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【番外編①】家庭科教師だって、恋をしたい⑦(八島莉央・談)

last update publish date: 2026-10-27 13:12:48

「……お察しの通り、僕は……狸です。古来から続く化け狸の一族で、土地開発で住処を失い、仕方なく人里で暮らす事になったパターンの一匹です」

「お話なんかでもよく聞くやつですね。ガチで存在するとは思ってませんでしたが、居るんですねぇ。流石にビックリですよ」

「僕は運良く仕事も手に入り、人里での暮らしにも馴染んでかれこれ十五年くらい経つのですが……今まで一度もあんな失敗しなかったのに……うぅっ!」

 せっかく見えていたお顔が、また両手に覆われてしまった。

「私がキスなんかしたせいですよね、すみません」

「あ、謝らないで下さい!後悔しているなら、別ですが、そうじゃないなら……その……僕的には、嬉しかったんで……」

 ゆっくりと顔から手を離し、恥ずかしそうにそう言ってもらえたが、視線は横に逸らされたままだった。

「じゃあ、もしかして……私とのお付き合いはOKって感じだったりします?」

「そ、そ、それは無理でしょぉぉぉ!田舎狸な僕なんかじゃ、八島先生みたいに素敵な女性と番つがいになんか、とてもじゃないですけど不釣り合いです!」

 もげて飛んでしまいそうなくらい、狸小路さんが首を横に振る。

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     さっきまで正座をしていて、そのままの状態で倒れたので、ストレッチでもしているみたいに脚が痛い。だが、切羽詰まった瞳で、への字口を震わせ、上から私を覗き込んできている狸小路さんの心境を察すると、『ちょっと避けてもらえますか?脚が痛いんで』と言える感じでは無かった。「裏路地で、先代の理事長であるカミーリャさんに拾われた貴女を初めて見た時から、『いつかこんな可愛い子と番になりたいなぁ』って思ってたんです。で、でも、そんなふうに思ってるなんて人間である貴女になんて言えるはずがなくって『モテそうな姿はダメだよ、此処は学校だからね』ってカミーリャさんから指示があったから、人を寄り付かせないために僕あんなんだったから余計に無理で、そんな僕が可愛い貴女に話しかけなんかしたら嫌われそうで、いつもどうしていいかわからなくって遠くから見てるだけになっちゃって、でも八島さんはよく事務局まで顔を出しに来てくれたりするし、ケーキとかクッキーとか色々なお菓子を差し入れてくれて、バレンタインなんかでもちょっと皆んなよりも大きめなチョコをくれたりとかもしてくれるから、もしかしたらって思ったりもしちゃったけど、絶対にありえないから期待なんかしちゃいけない、ってずっと——」 長々と、そりゃもう色々本心をぶちまけてくれるのは嬉しいが、情報量が多過ぎる。よく一度も噛まずに言えるなと思う程の早口で捲し立てるように言われ、処理が追いつかない。「ま、待って下さい!えっと、つまり……狸小路さんと私は、ずっと前から両想いだったぞって事で合ってますか?」 彼の頰を両手で包み、ゆっくりとした口調で訊く。すると、彼はより一層顔を真っ赤に染め、おずおずとした仕草でこくっと素直に頷いてくれた。(……あぁ……もう、狸小路さんが可愛すぎてマジで辛い) 一生この人だけを推せる。この人以外を好きになるとか、ホントもう無理だわ。こんなイケメンにここまでの顔なんかされてはもう、全面降伏しか選択肢がない気がする。『変な受け答えとかしたらまずいよね』とか『姿形が全然違うけど、心変わりせずに好きでいられるだろうか?』なんて心配は無意味なのだと思わせてくれるくらい、狸小路さんの全身から溢れかえる好意が私の胸を熱くする。そのせいで、こちらの顔まで真っ赤になってしまう。「もっと早く、お互いにアプローチするべきだったみたいですね」

  • 魔女に呪われた“淫魔”達だけど、愛されたい!   【番外編①】家庭科教師だって、恋をしたい⑧(八島莉央・談)

     額に手を当てて天井を仰ぎ見る。 今の私は、情報の整理が必要な状態だ。 私はそもそも、筋肉質で細身の男性が好みだった。ちょっと着崩した格好のよく似合う、ワルっぽい感じだと更に良い。今まで付き合ってきた人達は皆そんなタイプばかりだったし、一般的にはそちらの方が比較的ウケはいいのではないだろうかとも思う。 そんな自分が、この学校で狸小路さんという内面がイケメンなおデブさんと出逢った事で、『ぽっちゃりも、なんだか素敵じゃね?』『あのお肉達にはもしかして、癒しが詰まっているのでは?』なんてふうに少しずつ思い始め、最終的には狸小路さん以外の力士系男子や重量級の柔道選手などにもトキメクにまで至ったというのに……。 まさか当の御本人の正体は、細マッチョとか。 ——コレはもう詐欺だ。訴えてやる。謝罪が欲しい。 正座をしたまま、天井に顔を向けて黙り込む私に対し不安を感じ始めたのか、狸小路さんがゆっくりと膝立ちになり、そっと私の太腿に手を乗せてきた。「やっぱり……人間じゃない奴なんか、そもそも論外ですよね」 顔は見ずとも、しゅんっと落ち込んでる事が声だけでわかる。「いやいや、違いますよ。ただちょっと……正体はイケメンかよって思っただけです」「——い、イケメンですか?僕!」 額から手を離しながら、前を向く。 目の合った狸小路さんはやっぱりどう見たってちょっと風貌の変わったイケメンだ。垂れ目がちな目は大きくって鼻筋も綺麗だし、“狸”要素は獣耳や尻尾、褐色の肌に柄のような濃淡が少しあるが、基本的な作りとしてはモデルさんレベルだといえる。ちらりと見える筋肉質な体なんて、風貌のせいもあってか、ファンタジー映画とかに出てくる格闘家の役とかがめっちゃ似合いそうで、何でか腹が立った。「何処に出しても恥ずかしくないレベルで、はい」 そう言って私が頷いてみせると、明るい笑顔で「ありがとうございます」と喜んでくれる。(あーもう、やっぱこの人可愛いなぁ) 中身から好きになっているせいか、ハムスターみたいな頬袋が無くっても、彼の笑顔が可愛く思えてしまう。顔についている肉のせいで、笑うと細められてしまった瞳が、実はこんなふうに輝いていたのだと知れた事もちょっと嬉しい。 騙されたぁ!と不貞腐れていた気持ちが少しずつ解けていくのを感じるが、これでいいのかよ私!とも思ってしまう。太っ

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