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刻罪の砂漠と、蘇る裏切り

Auteur: 吟色
last update Date de publication: 2025-08-04 01:38:56

紫がかった夜明けの空の下、淫都ラストルムの喧騒も、ようやく静寂へと落ち着きを取り戻していた。

 昨夜、契約核の欠片を取り戻したリリスは、薄布のようなローブを羽織りながら、宿の窓辺に立っていた。

「……次は、〈刻罪の砂漠〉。核の本体が、そこにある可能性が高いわ」

 低く囁くような声が、静かな部屋に溶けていく。

 ベッドではカインが裸の上半身をさらしながら寝返りを打つ。彼の肌には、昨夜交わした快楽と契約の痕が色濃く残っていた。

「……カイン」

 リリスは振り返り、ゆっくりと彼に近づいた。

 その眼差しはいつになく穏やかで、けれどどこか、哀しみに濡れていた。

「あなたが、あの時……“わたしを選んだ”理由。まだ聞いていないわね」

 彼女の問いに、カインはゆっくりと瞳を開けた。

 その目は、まっすぐに彼女だけを映している。

「……偶然なんかじゃない。あの時、あの牢の中でお前に触れた瞬間から、俺にはもう、お前しか見えなくなってた」

 言葉に嘘はなかった。

 だからこそ、リリスの指先が彼の頬に触れたとき、それは温もりではなく、ほんのわずかな震えを帯びていた。

「……だったら、その選択に、後悔させな
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