけ、重く手の甲を叩いた。それは、まるで正式な引き継ぎの儀式のようだった。「ずっと、お前にはつらい思いをさせてきた」そう言った彼の唇はわずかに震え、その目には深い後悔の色が浮かんでいた。父親として、彼は初めて田中仁に本心を語った。「陸の存在は望んだものじゃなかった。ただの過ちだった。豊勢グループを彼に継がせるつもりなんて、一度もなかった。今ではもう絶対にあり得ない。彼は過ちを犯した。その責任は、自分で取るべきだ。俺にはもう彼を止める力もない。勝手にさせるしかない。でも、お前は違う。お前は田中家の長男だ。俺たち一族の希望なんだ……」

  • 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった   第1005話 彼は彼女を庇った

    これだけ長い付き合いでありながら、田中仁が自ら雨宮グループに姿を見せたのは初めてだった。それは彼女にとって意外でありながらも、素直に嬉しかった。応接室のドアを開けたとき、雨宮栞里の声には隠しきれない高揚が滲んでいた。「仁くん、どうして急に来てくれたの?」親しげな呼び方に、彼女の想いが隠しようもなく滲み出ていた。だが彼女の喜びとは裏腹に、田中仁の表情は一切揺らがず、静かに彼女を見つめたまま、単刀直入に切り出した。「雨宮さん、話がある」「雨宮さん」という一言が、はっきりと一線を引き、彼女の幻想を無残に打ち砕いた。表情を引き締めながら、「何の話かしら?」と返すのが精一杯だ

  • 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった   第981話 婚姻が正式に決まった

    「ご親戚として言わせてもらえば、早めに日取りを決めて、あとの準備もどんどん進めていくのがいいと思いますわ」「ご親戚」という一言が、確実に両家の距離を一気に縮めた。朱欒夫人はかつて田中葵に少なからず不満を抱いていたが、近頃では田中陽大が彼女を重んじるようになり、自然とその地位も上がってきた。内心にあったわだかまりは、いつの間にかきれいに消えていた。「その点については異論ないわ。子供たちが納得しているなら、それで十分よ」田中葵は目を輝かせて言った。「それは嬉しいわ。私、フランスの有名なウェディングドレスのデザイナーを知っているの。今度連れてきて、希美にぴったりのドレスを仕立てさせま

  • 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった   第990話 前に踏み出した

    大山会長が騒ぎを聞きつけ、慌ただしく会場に現れた。その背後には、黒服のボディーガードがずらりと並び、広い会場は一瞬で静まり返る。その光景を見た大山さやかが、まるで救世主を得たかのように声を張り上げた。「パパ、助けて!」大山会長は厳しい顔つきで鋭く命じた。「何を突っ立っているんだ、早くお嬢さんを助けろ」数人のボディーガードが一斉に動き出す。その迫力に、雨宮栞里も思わず後退した。「ちょっと、何をするの……」雨宮栞里は明らかに非力で、屈強なボディーガード数人には到底太刀打ちできなかった。加えて今夜はかなり酒を飲んでおり、意識も朦朧としていて、抵抗らしい抵抗もできぬ

  • 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった   第980話 どうしても手が下せない

    「全身を綺麗に残してやる」とその言葉に込められた殺意に、品田直子は身の毛もよだつような寒気を覚えた。彼女は震える声で品田誠也の腕をつかみ、涙は糸の切れた真珠のようにあとからあとから溢れ落ちた。「ダメ、誠也、私たちこんなに長い間夫婦だったのに……」そうだ!何年も連れ添ってきた夫婦じゃないか!若くして無名で、何も持たずに始めたところから、ここまで一緒に歩いてきたのに。この何年もの間、品田誠也は彼女に不自由させた覚えはなかった。男女のことでは道を踏み外したかもしれない。彼は自分なりに品田直子にはよくしてきたつもりだった。それなのに、返ってきたのはこれか?品田誠也は鼻で

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status