Teilen

第15話 おはよう、また恋をしよう ⑨

last update Veröffentlichungsdatum: 07.10.2026 16:03:00

***

本堂の時のように本格的な準備はとても出来なかった。

今回は本当にみんなの力の集約に掛かっている。

4人でトラを囲んだ。影山くんは右手に数珠を掛け、祈るような形をとり、左手で涼《すず》ちゃん、その次にばぁちゃん、そしてオレと順に手を繋いでいく。最後にオレはトラの手を取り、しっかりと握った。

影山くんがブツブツとお経らしきものを唱え始めた。

全員が目を瞑った。

病室の空気が徐々に緊張感で張り詰めていくのを感じた。

息苦しいほどの力が身体に押し寄せて来る。そして、その力を全員が解き放つように、声を合わせ真言を唱える。

影山くんは真言一語一語をトラへ宿すように、数珠をトラの額に押し当てる。

Lies dieses Buch weiterhin kostenlos
Code scannen, um die App herunterzuladen
Gesperrtes Kapitel

Aktuellstes Kapitel

  • 「ボクとエッチしてください!」〜オレがイケメン童貞に迫られた件〜   第15話 おはよう、また恋をしよう ⑨

    *** 本堂の時のように本格的な準備はとても出来なかった。 今回は本当にみんなの力の集約に掛かっている。 4人でトラを囲んだ。影山くんは右手に数珠を掛け、祈るような形をとり、左手で涼《すず》ちゃん、その次にばぁちゃん、そしてオレと順に手を繋いでいく。最後にオレはトラの手を取り、しっかりと握った。 影山くんがブツブツとお経らしきものを唱え始めた。 全員が目を瞑った。 病室の空気が徐々に緊張感で張り詰めていくのを感じた。 息苦しいほどの力が身体に押し寄せて来る。そして、その力を全員が解き放つように、声を合わせ真言を唱える。 影山くんは真言一語一語をトラへ宿すように、数珠をトラの額に押し当てる。 「…──列・在・前ッッ!!」 最後の真言に、部屋中の空気が打ち震えるような漲《みなぎ》る力を感じた! その瞬間、部屋中が光に包まれ、トラの身体が衝撃を受けたように跳ね上がった。 『頼む!トラッ!来いっ!帰って来いっ!!』自分の心の声が反響するみたいだった。 トラの表情が歪んだと思うと、体は力無くバタリとベッドの上に落ちた…。 『失敗かもしれない』 そんな落胆した、ため息混じりの顔になった時だった──。 「……あ、あ…」 トラが小さく呻き、ゆっくりと瞼が開いた。 「…ト、トラ?トラ?」

  • 「ボクとエッチしてください!」〜オレがイケメン童貞に迫られた件〜   第15話 おはよう、また恋をしよう ⑧

    影山くんが珍しく落ち着かない様子で病室へ入ってきた。 「影山くん悪りぃ。連絡しちまって…」 トラの居場所がわかって、すぐにLINEを入れておいた。 「いや、驚いたよ。生きてるってどういう事なのかと思って…。でも、見つかって良かった」 すると、影山くんの背後からブツブツ言いながら、涼《すず》ちゃんがするりと現れた。 「…病院って所は気が滅入るわね。こういう所って嫌いだわ」 「ああっ、涼《すず》ちゃんも!?」 「涼《すず》も行きたいと言って…」 「何か変わったモン見れそうって思っただけよ」 いつもの調子でツンとして見せた。 「二人とも心配して来てくれてありがとうな。涼《すず》ちゃん、影山くんちから出られるんだな」 「なーくんの力があるからよ」 「でもそこに、涼《すず》の行きたい気持ちがなければ無理だよ」 「生きてるって、どういう事かと興味があっただけ…」 「素直じゃないんだからな、涼《すず》は」 そう言われて涼《すず》ちゃんは小さく鼻をフンと鳴らし、トラを覗き込んだ。 「ねぇそれより、この子起きないの?生きてるんでしょう?」 「意識が何年も戻らないらしいんだ…」 「なるほど。幽霊のトラくんは、生霊だった可能性が高いということですね」 「道理で普通の幽霊より存在感があったのね。…強い子。余程の未練があったか、迷子ちゃんだっ

  • 「ボクとエッチしてください!」〜オレがイケメン童貞に迫られた件〜   第15話 おはよう、また恋をしよう ⑦

    *** そこはかなり大きな病院だった。オレは面会の受付を済ませ、やけにゆっくりに感じるエレベーターで落ち着かない気持ちを抑えて上階へ上がった。 「あ、庄司さんのお母様から伺ってます。部屋は1001です。この奥です」 ナースステーションに声を掛け指で示した方へ。1001号室は廊下の1番奥の部屋だった。 オレはドアに手を掛けたが一瞬躊躇した。 喉はカラカラなのに、扉の前でゴクリと唾を飲み込んだ。 思い切ってドアを開けた。 目に入った白いベッドへ足が縺《もつ》れるように駆け寄った。 「……トラッ!?」 そこには男性が寝入るように横たわっていた。 ぱっと見、本当にトラなのか分からなかった。 長めに伸びた黒髪。オレの知ってるトラよりも痩せて見えた。 しかしすぐに、輪郭も小さなホクロの位置も、オレの中でしっかりトラと重なった。 「トラッ!!」 「トラ…、トラ……。オマエなんだな…」 喜びか何なのか分からないごちゃまぜな感情に、勝手に涙が零れ落ちた。 「……うっ……、トラ……、どういうことだよ……。生きてるって言ったって、こんな……」 耳元で名前を呼んでも、話しかけたって、まるで起きる気配がなかった。 オレは生身のトラの頬にそっと手を当てた。初めて触れたトラの頬は

