それを聞いて、健司も弥生の言いたいことをようやく理解した。「霧島さん......この国に来るのは、今回が初めてですか?」弥生は少し考えてから、首を横に振った。「厳密に言えば、初めてじゃない。ただ、そのときは一人で来て、二日しか滞在しなかったけど」そのときはホテルに滞在していた。だから、弘次と会うための例の場所のようなところなんてない。今回ですら彼と過ごしたのはあの別荘だけだった。あの時は本当につらかった。弥生の話を聞いて、健司も思わず沈黙した。「......まさか、例の場所って、この都市や国のことじゃないんですか?」最初、弥生もそう思っていた。でも、弘次の性格からして、それはなさそうだった。もし彼女が本当に間違った場所に来ていたなら、あの電話の最中に訂正したはずだ。彼が会いたがっていて、彼女のフライト情報まで把握しているのだから。「多分、違うと思うわ。他に場所がないなら、そこに行くしかない」やはりあの別荘しかないのだ。健司の表情には、どこか諦めの色が滲んでいた。今のところ、それ以外の手がかりは存在しない。「......それじゃ、霧島さん。今日はまず休まれて、明日行くのはいかがでしょうか?」健司の提案は、自分の焦りを押し殺した結果だった。本当はすぐにでも動きたい。でも、無理を言える立場ではない。弥生はあくまで普通の人間だ。そして、自分たちはいまだに社長の居場所すら掴めていない。社長が、どうしてこんなふうに弘次にやられたのか?健司の胸の内は、もどかしさでいっぱいだった。「......今すぐ向かうわ」ふいにかかった声が、健司の思考を現実に引き戻した。弥生の視線が、静かに彼を見つめていた。彼は一瞬きょとんとしたが、すぐに我に返った。「で、でも......こちらの手配は......」弥生は深くため息をついた。「彼が私の動きを把握しているということは、私の行動パターンも同行者も、全部お見通しということよ」その言葉はつまり、誰も連れていかない、という意思表示だった。「でも、それじゃ......霧島さん、もし何かあったら、社長が戻ってきたとき、僕は......どう説明すれば......」この数日、弥生はずっと不安と恐怖に晒され、精神的にも限界に近かった。そ
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