Lahat ng Kabanata ng 夫の元カノが帰国!妊娠隠して離婚を決意した私: Kabanata 1441 - Kabanata 1450

1463 Kabanata

第1441話

深夜。また悪夢から目覚めた。だけど今夜は叫ぶことなく、突然ぱちっと目を開け、息を荒くしていた。修はすぐにベッドのそばに駆け寄った。「若子、また悪い夢を見たのか?」ここ何日か、悪夢は見ていなかったはずなのに。若子は電気をつけて、ベッド脇にいる修を見つけて驚いた。「修、なんで自分の部屋に戻らないの?」「お前が心配で......若子、ただそばにいたいだけなんだ。やっぱりまた悪夢を?」「修、私......」「どうした?若子、何か話したいことがあるのか?」若子は首を振った。「同じことを何度言っても仕方ないし......ただ......」「修」若子は彼の手をぎゅっと握った。「絶対に自分の身を守って、もっとたくさんボディーガードを雇って」「分かった、約束する。絶対に自分を守るし、子どもも守る。もう二度とお前を傷つけたりしない」そう言って、修は若子を抱きしめた。「そうだ、若子、ひとつ伝えたいことがある。侑子と安奈、それから雅子の三人、みんな死んだ。刑務所で感染症が広がって、みんな急死した。三人同じ房にいたから、うつし合ったらしい。遠藤高峯も牢屋で自殺した」若子はその言葉にハッとして顔を上げた。「今なんて言ったの?」修は優しく彼女の顔を両手で包んだ。「もう、全部の脅威は消えた。もう誰も俺たちを傷つけないよ」「本当に、感染症と自殺なの?」若子は信じきれなかった。四人が同時に死ぬなんて、あまりにも出来すぎている。修は優しく微笑み、彼女の頬を撫でた。「うん、間違いないよ。感染症と自殺さ」若子は、修の言葉を本気で信じていいのか分からなかった。でも、もしそれが嘘だとしても、修が自分を守るために何かをしたのだとしたら―自分のせいでまた彼を巻き込んでしまったと、心が痛んだ。「修、信じてるよ」死因は感染症と自殺―そう信じるしかなかった。修は小さく「うん」とうなずき、「だからもう、何も心配いらないよ。誰も俺たちを傷つけたりしない」と言った。若子はそっと手を伸ばし、修の頬をなでた。「修、いろんなことをしてくれて、本当にありがとう」彼の手を取って、自分のお腹にあてた。「赤ちゃんも、あなたに感謝してるよ。もしあなたがいなかったら、この子はきっと無事じゃいられなかった」もし自分がまだ西也の手に囚われてい
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第1442話

数日後―修は若子と暁を連れて、みんなでキャンプに出かけた。静かな場所を選び、周囲はボディーガードがしっかり見張っている。ここは本当に景色が素晴らしい。遠くにはいくつも重なる山並み、周囲には緑の植物が一面に広がり、少し先には澄んだ小川が流れている。どこを見ても清らかで自然な風景ばかり。「修、まずはテントを建てよう」今夜はここでキャンプをする予定。夜には満天の星が見える最高の場所だ。「分かった。じゃあ人を呼んで組み立ててもらうよ」「修」若子が前に出て言う。「私も一緒にテント張りたい。ボディーガードは呼ばなくていいよ」「でも、けっこう大変だよ。俺がやるから、お前は向こうで座ってて」「大丈夫、できるよ。ふたりでテント張ろう」若子はもう一度そう言った。修はうなずいた。「じゃあ、一緒にやろう」修はしゃがんでバッグからテントを取り出し、ふたりで組み立てを始めた。青い空にはうっすらと白い雲がかかり、静かな草原にはやわらかな風が吹いて、草の葉がサラサラと音を立てていた。修と若子は草の上にテントを広げ、布をきれいに伸ばす。若子はテントポールを持ち、指定された場所に差し込んでいく。慣れない手つきだけど、一生懸命だった。微笑みながら修と目を合わせる。その光景はふたりにとって、かけがえのない思い出になった。修は細かいところにまで気を配り、細いポールの角度や位置を慎重に調整する。手際よくバックルやファスナーを留め、確実に仕上げていく。暁は少し離れた草地で楽しそうに遊んでいた。手には風船を持ち、明るい笑顔で風を追いかけている。まるでこのキャンプの主人公みたいだった。子どもの笑い声が、この美しい空と緑の世界に響き渡り、キャンプのひとときをいっそう温かく、楽しいものにしていた。テントの設営が終わり、布団や枕もすべて準備が整った。修と若子はテントの中に座り、外で草に座る暁を見ていた。暁は手で小さな草を撫でながら、太陽みたいに明るい笑顔を浮かべていた。ふたりとも、子どもが草の上で転がることを少しも気にしていなかった。むしろ、それが自然とのふれあいであり、過度に守るよりよほど大事だと思っていた。「若子、ここ好き?」若子は青空を見上げて、微笑みながら返す。「あなたは?ここ、気に入った?」修は「うん、すごく気に入った」と答
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第1443話

