ノラは続けた。「もう一度、考えてみてください。この世界には、グローバル社会の枠の外で、完全に外と遮断された国があるんです。経済は発展しておらず、外貨も足りない。それなのに、普通の国際貿易さえしていない。じゃあ、その外貨をどこから得てると思います?」修は、確かに一理あるな、と感じていた。ノラは言葉を続ける。「そういう国は、本当に閉じられていて、経済も崩壊寸前、生産力もない。でも、不思議と『壊す力』だけはあるんです。だからこそ、ずっと制裁を受けてきて、外貨を得る手段もほとんどない。でも、時々、外国の大富豪から金を引っ張るんですよ。そのために彼らは、その富豪を『守る』ように、自分たちの国に隠してやる。絶対に誰にも見つからないように」口の端に、皮肉な笑みを浮かべて。「そんな国では、観光客ですら行方不明になることがあるんです。ましてや、本気で罪から逃げたい人間がそこに隠れたら......絶対に見つけられません。あなたがやるべきなのは、そういう国を絞り込んで、一つひとつ調べていくことです。どんなに密閉された『鉄の箱』でも、見つけさえすれば、どこかに必ず穴はあるんですよ。参考までに、いくつか国名を挙げておきます。リヤリ、ヴィロソラ、タリン民主人民共和国。僕の知り合いの大富豪も、法の網をかいくぐって、そんな国に逃げてました。表向きは消息不明ということになってますが、実際は平然と暮らしてます。大量のドルを特別な方法で保管し、地下の組織が資産を管理して、外の目をかわしてるんです。僕も以前、遠藤さんのことを徹底的に調べましたが、彼もそういった独裁国家と関係がありました。特に、ヴィロソラとは深く」修は驚きを隠せなかった。ノラが、村崎成之すら調べきれなかったことまで突き止めていたとは。修はベッドに少し近づき、「なかなか鋭い考え方だ。で、何が欲しい?」「実は......ひとつだけ、欲しいものがあるんです」ノラの声はどんどん小さくなっていく。修はさらに身を寄せて、「何だ?」「......『弟』って、呼んでくれませんか。お兄さんがいるって......一度でいいから、感じてみたかったんです」修は訝しげにノラを見た。「お前、また何か企んでるんじゃないだろうな」「今の僕に、何を企めるって言うんですか」ノラは弱々しく微笑む。「今日で、すべてが
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