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第15話 おはよう、また恋をしよう ⑤

Author: もふねこ
last update publish date: 2026-10-03 17:03:00

「あの子だ、そう、あの子」

ばぁちゃんは遠くを見つめて、小さく何度もうなづいた。

「……ばぁちゃん?」

「思い出したぞ、智也。あの子、オマエとよくマウントの取り合いみたいな事をして戯れ合っていた子だろう?」

「そう!そいつトラ!何でばぁちゃんが知ってんだよ」

「ああ、よく美彩子《みさこ》の代わりに私が智也を習い事に連れて行ってたからね。トラくん……、なるほどだね」

「かぁちゃんの代わりか!」

「そうそう、美彩子も忙しかったからね。そう言えば、練習の間、トラくんのお母さんとは何度も話したことがあって、確か、みどり台小学校で……、ん〜ん……、そう、ひばりの丘駅のサンロードストアの隣に住んでるって言ってたはずじゃ」

「それは初耳だ。ばぁちゃんナイス!」
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    *** 真っ暗な自宅に戻ると、静寂がどっと押し寄せた。 トラのいないベッドで寝るなんていつぶりだったかな…なんて浮かんでくる。 いつもの狭くてぎゅうぎゅうの、でも、陽だまりみたいに暖かなベッドが恋しい。 トラの体温が無いここで、寝れるのだろうか──。 『──と、─も、──ともや、──智也くん!智也くん!』 『ボクはここだよ!ここ!ここにいる!智也くん!』 『智也くん!智也くんっ!智也くんっっ!!──』 「──トラッッ!!」 ガバッと飛び起きた。 「はぁっ、はぁっ…」 心臓がバクバクと早鐘のように鳴り、息は上がり苦しかった。 トラが必死でオレを呼ぶ姿が、まだ脳裏に残っっていた。 カーテンの隙間から、眩しい朝日が差し込んでいた。オレは知らずに寝ていたようだった。 「早くトラを見つてやらないと…」 熱いシャワーを浴びてから、トラの実家に向かった。 *** 電車を何回か乗り換えて、ばぁちゃんに教えてもらったトラの実家がある最寄り駅までやってきた。 まだ活気のある商店街のアーケードを抜けると、ばあちゃんが言っていた「サンロードストア」があった。地元のスーパーといった小規模なスーパーだった。 「…ここの隣か…」 スーパーの建物に沿って角を曲がりキョロキョ

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    「あの子だ、そう、あの子」 ばぁちゃんは遠くを見つめて、小さく何度もうなづいた。 「……ばぁちゃん?」 「思い出したぞ、智也。あの子、オマエとよくマウントの取り合いみたいな事をして戯れ合っていた子だろう?」 「そう!そいつトラ!何でばぁちゃんが知ってんだよ」 「ああ、よく美彩子《みさこ》の代わりに私が智也を習い事に連れて行ってたからね。トラくん……、なるほどだね」 「かぁちゃんの代わりか!」 「そうそう、美彩子も忙しかったからね。そう言えば、練習の間、トラくんのお母さんとは何度も話したことがあって、確か、みどり台小学校で……、ん〜ん……、そう、ひばりの丘駅のサンロードストアの隣に住んでるって言ってたはずじゃ」 「それは初耳だ。ばぁちゃんナイス!」 「ご実家で何かわかるかもしれないですね」 「そこから何か辿れるといいわね。まぁいきなり『お付き合いしている者です』とか口滑らすんじゃないわよ。アンタ馬鹿だからさっ」 涼《すず》くんは優しい笑顔だった。 「おう、そうだな!気を付けるぜ」 「私も出てきた意味があったようだね。頑張んなさい、智也。大事な人なんだろ」 「まあな!どんな事があっても一生、いや、死んでも一緒にいるって決めてるからな。ばぁちゃん、サンキューな」 「あははっ!良いね、私の孫らしい。頑張んな、智也」 「おお、ばぁちゃん!影山くんも涼《すず》ちゃんもありがとな」 「力になれて良かったです」 「何かあったらまた来ても

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    「はい。蘭子さんならもしかしたらわかるかもしれません」 「ばぁちゃんか。……ちゃんと天国に、いるんかあの人?」 急にボコッと頭を叩かれた! 「このっ!天国に決まってるだろう!口の減らんヤツめっ!」 振り向くと蘭子ばぁちゃんがフワフワと浮いて現れていた。 「ばぁちゃん!」 「ああっ、また呼ぶ前に出てこられましたね…」 影山くんは困惑した顔になった。 「ばぁちゃんどうせ話聞いてたんだろ?トラ、そっちにいるかわかんないかな?」 「こっちの広さは地球どころじゃないからな。天国事情は1部しかわからん。ただ、わかる中で言えば、いない」 頭をゆっくり左右に振った。 「そっか…。でも、いないってことは、まだこっちにいる可能性があるってことだよな」 「そうですね。可能性は残されてますね」 「何か手掛かりがないもんかな〜…」 オレは頭をクシャクシャっと掻いた。 「でもさ、ばぁちゃんは天国からヒョイヒョイこっちに戻ってこれるわけじゃん?トラが成仏しててもこっちに来れるなら問題ないんじゃねぇの?」 「西口さん、おばぁ様がこちらに来れてるのは、僕の力が助けになっているからだと思われます」 「そうよ、なーくんの力よ。それに大した時間居れないはずよ。ゆっくりアレもコレもする時間なんてないわよ」 「可愛い顔して随分意味深なこと言う子だね。最近の子はこんななのかい?」 ばぁちゃん