「うん」修はうなずいた。「暁の名前は俺がつけるよ。でも大事なことだから、じっくり考えさせて」若子がそう望むのなら、修は喜んで応えたいと思っていた。若子は微笑みながら言う。「わかった、いい名前が決まったら教えてね」「もちろん、一番に伝えるよ」修は手を伸ばして、若子の髪をそっと撫でた。そのとき、暁がよたよたと二人の方へ駆け寄ってきて、若子の胸に勢いよく飛び込んだ。ちょっと乱暴だったけど、若子はしっかりと抱きとめた。それを見て、修はあわてて暁を若子の腕から抱き上げた。少し真剣な顔で、暁に言う。「暁、ママは今、お腹に赤ちゃんがいるんだ。だから体当たりしたらダメだよ。ママがケガしちゃうから」暁は大きな瞳で修を見上げ、しょんぼりと若子を見つめる。自分が悪いことをしたと気づいて、とても申し訳なさそうだった。「大丈夫、ママは何も痛くないよ」若子はすぐに慰めて言う。「こっちおいで、ママにもう一度抱っこさせて」そう言って、また暁をしっかりと抱きしめた。修はこの幸せな時間がずっと続けばいいのにと思った。腕時計で時間を確かめてから言う。「若子、ランチの用意しようか。たくさん美味しいもの持ってきたんだ」「うん」......修がレジャーシートを広げて、果物やランチをすべて並べ終わると、若子は暁を抱っこしてそばへやってきて、三人で地面に座った。暁はもう一歳半で、歯も生えて、少しなら食事もできるようになっていた。修は暁用の細かく刻んだ食べ物も用意してあったので、暁は上手に少しだけ食べて満足した。そのうち、花の咲く草むらで蝶々を見つけて、追いかけ始めた。修が呼び戻そうとしたとき、若子が手を握って止めた。「子どもは少しぐらい遊ばせておこうよ、大丈夫」修はうなずき、近くのボディーガードに目で合図して暁を見守るように頼んだ。「若子、もっと食べて。今はお腹に赤ちゃんもいるから、二人分食べなきゃ」修は彼女のために料理を取り分けてあげた。「修、今度千景のお墓をちゃんと作ろう」若子はずっと、あの数片の骨をベッドのそばに置いたまま、まだ埋める決心ができずにいた。でも、いつまでも自分だけが持っていてはいけないと、わかっていた。若子はうつむいて、箸でごはんをかき混ぜながらそう言った。口調にはあまり感情を込
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第1444話

