奏はあのヨットにいる。じゃあママも、そこにいる可能性がある?そう思った瞬間、蓮はすぐスマホを手に取り、とわこの番号を押す。とわこはすぐに電話に出る。「ママ、今どこ?」「ママは今、病院にいるよ」とわこは俊平を一度見てから、優しく言う。「ママの昔の同級生が骨折してね。入院したからお見舞いに来てるの」「そっか」蓮は胸をなで下ろすが、同時に不思議に思う。「どの同級生?」「ママが大学院にいた頃の友達。ちょうどY国に旅行に来て、不運にも怪我しちゃったの」「わかった」蓮は二秒ほど黙り、それから言う。「ママ、もうすぐ新学期なんだ」とわこは胸が締め付けられる。「蓮、ごめんね。ママ、今回は一緒に学校へ行けないの。代わりにマイクに送ってもらってもいい?時間ができたらすぐに会いに行くから」「うん」予想していた答えだったけれど、それでも蓮は胸の奥が少し痛くなった。電話を切ると、蓮はマウスを握り、ニュース画面を閉じ、航空便を検索する。ママが帰れないなら、自分が行けばいい。新学期が始まる前に、ほんの少しでも会いたい。こっそり一人で行くつもりだ。冒険したいわけじゃない。ただ、ここ数日マイクはとても忙しい。ちょうどチケットを購入しようとした瞬間、部屋のドアが急に開いた。マイクの顔がのぞく。「蓮、俺、会社行ってくる。何かあったら電話して」蓮の心臓は一瞬強く跳ねるが、表情は落ち着いたまま。「会社で何かあったの」「ちょっとな。すみれが、どっからかめちゃくちゃ優秀な開発者を引っ張ってきたんだ……あの人、かなり謎でな。ここ数日ずっと経歴を探ってる」マイクはため息をつく。「まあ心配すんな。会社が潰れたとしても、俺がちゃんとお前らを養う」わざと軽い口調でそう言って、マイクは部屋を出ていく。蓮はいま、三千院グループのことを考える余裕はない。頭の中は、とわこの安全のことばかりだ。Y国。とわこと蓮の電話が終わったあと、とわこは三郎へ再度電話をかける。さっきから何度かけても出なかった。忙しいのか、それともわざと出ていないのか。通話ボタンを押したまま、とわこは入口の方を見る。もう一時間近く経っている。本来なら救急車はもう着いているはず。もしかして、運ばれる病院がここじゃない?不安が胸を締めつける。そのとき、三
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