柴田夏彦は海外から戻ってきたばかりで、病院に来てまだ日が浅い。しかし、普段は同僚に対しても、患者さんに対しても、紳士的で、話し方もとても優しい。これまで一度も意地悪な面を見せたことはなかった。誰が、裏ではあんな一面があるなんて想像できただろうか。かと言って、柴田夏彦が霜村涼平に対抗するために手段を用いたことが、どれほど重大かというわけではない。しかし、まずその手段が本当に正々堂々としていない。次に、霜村冷司が問題を一つ一つ解決しようとした時、柴田夏彦は逃避的だった。はっきり言えば、少しばかり、やることはやっても責任は取りたがらないところがあるのだ。だからこそ、口八丁手八丁で言い訳を探し、霜村冷司を説得しようとしたのだろう。最後に、彼が見つけた言い訳は、白石沙耶香だった。二度も白石沙耶香を盾にしたのだ。これは、彼氏として責任を取らないだけでなく、女性を盾にし、さらに霜村冷司が白石沙耶香の顔を立てて、彼を見逃してくれることを期待しているということだ。しかし、白石沙耶香の顔を立ててくれたのは、誰のおかげなのか?それは和泉夕子なのだ。もし和泉夕子がいなければ、霜村家の人間に手を出して、霜村冷司がただ謝罪させるだけで済ませるわけがない。それなのに、柴田夏彦は話をすり替え、桐生志越のことを持ち出した上に、桐生志越は実はあまり関係なかったとまで言った。しかし、過去のこの件に当事者は、和泉夕子なのだ。柴田夏彦は、このように言うことが和泉夕子をも巻き添えにすることを考えなかったのだろうか?杏奈が思いついた問題点は、白石沙耶香も思い当たっていた。心の中は罪悪感と気まずさでいっぱいだった。「夕子、ごめんなさい。夏彦が志越を使って霜村さんを皮肉るなんて思わなかったわ。こんなことになるって分かっていたら、あの時彼を連れて志越に会いに行くべきじゃなかった」彼女は元々、桐生志越が重度のうつ病を患っていることを知っていたので、柴田夏彦を連れて彼に会いに行ったのだ。それは、自分もかつて結婚に失敗しながら、もう一度立ち直ろうとしている姿を見せることで、桐生志越にも乗り越えられると思ってほしかったから。桐生志越が彼女が新たな人生を歩み始めた姿を見れば、彼も努力して和泉夕子を諦め、そしてうつ病からゆっくりと抜け出すだろうと。同時に、桐生志越に柴田夏彦という義兄を認めてもらいたかった
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