夕日がだんだん沈み、オレンジ色の残光がテントや草原いっぱいに広がっていく。三人はたき火のそばに輪になって座り、キャンプならではの楽しい時間を過ごしていた。自然の美しさと静けさを、家族みんなで分かち合うひとときだった。若子と修は朝からここに来て、暗くなるまでずっと一緒にいた。ふたりでおしゃべりをしたり、周りを散歩したり。誰もスマホを手にすることなく、気づけば夜になっていた。たき火の前で三人は焼き肉を味わった。食べ終わるころには火も小さくなり、夜空は一面の暗闇。若子は草の上に敷いたシートの上に寝そべり、空を見上げていた。たくさんの星がきらきらと光って、まるで空いっぱいにダイヤモンドが散りばめられているみたいだった。静かな夜の中、ときおり消えかけたたき火からパチパチという音が聞こえる。その音は夜の美しさを壊すことなく、むしろ心地よく感じられた。若子は親指と人差し指で輪っかを作って目に当て、その小さな円から空をのぞいてみた。すると、二つの星が寄り添って輝いているのが見えた。特別に明るく感じた。修は若子の隣に座り、彼女が見ている方角を一緒に見上げる。「今夜の星空、きれいだな」「修、人って死んだら星になるって、ほんとかな?」若子は静かにそう言いながら、まばたきもせずに二つの星を見つめていた。修は隣に寝転がり、若子の手をそっと握る。「うん、本当だよ」彼は、若子がまた千景のことを考えているのだとすぐにわかった。「きっと、おばあさんも私たちを見守ってくれてるよ」若子は空を指さして、「あの明るい星がおばあさん。その隣に輝いてるのが千景。ふたりとも、ずっと私たちを見てくれてるんだよ」修も同じ方向に目を向ける。夜空には無数の星があったが、その中で二つだけ、ひときわ明るく輝いている星があった。「そうだな」修が言う。「きっと、ふたりとも俺たちを見てる。たぶん、暇なときはふたりでおしゃべりして、俺のことをあれこれ言ってるかもしれないな」「そうかもね。きっと私のことも言われてるよ」若子は少し笑いながら、真剣なまなざしで空の星を見つめていた。本当に人が星になるのなら、もしおばあちゃんや千景があの空の上から自分たちを見ていてくれるなら、少しだけ心が安らぐ気がした。「修、覚えてる?昔、私が中三のとき、数学が全然ダメでさ。期末テス
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第1445話

「そうそう、お前はバカじゃない。ただの阿呆だね」修はそう言うけれど、本気で若子をバカだなんて思っていなかった。ただ、冗談っぽくからかっているだけだった。若子もそれが分かっているから、怒ることなく、体の向きを変えて横になり、修の方を見つめる。「修、私たち子どものころ本当に仲良しだったよね。あなたはいつも私のこと大事にしてくれたし、私は小さいころからあなたのことが好きだった。あなたと結婚できて、すごく嬉しかったんだ」「俺もだよ。若子と一緒になれて、すごく幸せだった。でも、本当に俺がバカだった。若子、おバカさんはお前じゃなくて、俺のほうさ」もし俺がもっと賢ければ、こんな風にはならなかった。恋愛に関して、修は自分がまるで子どものように何もわかっていなかったと思った。どんなに頭が良くても、人は時に大切なことに気づけない。たくさん遠回りして、やっと大事なことがわかるものだ。特に恋愛は、自分の立場にいると、なおさら間違いを犯しやすい。「でも、今も私たちは家族だよ。新しい命も一緒に育ててる。ふたりの絆は、絶対に切れない」若子はそう言いながら、優しく修の頬を撫でる。「修、辛いこともたくさんあったけど、私にとってあなたは、ずっと特別な人だよ」夫婦だったふたり。かつては愛し合っていたけど、今は恋人じゃなくなっても、仇になるわけじゃない。若子と修は、そういう関係になった。愛した記憶が消えたわけじゃないし、たくさん傷つけ合っても、今は家族であり、友だちでもある、決して敵同士なんかじゃない。修もまた、若子の顔にそっと手を伸ばし、しばらく見つめたあと、そっとおでこにキスをした。それから、静かに唇にもキスを落とす。若子の目には、少し涙がにじんでいた。彼女は修を拒むことなく、そのまま彼の腕の中に身を寄せて抱きしめた。「修、ありがとう。本当は、こういう感謝の言葉って、あなたは好きじゃないって分かってる。でも、それでもやっぱり伝えたいの」修の温もりを感じながら、若子はとても安心した。でも、その奥底には、小さな不安もあった。修は若子の後頭部を優しく撫でながら、「どういたしまして」と言った。若子は彼の胸に顔をうずめたまま、「修、ちょっと眠くなってきた。テントに入ろうか」とつぶやいた。「うん。シャワー浴びてくる?お風呂場は
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第1446話

