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943 Chapters

第941話

早織はすすり泣くのをやめ、悔しそうに言った。「あなた、このお嬢さんと友達なんでしょ?どうせ彼女の肩を持つに決まってる」その時、隼人が口を開いた。「お前の言ったこと、俺もちゃんと聞いてたよ。このレストランの監視カメラ、性能が良くて音声もバッチリ拾えるらしい。確認してみるか?」その言葉に、早織の顔色が一瞬で真っ白になった。「あなたたち……あなたたち、ひどすぎる!」早織は突然ぼろぼろと涙をこぼし、大声を上げながら振り返って走り出した。顔をぬぐいながら、まるで自分がとんでもない目にあったかのような様子だった。有美は軽蔑の表情を浮かべながら言った。「自分でぶつかってシャンパンぶっかけたくせに、泣いてるふりって……最低」聡は冷たい視線で早織の背中をじっと見送り、それから星野に目を向けて訊いた。「君たち、どうやら深い関係みたいだね。彼女への賠償、君も一緒に負担するつもり?」星野は暗い瞳で聡を見つめた後、静かにうなずいた。「はい」聡は口元にわずかに笑みを浮かべたが、目はさらに冷たさを増していた。そのとき、星野が突然彼女に近づき、耳元で何かを低い声でささやいた。それを見た有美がすぐに星野を押しのけた。「ちょっと、なにしてんの?言いたいことがあるなら普通に言いなよ。そんなに近づいて……殴られたいの?」隼人も冷たい目つきで星野を見つめ、自然な動作で聡を後ろにかばった。けれど、星野は二人の反応には無関心で、ただじっと聡だけを見つめ、彼女の返事を待っていた。聡はさらに口元の笑みを深めながらも、鋭く言い放った。「自分にそんな資格があると思ってるの?」そう言って彼女は星野を無視し、そのまま客室の方へと歩き出した。星野の表情がじわじわと崩れていき、瞳には何かが壊れたような深い悲しみが広がっていた。自分には資格がない。つまり、聡は最初から自分を好きじゃなかった。最初から最後まで、彼女はただ「楽しんでいただけ」だったんだ。星野はうつむき加減で、その場に立ち尽くした。有美が冷たい声で言った。「聡ちゃん、逃げたよ?追わなくていいの?」そう言い残して、有美は隼人の腕を引き、聡の後を追っていった。「聡ちゃん、大丈夫?」追いついた有美が心配そうに声をかけた。「平気。ちょっと着替えてくるね」
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第942話

【あの子は僕の彼女じゃありません】星野からのメッセージをちらっと見ただけで、聡はすぐにスマホの電源を切り、着替えを始めた。あの子が彼女じゃないって言うけど、じゃあなんであんなことしたの?わざわざ人前でかばって、こっちはモヤモヤさせといて、後からそんな説明されたって納得できるわけないよ。彼女じゃないなら、なんであそこまで庇うの?謝罪までして、どんな立場でそんなこと言えるのよ。苛立ちをぶつけるように、聡は瓶の酒を開けて、一気に流し込んだ。何も食べてない胃にアルコールが染みて、じわじわと鈍い痛みが広がった。ソファに腰を下ろし、ぼんやりと前を見つめた。思えば、星野と出会う前はもっと自由だった。行きたいところに行って、やりたいことをして、気分が悪ければ仲間と好き放題言い合って、たまには調子に乗って上司の雅之をからかったり。あとは任務を待って、それをこなすだけの、気楽な日々。でも今は……まるで自分じゃないみたい。道に迷ってるみたいに。恋って、こんなふうに人を変えるものなのかな。「コンコン」突然、ドアをノックする音がした。「誰?」怪訝そうにドアを開けると、隼人の姿が目に入った。後ろには食事のカートを押しているルームサービスのスタッフが立っている。「ほとんど食べてないみたいだったから、少し持ってきたよ。何か食べてから休んだ方がいい」隼人はやわらかい目で聡を見つめた。そのまなざしは、まるで春の日差しみたいに温かかった。「あなたも食べてないんじゃないの?」そう聡が聞くと、「俺は大丈夫。そんなにお腹空いてないから」と隼人は答えた。「一緒に食べよう」聡はさっと道をあけ、カートを中へ通す。隼人は一瞬だけ眉を上げたが、聡にまったく遠慮の様子がないので、そのまま素直に部屋へ入り、ドアを閉めた。その様子を遠くから見ていた星野は、拳をぎゅっと握りしめていた。部屋の中、スタッフが料理をテーブルに並べて退出すると、隼人は酒瓶に気づいた。「今から飲むの?体に悪いよ」「飲みたい気分だったの。あなたもどう?」聡は笑みを浮かべながら、もう一つのグラスを取り出した。その作り笑いに、隼人はふと本心を知りたくなって、うなずいた。「うん、もらうよ」二人は向かい合ってグラスを手にした。聡はグラスを掲げながら言った。「持
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第943話

聡は隼人の瞳をじっと見つめた。そのまなざしは誠実で優しくて、どこにも嘘の気配なんてなかった。「将来あなたに愛される人は、きっと幸せになれるわね」微笑みながら、聡はそう言った。隼人も口元に笑みを浮かべ、グラスを合わせながら言った。「それって、当たり前のことだと思う。誰だって個性があって、自由であるべきだし、愛って本来、相手を縛るものじゃない。もっと、お互いを高め合えるものだと思うんだ。傷つけ合って、終わりのない喧嘩を繰り返すようなものじゃないよ」「名言だね、それ!」聡は手を叩きながら、また一杯を一気に飲み干した。隼人は眉を寄せて、少し遠慮がちに尋ねた。「さっきの男の人……知り合いだよね?」「うん」うなずく聡の頬は、酒のせいでほんのり赤く染まっていた。「前はうちのスタジオのデザイナーで、今はパートナーなの。最初はね、計算づくの出会いだったの。全部終われば関係も終わるって思ってた。でも、気づいたら、本気になってた」素直に話すその様子は、聡が少しだけ心を開いた証拠だった。でも隼人はわかっていた。自分が彼女にとって、ただの「話し相手」だからこそ、こんなふうに話せるんだって。本当に大切な相手のことなら、過去のことなんて軽々しく口に出せるわけがない。「最初から純粋じゃなかったから、好きだって気づいた時には、もう全部が汚く見えてたの」聡は自嘲気味に笑った。「それは違うよ」隼人ははっきりとした口調で言った。「最初にきっかけや打算があったとしても、感情そのものは本物だよ。過去のやり方を反省することはあっても、そのときの気持ちまで否定する必要なんてない」「……へえ」意外な答えに、聡は少し驚いたように目を見開いた。「じゃあ、そんな関係でも……続ける意味ってあると思う?」隼人は少し考え込んでから、ゆっくりと答えた。「それは、自分がどうしたいか次第じゃない?続けたいと思うなら、ちゃんと向き合って、全部話した上で、一緒にどうしていくか考えるべきだと思う」「恋愛未経験のくせに、ずいぶん達観してるじゃない」半目でじっと見つめながら、聡はからかうように言った。「本当に未経験なんだ。でも、答えなら目の前にある。うちの両親が、ちゃんとお手本を見せてくれてたから。俺も有美も悩む必要なんてなかった。あの二人
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