女囚のひとりが侑子の脚を容赦なく蹴りつける。「とっととトイレ行って掃除しな!さもないと、容赦しないわよ!」この房には―わざと選ばれたかのように、安奈も侑子も押し込まれていた。ここにいる女たちは全員、筋金入りの凶暴者。新入りが入ってきたら、徹底的にいたぶるのがルールだった。侑子は唾を飲み込みながら、おそるおそる立ち上がる。「......ど、どうすれば......」腕が脚に勝てるわけもなく、反抗なんてできない。いまはただ、従うしかなかった。―なんとかして、ここから出ないと。この子がいる。お腹の中のこの子が、唯一の命綱。それに、彼女の背後にはまだ一人、あの男がいる。名前はまだ口にしていない。だが、もしものときの切り札になる。彼女の中にはまだ、二つのカードが残されていた。「ふふっ、あははははっ」安奈が薄ら笑いを浮かべながら、トイレを指差す。「早く行きなよ、侑子姉。今さら藤沢家の奥様ごっこなんて通用しないわよ」突然―姉貴が安奈の髪を掴んで、床にドンと叩きつけた。「ぼさっとしてんじゃないよ、さっさと新入りに教えてやりな。私がいちいちお前に指示出さなきゃ動けないのか?使えねぇクズが」そう吐き捨てたあと、姉貴は安奈の顔に唾を吐いた。ぺっ、と音を立てて唾が安奈の頬を汚す。安奈はそれを拭こうともせず、地面にひれ伏すようにしてへらへら笑った。「は、はい......すぐやります、姉貴」這うように立ち上がり、今度は侑子へ向き直る。「ほら、こっち来な」怒りと憎しみを込めた目でにらみつけながら、侑子の背を押し、ゴム手袋を無理やりはめさせる。「これ持て!こすれ!力いっぱいな!」言葉だけでなく、その態度もまるで犬をしつけるかのようだった。その様子を、ほかの女囚人たちは実に楽しげに眺めていた。得意げな笑みを浮かべながら。姉貴はというと、ベッドに寄りかかって、ゆっくりとスイカの種を吐き出していた。ここでは、誰もが姉貴に頭が上がらない。女囚たちの間では、姉貴こそが「女王」だった。安奈も、ここに入ったばかりの頃はずいぶん口が悪くて、傲慢だった。でも今や―完全にしつけられていた。姉貴とその取り巻き数人に、徹底的に叩きのめされたのだ。便器に頭を突っ込まれ、頭
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