あのキャンプのあと、修と若子の関係は、さらに深まったようだった。もう夫婦ではないけれど、まるで本当の家族のように、自然で親密な関係だった。修は、千景のためにとても良い墓地を探してあげた。千景はわずかな骨しか残っていなかったけれど、それでも、良い場所に眠らせてあげたいと思った。今回の埋葬はとても簡素だった。葬儀はせず、若子と修が千景の骨を持って墓地に来ただけだった。若子は小さな箱を大切そうに抱きしめ、なかなか手放せずにいた。修はそっと彼女の肩を抱いて、「若子、もう、土に帰してあげよう」と優しく声をかけた。若子は涙で霞んだ目で修を見上げた。彼女は箱を開けて、中の小さな骨に指でそっと触れながら、「千景、また会いに来るからね」と静かに言った。修は箱の中の骨を見て、少しだけ眉をひそめた。どうも数が合わない気がした。千景の骨は本来七つ残っているはずだったが、箱の中には六つしかなかった。けれど、修は何も言わず、若子の気持ちが落ち着くまで待ってから、そっと箱を閉じた。修は若子の肩を抱いたまま、ふたりで前に進み、若子が自分の手で箱を棺に納めた。その瞬間、若子の涙は止まらなくなった。「千景、さよなら」この瞬間になって、ようやく本当に千景を見送れた気がした。若子は声も出せずに泣き、修は後ろから彼女を抱き寄せ、そっと引き離した。スタッフが棺に土をかけはじめると、若子はそれを見つめながら、どんどん激しく泣き出した。「千景、千景!」千景のお墓ができた。墓石には「冴島千景之墓」と刻まれ、その下に「愛妻・松本若子建之」と小さく書かれていた。ふたりは正式に籍を入れたわけではないけれど、結婚式はしたし、若子の心の中では千景は夫だった。だから彼女は、自分で墓碑を立てた。千景が埋葬されたあと、若子は墓石の前にしばらく立ち尽くしていた。修は若子のお腹をさすりながら「赤ちゃんも休まないと。そろそろ帰ろう。空も曇ってきたし、また今度会いに来よう」と優しく声をかけた。若子は一歩前に進み、指でそっと墓石をなぞる。「千景、どこへ行っても、私はあなたと一緒だからね」......修が若子を家に連れて帰ると、若子はずっと黙ったまま部屋にこもった。修はそっとしておいた。今はひとりになりたいだろうと思ったからだ。
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第1447話

夜、若子は卓実と一緒にかくれんぼをして遊んでいた。子どもはママと遊ぶのが嬉しくて、ずっと笑いが絶えなかった。若子はわざと分かりやすい場所に隠れて、卓実は毎回すぐに見つけて、そのたびに若子の胸に飛び込んできた。「暁―あ、違った。これからは卓実だね」若子は子どもの顔を両手で包み込んで、優しく言った。「これからあなたは、卓実って呼ばれるんだよ。この名前はパパがつけてくれたんだ」新しい名前にはまだ慣れなくて、何度か若子が「卓実」と呼んでも、ピンとこない様子だった。「卓実、一緒に練習しよう。『卓実』って言ってごらん」「たくみ」ふたりで何度も新しい名前を練習して、少しずつ慣れていった。「うん、いい子だね。ママはこれからずっとあなたを卓実って呼ぶよ」「ママ!」卓実は嬉しそうに若子に抱きつく。ママがどんな名前で呼んでも、大好きなのだ。「さあ、卓実、そろそろ寝る時間だよ」若子は卓実をベッドに連れていき、子どもはおとなしくベビーベッドに横になって、ママの顔を見つめていた。若子は優しくあやしながら、子どもが少しずつ目を閉じて眠るのを待った。そっと布団をかけ、おでこにキスを落とす。「おやすみ、卓実」......卓実を寝かせた後、若子は部屋を出た。シャワーを浴びた後、ベッドに入ったが、なかなか眠れなかった。普段なら修がそばにいてくれる。でも今夜は邪魔したくなくて、無理やり自分の部屋で寝てもらったのだ。それでも、夜になると悪夢で泣きながら目を覚ますことがある。でも前ほど叫ぶことはなくなった。しばらく横になっていたが、どうしても眠れず、若子は起き上がって修の部屋に行くことにした。少し話をしたかった。修の部屋の前まで来ると、ドアが少し開いていて、中から話し声が聞こえてきた。「明日、家に帰って薬を取ってくる。用意しておいてくれ」若子はそのままドアを開けて中に入った。修は誰かが入ってきたのに気づき、振り返ると若子の姿を見つけた。すぐに電話を切り、「若子、どうした?まだ寝てないのか?」修は腰にバスタオルを巻いただけで、上半身は裸だった。若子が入ってきて、ちょっと慌ててそばのパジャマを羽織った。若子は修に近づき、不思議そうに尋ねる。「何の薬を取りに行くの?」「大したことないよ。最
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第1448話