  • 「ボクとエッチしてください!」〜オレがイケメン童貞に迫られた件〜   第15話 おはよう、また恋をしよう ⑥

    *** 真っ暗な自宅に戻ると、静寂がどっと押し寄せた。 トラのいないベッドで寝るなんていつぶりだったかな…なんて浮かんでくる。 いつもの狭くてぎゅうぎゅうの、でも、陽だまりみたいに暖かなベッドが恋しい。 トラの体温が無いここで、寝れるのだろうか──。 『──と、─も、──ともや、──智也くん!智也くん!』 『ボクはここだよ!ここ!ここにいる!智也くん!』 『智也くん!智也くんっ!智也くんっっ!!──』 「──トラッッ!!」 ガバッと飛び起きた。 「はぁっ、はぁっ…」 心臓がバクバクと早鐘のように鳴り、息は上がり苦しかった。 トラが必死でオレを呼ぶ姿が、まだ脳裏に残っっていた。 カーテンの隙間から、眩しい朝日が差し込んでいた。オレは知らずに寝ていたようだった。 「早くトラを見つてやらないと…」 熱いシャワーを浴びてから、トラの実家に向かった。 *** 電車を何回か乗り換えて、ばぁちゃんに教えてもらったトラの実家がある最寄り駅までやってきた。 まだ活気のある商店街のアーケードを抜けると、ばあちゃんが言っていた「サンロードストア」があった。地元のスーパーといった小規模なスーパーだった。 「…ここの隣か…」 スーパーの建物に沿って角を曲がりキョロキョ

  • 「ボクとエッチしてください!」〜オレがイケメン童貞に迫られた件〜   第15話 おはよう、また恋をしよう ⑤

    「あの子だ、そう、あの子」 ばぁちゃんは遠くを見つめて、小さく何度もうなづいた。 「……ばぁちゃん?」 「思い出したぞ、智也。あの子、オマエとよくマウントの取り合いみたいな事をして戯れ合っていた子だろう?」 「そう!そいつトラ!何でばぁちゃんが知ってんだよ」 「ああ、よく美彩子《みさこ》の代わりに私が智也を習い事に連れて行ってたからね。トラくん……、なるほどだね」 「かぁちゃんの代わりか!」 「そうそう、美彩子も忙しかったからね。そう言えば、練習の間、トラくんのお母さんとは何度も話したことがあって、確か、みどり台小学校で……、ん〜ん……、そう、ひばりの丘駅のサンロードストアの隣に住んでるって言ってたはずじゃ」 「それは初耳だ。ばぁちゃんナイス!」 「ご実家で何かわかるかもしれないですね」 「そこから何か辿れるといいわね。まぁいきなり『お付き合いしている者です』とか口滑らすんじゃないわよ。アンタ馬鹿だからさっ」 涼《すず》くんは優しい笑顔だった。 「おう、そうだな!気を付けるぜ」 「私も出てきた意味があったようだね。頑張んなさい、智也。大事な人なんだろ」 「まあな!どんな事があっても一生、いや、死んでも一緒にいるって決めてるからな。ばぁちゃん、サンキューな」 「あははっ!良いね、私の孫らしい。頑張んな、智也」 「おお、ばぁちゃん!影山くんも涼《すず》ちゃんもありがとな」 「力になれて良かったです」 「何かあったらまた来ても

  • 「ボクとエッチしてください!」〜オレがイケメン童貞に迫られた件〜   第15話 おはよう、また恋をしよう ④

    「はい。蘭子さんならもしかしたらわかるかもしれません」 「ばぁちゃんか。……ちゃんと天国に、いるんかあの人?」 急にボコッと頭を叩かれた! 「このっ!天国に決まってるだろう!口の減らんヤツめっ!」 振り向くと蘭子ばぁちゃんがフワフワと浮いて現れていた。 「ばぁちゃん!」 「ああっ、また呼ぶ前に出てこられましたね…」 影山くんは困惑した顔になった。 「ばぁちゃんどうせ話聞いてたんだろ?トラ、そっちにいるかわかんないかな?」 「こっちの広さは地球どころじゃないからな。天国事情は1部しかわからん。ただ、わかる中で言えば、いない」 頭をゆっくり左右に振った。 「そっか…。でも、いないってことは、まだこっちにいる可能性があるってことだよな」 「そうですね。可能性は残されてますね」 「何か手掛かりがないもんかな〜…」 オレは頭をクシャクシャっと掻いた。 「でもさ、ばぁちゃんは天国からヒョイヒョイこっちに戻ってこれるわけじゃん?トラが成仏しててもこっちに来れるなら問題ないんじゃねぇの?」 「西口さん、おばぁ様がこちらに来れてるのは、僕の力が助けになっているからだと思われます」 「そうよ、なーくんの力よ。それに大した時間居れないはずよ。ゆっくりアレもコレもする時間なんてないわよ」 「可愛い顔して随分意味深なこと言う子だね。最近の子はこんななのかい?」 ばぁちゃん

Weitere Kapitel
Entdecke und lies gute Romane kostenlos
Kostenloser Zugriff auf zahlreiche Romane in der GoodNovel-App. Lade deine Lieblingsbücher herunter und lies jederzeit und überall.
Bücher in der App kostenlos lesen
CODE SCANNEN, UM IN DER APP ZU LESEN
DMCA.com Protection Status