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第8話

作者: ピリ辛かも
それから3年後。蒼海総合病院のVIP病室。

御影夫人が「私を突き落とした人なんていないわ」と口にした瞬間、病室は水を打ったように静まり返った。

先ほどまでにぎやかに話していた見舞客たちも、そろって口をつぐんだ。

治正は長い沈黙の後、ふっと鼻で笑った。「母さん、寝ぼけてるのか?監視カメラには、黎月が母さんを突き落とすところが映ってた。映像が間違ってるとでも言うのか?」

そう口にした途端、治正の胸が大きく脈打った。

――映像が改ざんされている可能性だって、ないとは言い切れない。

秘書がすぐにスマホを取り出し、10年前の監視カメラの映像を御影夫人に見せた。そこには、夫人と話していた黎月が手を伸ばし、その直後に夫人が階段から落ちる様子がはっきりと映っていた。

治正は画面を指した。「母さん、見てくれ。黎月は明らかに、母さんへ手を伸ばしてる。自分で足を滑らせたはずがない」

黎月が無実であるはずがない。

もし、本当に無実だったら……

俺が10年もの間、黎月を苦しめ続けてきたことは何だったのか。

御影夫人はスマホを受け取り、映像を何度も繰り返し見た。「どうして、こんなふうに……」
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