修が何も言わなくても、若子にはすべて分かってしまった。「これ、私を助けに来てくれたときに負った傷なんでしょ?肩のこれは......銃で撃たれたんだよね?」修は黙ったまま、うなずいた。若子は強い後悔の気持ちで胸がいっぱいになった。彼が怪我していることに今まで全然気づかなかったし、家に帰ってきてからもずっと知らずにいた。どうりで最近、修の顔色が悪かったわけだ。ずっと寝不足なのかと思っていたけれど、実際は痛みに耐えていたのだ。けがをした体で、彼女のそばにいて、ちゃんと眠れずにずっと我慢してきた修。そのつらさを思うと、たまらない気持ちになった。若子は唇を噛みしめて、さらに問いつめる。「じゃあ、他の傷は?どうしてこんなに......ちゃんと話して。全部、正直に聞きたい」若子の指が修の胸の傷にそっと触れる。「若子、本当に大丈夫だよ、俺......」「修!」若子はきっぱりと彼の言葉を遮った。「言ってくれなきゃ、もう口きかないから」修はしばらく黙ってから、ぽつりと答える。「お前を助けに行く前、かなりハードな訓練を受けてたんだ。その時にできた傷がほとんど。全部たいしたことない、表面だけのケガだよ。心配しなくていい」それを聞いた瞬間、若子はもう我慢できなくなって、ぼろぼろと涙をこぼした。「なんで、もっと早く言ってくれなかったの......?」たった短い期間で、どれほど過酷な訓練と危険にさらされたのか、想像するだけで胸が締めつけられる。それでも、彼は黙って耐えていたのだ。「若子、泣かないで」修はあわてて若子を抱きしめる。「今はもう大丈夫だから、見てよ、俺は元気だし、訓練のおかげで体も前より強くなった。これでこれからは、もっとお前を守れるようになったんだ。だから心配しないで。むしろいい経験になったんだよ」修がそう言うのは、若子を安心させたかっただけだ。本当はどれだけつらかったか、命だって危なかったかもしれないのに。彼は自分の命を懸けてまで、若子を守った。それだけだった。「若子、本当は早く伝えるべきだった。ごめん。今度はちゃんと言うから。もう遅いし、お前の部屋まで一緒に行こうか?」「修、なんでこんなにバカなの?私、あんなに酷いことしたのに、それでもこんなにしてくれて......もう私のことなんて放
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第1449話

