「うっ!」痛みに堪えきれず、香織は低く呻いた。その指先は、圭介の腕の肉に食い込むほどに力を込めていた。圭介は彼女の痛みを理解していた。だが、この状況で慰めの言葉など──あまりにも無力だった。彼は彼女の頬を撫でながら、憲一に言った。「早くしてくれ」憲一は既に最速で作業していた。集中して、弾を取り除くことに専念していた。幸いなことに、特殊な器具を使わずとも弾丸の位置がはっきりと見えていたため、処置は順調だった。弾を取り出した瞬間、血がさらに激しく流れ出した。彼は止血薬を傷口に押し付け、出血を抑えた。香織は、あまりの痛みに気を失いそうになった。彼女の体はまるで風呂上がりのように、汗でぐっしょりと濡れていた。憲一は車外にいる誠に向かって叫んだ。「出発だ」誠がすぐに車に乗り込みんだ。「弾は取り出せたのか?」「ああ」憲一は短く答えた。車が再び走り出した。この場所はすでにF国との国境に近い。この街を越えて少し進めば、D国の境界線を超える。「少し休め」憲一は香織に声をかけた。だが彼女はもう、返事をする余力もなかった。圭介の腕の中で、ぐったりと身を預けていた。「眠ってていい」圭介が囁くと、香織は小さく彼に体を寄せた。閉じたまぶた。乾ききった唇。そして、血の気を失った顔色は、まるで白紙のように真っ白だった。──どれほど時間が経ったのか。やがて、彼らはD国を出て、F国の領内に入った。これで、少しは安全になった。少なくとも、F国の領土内では、あれほど公然と銃を向けてくることはできないはずだ。だが、それでも彼らは警戒を緩めず、すぐに屋敷へは戻らなかった。ウォース町であっさり見つかったことから、追跡されている可能性を考慮し、車を乗り換え、迂回ルートを取ったのだ。車を降りる際、憲一が前に出た。「俺が香織を抱えていこうか?」「必要ない」圭介は即座に言った。圭介は頑なに自分で抱き上げた。憲一はそれ以上言わず、道案内をする役に徹した。「お前って、本当に器が小さいな」憲一は呆れたように言った。「怪我してるし、目も見えない状態だろ?手伝っただけだ。香織にやましい気持ちなんか、あるわけないだろ」「俺の女だ。手ぐらい、自分で
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