美穂は、子どもたちに首を絞められたと言っただけで――あの動画を見せたことについては、最初から完全に黙っていた。雅彦に問い詰められると、彼女は逆切れした。「なによ、だって悪いのは桃でしょ? あの子たちだって、まるで狂ったように私に反抗して……『ママのところに帰る!』って叫んで、全然言うこと聞かないのよ。私にどうしろっていうの?」それを聞いた永名も、すぐに美穂をかばうように言った。「そうだ。お前の母さんも、やり方が少し強引だったかもしれんが、そもそもの問題は桃にあるんじゃないか?あんな恥さらしなことをしておいて。しかも、母さんは怪我までしてるんだぞ?それなのに、お前は心配するどころか、こんな口調で責め立てるなんて……私の育て方が悪かったのか?」その言葉を聞いた雅彦は、もうこのふたりとはまともに話ができないと悟った。深いため息をつき、そのまま背を向けて去っていった。心の中は疲れ切っていた。桃の件、子どもたちの拒絶、そして両親からのプレッシャー――どれも重く、のしかかってくる。ホテルの部屋に戻った雅彦は、タバコに火をつけた。かつて桃がタバコの匂いを嫌がったこともあり、もう長いこと吸っていなかったが、今はただ、何もかもを忘れたくて、少しでもこの痛みを麻痺させたくて、火をつけた。気がつけば、煙草の箱はもう空っぽになっていた。煙に包まれた部屋の中で、雅彦はまるで何も感じていないかのようにベッドへ倒れ込み、目を閉じた。……その夜、安らかに眠れた者はいなかった。翌朝。香蘭は早朝から身支度を整え、菊池グループ本社ビルの前で張り込みを始めた。桃とも連絡がつかず、雅彦に電話をしても出ない――ならば、もう自分で動くしかない。長時間待ち続け、ようやく雅彦の車がビルに入ってくるのが見えた。香蘭は急いで駆け寄ったが、車から降りてきたのは、雅彦ではなく美穂だった。実は雅彦は、昨夜からずっと部屋にこもって一歩も外に出てこず、見かねた美穂が、会社に緊急の用がないか確認するために代わりに出てきたのだった。車から降りた美穂は、目の前の香蘭に気づくと、眉をひそめた。そしてすぐに、この中年女性が桃の母親だと気づいた。どうやら、ここで待っていたのは雅彦に話があるからに違いない。美穂は香蘭の全身を上から下まで値踏みするように見た。香蘭は、一晩中娘と孫の
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