All Chapters of 奥様が去った後、妊娠報告書を見つけた葉野社長は泣き狂った: Chapter 151 - Chapter 160

州平の言葉に、清は一瞬ぽかんとしてしまった。……違うのか？玲奈は妊娠していて、しかもその夜の相手。だったら、子どもは当然、州平のものではないのか？「行くぞ」州平が突然言った。「え？あ、はい」清は急いで車を発進させようとした。だが州平は眉をひそめて言った。「車を降りると言ったんだ」「えっ……でも社長、今夜は会食があるはずでは？皆さんもう集まってますし、それにここは人が多すぎます！」清は周囲の市民の数を見て焦った。こんな混雑の中、州平が現れるのはまずい。温井秘書が来るならともかく、州平がこういう場所に来るのは珍しい。警備員もいないし、普段の生活スタイルからして、絶対にこんな場

清は冷や汗をかいていた。ここで離れるなんてあり得ない。彼にとって州平は上司なのだ。州平の機嫌が悪くなっているのを見て、すかさず言った。「葉野社長、怒らないでください。温井秘書、まだ遊びたいみたいですし、みんなで一緒にどうですか？」州平は不機嫌に答えた。「誰があんな女と一緒に行くか」その言葉を聞いて、海咲も無理に引き留めようとはしなかった。「前にまだいろいろ楽しそうなのがあったし、そっち行ってみよう」そう健太に言った。「うん」健太は頷きながら州平に視線を向け、軽く言った。「葉野社長、それじゃ、失礼します」二人はそのまま前へ進んで行った。州平は二人の背中を見つめ、顔色がさ

消毒液で傷口を洗ってから、ようやく包帯を巻き終えた。しばらくすると、清が車を道路脇に停めた。海咲は州平を支えて車に乗せた。その時、彼女はちらりと健太を見た。その一瞬を、州平も見逃さなかった。彼女が健太のことを気にしている――そう感じた。先に口を開いたのは健太だった。穏やかな口調で言った。「先に帰っていいよ。葉野社長、ケガしてるし、そばに誰かいた方がいいだろうし」彼は海咲に気を使い、彼女がやるべきことを分かっているかのようだった。州平は彼女の上司なのだから、当然、表も立てねばならない。海咲は彼に手を振った。「じゃあ、先に帰るね。今日は連れてきてくれてありがとう」「どういたしまし

州平が黙っているのを見て、晏は立ち上がり、彼の隣にやって来た。「お前の嫁さんって、確かにおじいさんが選んだんだったな。でも、あの子は悪くないじゃないか。素直で、気が利いて、お前が外で何人女を抱えてようが文句ひとつ言わない。それのどこが不満なんだ？」州平はしばらく沈黙してから言った。「従順で、賢くて、素直。妻としては悪くない選択だった」「おやおや、これは大変だ。今のお前、彼女に集中しすぎてないか？まさか好きになってるんじゃないのか？」晏は州平の様子を見て、違和感を覚えた。ただ人を振り回すだけなら、ここまで不機嫌にはならないはずだ。しかし彼はずっと下を見ている――笑顔で男の同僚たちと

その言葉を聞いて、玲奈は大きく目を見開き、思わず数歩後ずさった。「……あなた、今なんて言ったんですか？温井海咲が葉野州平の妻？」まるで現実を受け入れられないように、彼女は頭を振った。そんなはずがない。もしそれが本当なら、どうして今まで知らなかった？どうして公にされていない？「そうですよ。だから、まず手を離してくれませんか？」素は手を引き抜き、淡々と言った。「葉野州平は、私のお義兄さんなんですから」玲奈は彼女たちを見つめたまま、なおも疑いの眼差しを向けた。「……嘘でしょ。だって温井海咲って、葉野州平の秘書じゃなかった？どうやって妻になるのですか」「信じられないことなんてないわ