病状のさらなる悪化を防ぐため、悠斗は第一回目の化学療法を明後日に決めた。化学療法には多くの副作用があり、治療後の最初の二週間は極度の体力低下や脱毛に見舞われる。そのため、優子は事前に手元の事務をすべて片付けておく必要があった。信也は未だに意識が戻る気配を見せておらず、幸いにも治療費に関しては心配する必要がなかった。費用の更新手続きを済ませた後、彼女は家へと戻った。そこはかつて、彼女と峻介が新婚生活を送るために用意した家だった。もうすぐ自分もこの家を離れることになると思うと、化療後に体が持たない可能性を考慮して、彼女は事前に引越し業者を呼んでおいた。一緒に駆けつけたのは、彼女の親友・福田真澄。スーツ姿でバッグを肩にかけ、ハイヒールを履いて、手には焼き芋を二つぶら下げながらやってきた。遠くからでもその大きな声は響いてきた。「ついに地獄から解放されるんだね!私、今月分の家売却のコミッションが入ったばかりよ。 今夜はブラックポニークラブで豪遊しよう!いい男なんてどこにでもいるから、そんなに落ち込まないで!」優子が姿を消していたこの一週間、真澄は海外にいる彼氏に会いに行ったため、彼女の病気のことは知らなかった。だからついに離婚を決意したのだと思い込んでいた。優子は微笑んで答えた。「それはダメだよ。もし彼氏さんが、真澄がブラックポニークラブに行ったってバレて、私に責任取れって言ったらどうするの」「もうその話はやめてよ。私、もう北半球の『真実の愛』なんて二度と信じないって決めたの。サプライズしようと思って彼に会いに行ったのに、あいつ、私が稼いだ金であっちで女養ってたのよ!」真澄は口汚く罵りながら、こらえきれず涙を流した。七年の愛は、ついに遠距離の果てに終わりを迎えたのだ。慰めようとした優子だったが、自分自身の荒れ果てた結婚生活を思い出して言葉が詰まった。彼女自身もその地獄の住人なのに、誰を救えるというのか。「真澄なら大爆発しそう」真澄は彼女を引っ張って庭の花壇に腰を下ろし、焼き芋を一本手渡して、まるで何事もなかったかのようにモグモグと食べ始めた。「長年遠距離恋愛のせいで性格も丸くなったかもね。それに、どこかで気づいてたのかも。好きな人のいいところなんていくらでも探せるけど、嫌いになるには欠点一つで十分だから」灰色の空
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