私はちょうど食べ終わって、箸を置いた。「会うことにしたの?」「うん、会うことにした」来依は私と一緒にテーブルを片付けながら言った。「この前は彼、あまりにも子どもっぽくてさ。私の言葉なんて全然聞いてくれなかったし、電話じゃちゃんと伝えられそうになくて……だったら直接会って、はっきり終わらせたほうがいいかなって思って」「うん、賛成。応援してるよ」「じゃあ、一緒に来てくれる?」「もちろん」私は笑って冗談を言った。「もし私がついていかなかったら、来依がどこかに売られちゃうかもしれないしね」待ち合わせの場所は、またあのプライベートクラブだった。来依は迷いなく私を案内して中に入り、個室の前で立ち止まった。私は少し考えて言った。「中に入って。私がいると、話しづらいこともあるでしょ。何かあったらすぐ電話して。すぐに駆けつけるから」「うん、ありがとう」来依はうなずき、ドアを開けて中へ入っていった。私はその場に立ち、果物や料理を運ぶスタッフたちの姿を見ながら、ここにいるのも気まずいなと思い、近くのスカイガーデンへと足を運んだ。冬の訪れとともに、鹿児島の夜は湿って冷たくなっていた。だけど、このクラブはさすがというか、スカイガーデンの造り込みはとても豪華だった。人工の滝からは水がささやくように流れ、珍しい植物もあちこちに植えられていて、まるでこの一角だけ春が来たようだった。築山の近くまで来たとき、不意にどこかで聞き覚えのある声が、水音にかき消されるようにして聞こえてきた。私は思わずもう一歩近づいた。「藤原星華の件……お前の仕業だろう?」冷たい声音だった。宏の声だ。私は少し驚いた。彼は誰に向かって言っているのだろう?藤原星華の件って……彼女が宏と結婚したがっていたって話のこと?すぐに、もう一人の声が答えをくれた。涼やかで澄んだ声だった。「言葉だけでは証拠にならないよ、宏」「やっぱりお前か」宏は鼻で笑った。「南枝がバカだから、お前にうまく騙されてるんだ。山田、彼女から離れろ。あいつは素直すぎて、お前には太刀打ちできない」「その心配はいらないよ」山田先輩は冷ややかに笑いながらも、静かに言った。「俺は彼女に対して、ずっと真剣だよ。あんたみたいに、何度も彼女を傷つけたりはし
Read more