哲郎が華恋の部屋を出たとたん、その顔色は一瞬で暗く沈んだ。やはり、全ては以前と同じだった。華恋の心の奥底には、彼への拒絶が確かに存在している。さもなければ、すでに時也の記憶を失っている今、彼のプロポーズを喜んで受け入れているはずだった。賀茂時也!その名前を思い出すだけで、哲郎の拳は強く握られた。華恋はもう彼のことを忘れているはずなのに......拳を振り上げて壁に叩きつけようとしたそのとき、彼の目に入ったのは、屋敷の下に停まっている一台の車だった。賀茂家には数えきれないほどの高級車がある。彼は全てを把握しているわけではないが、あの車だけは見覚えがなかった。唇をつり上げ、哲郎はゆっくりと階段を下りてから、その車へ向かった。近づいてみると、やはり中に座っていたのは時也だった。「おじさん!」彼は得意げに車の窓をノックした。車の窓がすぐに下がり、疲れ切った時也の顔が現れた。目の下の暗いクマが、何日もろくに眠っていないことを物語っていた。これほど落ちぶれた彼を見るのは初めてだった。その姿に、哲郎の胸には奇妙な罪悪感がわき上がった。まるで、自分が誰かの大切なものを奪ってしまったかのようだった。時也は冷たい目で彼を一瞥すると、無言で手に持った酒を喉に流し込んだ。酒が、喉仏を伝って滑り落ちていく。哲郎はその様子を見ながら、口を開いた。「おじさん、そんなに落ち込まないでくれ。結局、今の状況は、本来あるべき姿に戻っただけだ。華恋は、もともと俺の婚約者だったし――」だが言葉を終える前に、彼のネクタイは突然、時也に掴まれた。あまりに強い力で、哲郎の身体は勢いよく時也の前へと引き寄せられた。男の人の、キリッとした冷たい横顔が目の前にあり、彼は思わず息を止めた。「おじさん......」「哲郎」時也の声は低く、目はまるで死を告げるように鋭かった。「よく聞け。華恋をお前のところに置くのは、一時的なことだ。いつか必ず、華恋はすべてを思い出す。そして、お前の祖父の死を乗り越えたとき、また俺たちは一緒になる」哲郎は一息ついて、皮肉っぽく笑った。「自信あるね。もし彼女が一生思い出せなかったら?それじゃ一生、俺のそばに――」哲郎の言葉がまだ終わらないうちに、突然首を締めつけ
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