誠は思わず口元を引きつらせた。その横で、悦奈は呆れ果て、白目が天井まで向きそうになっていた。「ちょっと、私は娘でしょ?それとも彼の方が大事なの?」「娘より婿の方が大事に決まってるじゃないか」智昭と和代は、まるで示し合わせたかのように声を揃えた。──悦奈が何もできず、ただ遊ぶだけの人間だとわかっている。だからこそ、いい婿を探していたのだ。いずれ水野家を支えるのは娘ではなく婿だ。だから、娘は少し脇に置いてでも、こんなにいい婿は逃せない。誠は、これほどまでに厚い歓迎を受けたのは生まれて初めてで、どう反応していいか分からず、ぎこちなく笑うしかなかった。その様子を見て、悦奈は頭を抱えた。「……もうやめて」「何か食べたいものある?お昼、家で一緒にどう?」和代がにこやかに尋ねた。誠はちらりと悦奈を見た。──え、俺、食事って言ったっけ?悦奈は両親のあまりの熱心さに、さすがに堪えられなかった。──まるで自分が誰にももらわれないみたいに見えるじゃないか。彼女は立ち上がり、誠を両親の間から引っ張り出した。「父さん母さん、彼は私の彼氏なんだから、ずっと話し込まないでよ。二人でゆっくり話したいの」「ああ、そうかそうか」智昭はすぐに納得し、にやりと笑った。「若い二人の時間だな。うん、それは大事だ。ほら、案内してあげなさい。家の中、見せてやるといい。それから……悦奈の部屋でもゆっくり――」「……」悦奈は言葉を失った。──ああもう……こんな親、ありえない。これじゃ、まるで私が本当に嫁の行き場がないみたい。本当に、顔を丸つぶれだ。「……絶対、私この家の子じゃないわ。ほんとは誠の方があなたたちの子でしょ?」「はは、それは間違ってないな」智昭は冗談めかして笑った。「婿は半分息子みたいなもんだ。もう、家族同然だよ」「……」悦奈は言葉を失った。誠もまた、乾いた笑いを浮かべるしかなかった。悦奈はもうこれ以上、あのリビングにはいられなかった。──あの調子じゃ、次は何を言い出すか分かったもんじゃない。彼女は半ば逃げるように誠の腕を引き、階段を駆け上がった。部屋のドアを閉めた途端、誠が口を開いた。「お前の両親、どうやら俺のこと気に入ったみたいだな?」悦奈はむっつりとしたまま
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