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    「今日いなくなったんですか?」 「そう。夜になって現れなかったんだ」 「うーん…。そんな日もあるのかもしれない気もしますが…」 「オレが作る唐揚げの日だぞ?トラの大好物だ。現れないなんて、何かあったとしか思えない」 「なるほど。恋焦がれる西口くんの存在と大好物の唐揚げ…。幽霊って欲に動かされやすいはずなんですよね…」 「ちょっとなーくん、幽霊のことそんな風に思ってるの?」 涼《すず》ちゃんは腕を組み影山くんを上から見下ろした。 「あ、まぁ、一般論というか、ボクの体感というか…、えーーと」 影山くんは涼《すず》ちゃんには弱く、しどろもどろだった。 「体感ねぇ…。それは後でまたなーくんには実感してもらうとして、でも確かにアンタから感じてもいいはずの、あの子の影みたいな執着が強く感じられないのよね…」 「そこは執着の強い幽霊同士、涼《すず》の方が僕よりわかりそうだね」 「一括りにし過ぎだわ、なーくん。アタシの執着300年、前前前世からみたいなもんだからね。あの子の執着なんて昨日からみたいなもんだわ。ヒヨッ子よ!…でも、まぁ、あの子なりの執着の強さも知ってるんだけど…」 「今の今、トラの執着がオレに対して弱いってことか?」 「そうね、あの子だったらアンタが一人の時でも雁字搦《がんじがら》めにしてそうだもの」 「どうにかトラの居所…、いや、何か些細なことでも良い、わかること教えて欲しいんだ」 「アタシもそう思って、さっきから色んな方向から試してるんだけどね…」 いつもと違っ

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    「……んんッ!あっ、あっ、はっぅっ、も、ダメっ、イクッ…トラッッ!!」 智也の身体はギュッと硬直すると勢いよく白濁を自分の腹の上に放った。 智也のビクビクと痙攣する太腿を抑えて、ボクを求めて畝《うね》る腹の奥へ昂《たかぶ》りの全てを吐き出した。 「…アッッ!!はぁっ…、智也、智也好き…っ」 「…うッうッ…あっ、トラ…好…」 そのまま抱きしめあって、何度も深く唇を求めあった。 全てが溶けて混ざり合うそんな重なりに、ボクはまた鮮明な自分を取り戻すみたいだった。 そのままボクの腕の中でうつらうつら気持ちよさそうな智也くんを宝物のように慈しむ。 「…トラ、まじで一生、オレのもんでいろよ…」 半分寝言みたいに呟いた。 「うん、ちゃんとわかってるよ。智也くんも全部ボクのものだよ…」 ふっと目が開いて、幸せそうにボクの頬を撫ぜた。 「…また明日、智也くん。おやすみ…」 そう言って、智也くんの頬にキスをした。 *** もう朝日はとっくに昇り、微睡みの中いつもの遅い土曜の朝を迎えた。 昨夜一緒に眠りについたはずの幽霊のトラは朝日と共に、いつも通り消えてしまった。 ただ、昨夜愛を確かめ合った身体は、幸福感に満ちた気怠さに包まれていた。そして、トラの存在の証のように、オレの身体に残された赤紫の沢山の痕たち──。 「トラ、おはよー。いやいやキスマ残し過ぎだからな〜」 胸元の赤紫を撫でながら、一人きりの部屋にオレのニヤけた声だけが響いた。 午前中は溜まった洗濯物や家事をして、午後は最近通いだしたジムへ行き買い物をして帰った。 今日はオレが夕飯を作ることにしていて、トラの大好物、唐揚げの下味まで日のあるうちに仕込んでおいた。 「うん、絶対美味いはず」 そして、夕日の眩しさに目を細めながら夜が訪れるのを楽しみに待った。 待った。 トラを待った──。 すっかり暗くなった夜空を確認した。 「……トラ?おーーい、トラちゃーーん!?」 小さな部屋を隅々まで見渡した。風呂もトイレもベッドの下も、冷蔵庫の中まで。 「トラ!?…トラ??…トラ?……」 何度見回しても、何度名前を呼んでも見えないどころか、物音一つしなかった。 「…トラ、何か用事あるのか?…幽霊にも急用があったりする、かも

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