「若子、もちろん違うよ。俺はガンなんかじゃない」「じゃあ、何の薬か見せて」若子は修の手を振りほどき、薬の瓶を手に取った。その瓶は、どう見ても分包されたものだった。オレンジ色の容器に、いくつか違うラベルが貼られている。クロナゼパム、バルビツール、フルオキセチン―どれも聞き慣れない名前だった。しかも中身は空っぽで、明らかに飲み終わったあとの瓶だった。分包瓶に入っているということは、処方ごとに量が厳密に管理されている証拠。つまり、ずっと使い続けていたことが分かる。「これ、何の薬?どうして飲んでるの?」「どれも普通の薬さ。見てよ、今だって元気だろ?」「答えてくれないなら、自分で調べるから」若子が立ち上がろうとすると、修は彼女の腕をつかんだ。「若子......これは、精神を安定させる薬なんだ。うつや不安を和らげたり、気持ちを落ち着かせるための薬」仕方なく、修は真実を明かした。どうせ彼女が調べればすぐに分かることだった。ならば自分で伝えた方がいいと思った。若子はしばらく固まったまま、「これ......ずっと飲んでたの?」と訊いた。修は答えなかった。ただ、静かにうなずいた。「若子、今はもう大丈夫だよ」「本当に大丈夫なら、どうして電話で薬を頼んでたの?まだ必要なんじゃないの?どうして隠してたの?」精神科の薬は、よほどのことがなければ飲み続けたりはしない。きっと相当つらくて、どうしようもなかったのだと若子は悟った。修がどんな気持ちで薬を飲んできたのか、薬を飲む前の修が、どんな状態だったのか。若子には―想像するのも、怖かった。「若子、ただ......言う必要ないと思っただけなんだ」「言う必要ない?どうして?」「心配させたくなかったんだ」「心配するのは当然でしょ。でも、隠されてたことを後から知るほうが、もっと辛いよ。修......西也が言ったとおり、私は不幸を呼ぶ女なんだ。私を愛した男はみんな不幸になった。西也も、ノラも、みんな死んじゃった。今度はあなたまで......私のせいでこんなふうになった」「バカなこと言うな」修は強く彼女を抱きしめる。「絶対にそんなことない。お前は不幸の女神なんかじゃない。遠藤が何を言おうが、ただお前を苦しめたかっただけだ。お前がそんな話を信じる必要なんてない
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第1450話

また一週間が過ぎた。この一週間、若子は毎晩のように修の部屋へ行き、彼を寝かしつけてあげていた。卓実も一緒に連れていき、親子二人をあやして寝かせていた。まるで彼女は、父子二人の母親のようだった。修はもう、仕事に行きたがらなくなった。特に大きな用事がなければ、ずっと家で若子と子どものそばにいた。ほかのことは、全て人に任せてしまった。中でも一番幸せそうなのは卓実だった。両親がそばにいてくれて、毎日ママに抱っこしてもらって、一緒に遊んでもらえる。修は、こんな幸せな日々がずっと続くと信じていた。だが、その幸せは、ある日突然終わってしまう。若子が、いなくなったのだ。修は彼女のベッドの上で、一通の手紙を見つけた。それから修は、自分の部屋にこもって、その手紙を何度も何度も読み返し、一日中部屋から出てこなかった。【修、ごめんなさい。やっぱり私は、出ていくことに決めた。探さないでほしい。これは私自身の決断。この選択が、きっとあなたや子どもの心を傷つけるのはわかってる。でも、どうしてもこうするしかない。この間、私はずっと悪夢を見ていた。いつも夢の中で、西也が死ぬ間際に私の耳元で言った言葉がよみがえる―『私を愛した男は誰も幸せになれなかった』。本当は、西也はわざと私を苦しめるために言ったのだとわかってる。私が信じれば、彼の思い通り。でも、現実も見なきゃいけない。私を愛した男は、みんな死んでしまった。ノラも西也も、自業自得かもしれない。だけど、千景の死は私にとって壊滅的だった。そして、あなたも今、こんなふうになってしまって、何度も命を落としそうになった。全部、私のせいだ。私は、まるで呪われた存在。不吉な女。私のそばにいる人は、みんな不幸になる。だから、唯一できることは、私が愛する人や、私を大事にしてくれる人たち―あなたや子どもから離れること。私はずっと悩み続けていた。本当は、あなたや子どもと一緒にいたい。だけど、こうするしかない。特に、あなたがこんなふうになったのを見ていると、もうこれ以上、あなたを傷つけたくない。それに、子どもはあなたのもとにいたほうが、私と一緒にいるよりも、きっと幸せで安全だから。私は自分勝手に連れて行くこともできない。修、本当にごめんなさい。私はどうしても怖い。あなたや卓実をまた不幸に巻き込むかもし
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