大野皐月はしばらく呆然とした後、ゆっくりと視線を落とし、和泉夕子の腰に回した自分の腕を見つめていた......これが、好きってことなのか?大野佑欣は彼に、好きな人を見ると胸が高鳴り、会えると嬉しくて、会えないと辛くなる、と。そして、独占したくて、誰にも触れさせたくない気持ちになるのだと教えてくれた。まさに彼が和泉夕子に抱いている感情が、そうだった。しかし......初めて好きになった人が、よりによって和泉夕子だなんて。かつて自分が軽蔑していた女で、しかも霜村冷司が大切にしている女。彼はそれを受け入れることができず、一歩後ずさりすると、踵を返して歩き出した。「そういえば、ちょっと用事を思い出した。また今度誘うよ」彼が早々に立ち去ろうとしたその時、背後で霜村冷司の冷たい声が響いた。「大野さん、今夜の夕食、どんなことがあろうと食べていって」大野皐月は振り返り、気品ある男を見据えた。「なぜだ?」霜村冷司はその問いには答えず、新井に尋ねた。「準備はできたか?」新井は頷いた。「はい、夕食の準備が整いました」霜村冷司は口角を上げ微笑み、「大野さん、どうぞ」と言った。大野皐月は、逃げ場のない罠に、自ら足を踏み入れたような気がした。ドアの外に立つボディガードを横目に見ながら、覚悟を決め霜村冷司に続いてダイニングルームに入った。和泉夕子は既にダイニングテーブルで待っていて、二人が目に入るとすぐに食事を勧めた。霜村冷司は当たり前のように和泉夕子の隣に行き、彼女の髪に手を伸ばし優しく撫でた。その親密な仕草は、好きという感情に気づいたばかりの大野皐月の心に、わずかな苦味をもたらした。彼はその苦さをこらえ、二人の向かいに座った。ちょうどナイフとフォークを手に取ると、和泉夕子がスープを一杯よそって、霜村冷司の手元に置くのが見えた。それから、客人をもてなす態度に切り替え、彼に「どうぞ、ごゆっくり」と告げた。しかし今の大野皐月に、食事を堪能する余裕などあるはずもなく、何も喉を通らなかった。しかし霜村冷司の食欲は、非常に旺盛だった。「夕子、食べさせてくれ」先ほどまでのはただの様子見にすぎず、この一言で、本題が始まった。大野皐月は霜村冷司の意図が読めず、わざとやっているようにしか思えなかった。しかし、和泉夕子がスプー
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