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第3話

작가: 三央
遥子は、桜井美智(さくらい みち)が祐介を海市へ連れ戻しに来てくれるよう懇願した。

彼女の涙が、私の胸元を濡らしていく。

「これまで何度も、彼に行きなさいって頼んだの。

でもいつも頭を撫でてくれて、一緒に育ったんだから、もう離れられないって言うの」

遥子が突然私の手首を掴む。その力は驚くほど強い。

「でも、美智さんが教えてくれた。彼はまだ私のために犠牲になろうとしているって」

祐介が森下家に戻るためには、落とし前として遥子の片足を差し出さなければならない。

遥子はその場で凍りつき、美智に頼み込んだ。祐介に知られないよう、こっそりA市まで自分の足を取りに来てほしいと。

あの日、遥子は家を抜け出し、左足を美智に差し出した。

彼女を憎んでいた美智は、わざと用心棒が使うような太い棍棒を用意させた。

足に振り下ろされても血は出ず、すぐには折れない。けれど、一度死ぬほどの激痛が走る代物だった。

彼女は何度も殴打された。

凄まじい痛みのはずなのに、遥子の口調にはどこか誇らしさが混じっている。

「でも、祐介のことを想うと、勇気が湧いてくるの。私、逃げなかったよ」

彼女が目を閉じ、次の衝撃に備えたとき、その棒を祐介が遮った。

「何をしている!」

気の強い美智は、隠そうともせずに言い放った。

「このバカが、自分の足一本と引き換えにあなたを帰してほしいって自ら望んだのよ。だから叶えてあげているだけ」

ボロボロになり意識が朦朧としている遥子を見て、祐介は激昂した。

「あの時と同じだ、こいつの独りよがりな犠牲なんて、俺はこれっぽっちも求めていない!」

彼は遥子を抱きかかえて病院へ向かおうとするが、美智は泣きながら走り去った。

「いいわよ、必要ないって言うなら、私の余計なお世話だったわね!」

祐介は立ち尽くしたまま動かなかった。だが突然、遥子を地面に放り出すと、美智を追って走り去ってしまった。

あの日も大雪だった。

足が動かない遥子は、雪の中に放っておかれた。

北国の冬の屋外は、本当に人を凍死させるほど過酷だ。

体温が少しずつ失われていくのを感じながらも、彼女は助けを呼ばず、電話もしなかった。

ただ静かに、雪の中に横たわっていた。

あと一歩で、凍死するところだった。

そこまで聞いて、私は心の中で祐介を罵倒する。

「なんて最低な男なの」

遥子は高熱にうなされ、言葉を発するのも一苦労といった様子だ。

「南ちゃん、あのまま死んじゃっていれば、もっと良かったのかな」

私は背筋が凍る思いで、彼女の体を冷やし続ける。

「馬鹿なこと言わないで。もう喋っちゃだめ、体力を温存するのよ」

遥子は疲れ切った様子で私に寄りかかり、もう私の声も届いていないようだった。

彼女の話では、祐介は根が優しい男なのだという。

彼女の足も欲しくないし、雪の中で死なせたくもなかった。

彼はすぐに引き返してきた。美智の姿はなく、彼のポケットにはペンダントが入っていた。彼は遥子を背負って病院へ急いだ。

医師は、遥子の足は完治が難しいと告げた。

障害が残る可能性があった。

足を治すには、また莫大な費用がかかった。

祐介は、金はもう底をついた、全部知的障害を治すために使い果たしたと言い放った。

そして遥子に問った。「血を売るところまで行かなければ、お前への義理は果たせないのか」と。

遥子の全身がガタガタと震えた。

「彼はもう、私を相手にしてくれなくなった」

退院後、祐介は遥子に一言も話しかけなくなった。

夜になると、彼は翡翠色のペンダントをじっと見つめた。それは、港へ戻るための証だった。

昼間は、闇ボクシングの試合を次から次へと詰め込んだ。

体中の傷が増えていくのを見て、遥子はおろおろと狼狽えるばかりで、どうすればいいか分からなかった。

そんなある日、美智から再び電話がかかってきた。

「今日が最後。私は明日、婚約するわ。あなたが私に少しも気がないなんて信じられない。

それに、あなたの人生をこんなところで終わらせていいはずがない。もし本当に来てくれないなら、今度こそ諦めるわ」

祐介は遥子の目をじっと見据えた。

突然、何かが決壊したように彼女を突き飛ばし、外へと飛び出した。

遥子の声は、もう消え入りそうだ。

彼女の口元に耳を寄せて、ようやく聞き取ることができた。

「あんな時でも、彼は私が勝手に出歩かないか心配して、外から鍵をかけたの」

けれどあの日、二人は忘れていた。部屋の中で火にかけたままの料理があったことを。

吹きこぼれたスープが火を消し、ガスが部屋中に充満した。

そして、あっという間に火の手が上がった。
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