清子は正規にデザインを学び、これまでに六年に及ぶ実務経験も積んできた。一次選考を通過するのは、特に難しいことではなかった。それでも、江川グループ人事部から電話がかかってきたとき、彼女は思わず胸を撫で下ろした。「かしこまりました。必ず、二次面接に伺います」電話を切ったあとも、しばらく余韻のように安堵が残っていた。本当は、江川に履歴書を送ること自体、迷っていた。けれど、待遇は業界トップクラス。しかも、今の自分にこれほど条件の合うポストは、そう簡単に見つからない。――何より、今の彼女にはお金が必要だった。宏がすでに山名に頼んで、母の転院や手術、入院費まで手配してくれている。それでも、心臓病は退院して終わりではない。長い療養期間が必要で、これから先も出費は続く。どこを切り詰めても、結局は金がかかる。だからこそ、彼女は賭けるしかなかった。江川のトップである宏が、この程度のポジションにまで口を出すことはない――と。「……清子」電話を終えて病室に戻ると、目を覚ましたばかりの母が、申し訳なさそうに彼女を見つめた。「……全部、お母さんのせいね。あなたに、こんな苦労させて……」「お母さん、何言ってるの?」清子は胸がきゅっと締めつけられ、視線を落として瞬きを繰り返した。「私を育てるの、大変だったでしょ。でも、お母さんは一度でも、私のこと重荷だって思った?なのに、どうして今さら、そんなこと言うの……」母は彼女の手を握り、何度も言い淀んでから、ようやく口を開いた。「……ねえ、正直に言って。この手術代……どこから出たの?どうして、急にそんな大金が……」「お母さん!」清子は、母の言外の不安を察して、慌てて顔を上げた。「心配しないで、私は決して後ろめたいことなんてしていない。ただ……ありがたいことに、力になってくれる恩人と出会っただけよ。」ある意味で言えば、宏は確かに彼女にとって恩人だった。そうでなければ、今ここで胸を張って否定することすらできなかった。「……本当?」「本当だよ」清子は強くうなずき、苦笑した。「もう、何考えてるのよ……」「……それなら、よかった」母はようやく安堵したように息をついた。「じゃあ……その人って、どんな人なの?」「その人は……」清
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