ネットに投稿された動画は、すぐさま探偵の手によってビッグデータを用いて、桃のスマートフォンに自動でプッシュ通知された。そのとき桃は、病室で香蘭の看病をしていた。ようやく一息ついたタイミングで、スマホを手に取り、誰かから連絡が来ていないか確認していたところだった。そんなとき、ふと一件のニュース通知に目が止まった。「衝撃映像――繁華街で女性が突き飛ばされ、後頭部を強打。地面は血の海に!」いつもなら、こういったセンセーショナルなタイトルの動画はスルーしていたはずなのに、なぜかその時は、まるで引き寄せられるように桃はリンクをタップしていた。映像が再生された瞬間、椅子に腰掛けていたはずの桃は、ガタッと立ち上がっていた。画面に映っていたのは――見間違えようもない。ひとりは母の香蘭、もうひとりは、美穂だった。映像はやや遠目だったため、ふたりの会話ははっきり聞き取れなかったが、途中から香蘭がひどく怒り、美穂に向かって歩み寄ったその瞬間、美穂は彼女を思いきり突き飛ばしたのだった。香蘭の身体は階段を転がり落ち、そのまま動かなくなった。動画を見つめながら、桃の手は小刻みに震えていた。まさかあんな人前で、美穂がこんなことをするなんて……唇をぎゅっと噛みしめる桃。その唇はとうに切れ、血がにじんでいたが、彼女は痛みにさえ気づいていなかった。ただひたすら、画面をにらみ続けていた。続く映像には、すぐに菊池グループの関係者が現れ、その場にいた人々に動画の削除を強く求めている様子が映っていた。海は倒れた香蘭を抱きかかえ、急いで車に運んだ。一方、美穂は一度も振り返ることなく、ただこの件は必ず揉み消すように指示して、そのまま立ち去ってしまった。なるほど、あの時、自分が病室に来たとき、海の様子が妙に落ち着かないように見えたのは、これが理由だったのだ。彼はすべてを知っていた。だが、美穂を守り、菊池家の名誉のために、口をつぐんでいた。許せない……どうしても許せない……胸の奥から噴き上がる激しい憎しみは、抑えようとしても抑えきれなかった。母が生死の境を彷徨っているその時、美穂は――もしかすると、のうのうと優雅に日常を楽しみ、もしかすると、あの二人の子どもたちの前で「理想の祖母」を演じていたかもしれない。そう思うだけで、桃は怒りで震えた。できることなら
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