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16話 離れの夜話と、王子の素顔

last update Date de publication: 2026-08-11 16:26:53

​冷たい夜風が吹き抜ける本邸での深夜労働を終え、マルタは疲れた身体を引きずるようにして離れへと戻ってきた。

​扉をそっと開けると、室内にはカンテラの温かな光が広がっていた。そこには、すでにお風呂を済ませ、髪を綺麗に乾かした8歳のルシエラが、小さな机に頬杖をついてマルタの帰りを待っていた。

​「おかえりなさい、マルタ。お仕事、おつかれさま」

​「ただいま戻りました、ルシエラ様。遅くなってしまってごめんなさいね。……あら? 何か良いことでもありましたか?」

​マルタはルシエラの表情を見て、すぐに察した。

普段のルシエラは、実の父母である公爵夫妻や屋敷の使用人たちに対して、大人すら射殺すような冷徹で静かな『無』の態度を貫いている。だが今夜の彼女は、どこか楽しそうに深紅の瞳を細め、薄い唇に悪戯っぽい笑みを浮かべていたのだ。

​マルタが手早く温かいハーブティーを二つのカップに注ぎ、テーブルに腰を下ろすと、ルシエラは待っていましたとばかりに小さな身を乗り出した。

​「ねえマルタ。さっき、湖でお風呂に入っていたらね、妙な男の子が迷い込んできたの」

​「えっ……? 男の子、ですか?」

​「うん。不吉
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