予想外の出来事だったせいか、瑠璃の心臓は一瞬だけ鼓動を乱した。目の前に倒れている隼人を無視しようとしたが、彼の濃い眉が苦しげに寄せられ、顔色も異様に悪いのを見ると、思わず彼のそばにしゃがみ込んで体温を確かめた。頬は冷たくなっていたが、額には強い熱がこもっていた。顔を近づけると、彼独特の冷ややかな香りに混じって、強烈なアルコールの匂いがまだ残っていた。酒を飲んだうえで、一晩中寒風に晒されていたのなら、発熱しない方がおかしい。瑠璃はこれ以上隼人と関わりたくなかった。救急車を呼んで彼を病院に運んでもらおうと考え、踵を返した。しかしその瞬間、隼人が彼女の手を掴んだ。その手は氷のように冷たく、まるで霜に覆われたような感触だった。「行かないで……」彼は夢の中のような声で呟き、濃く長い睫毛がわずかに震えた。そして目が薄く開かれた。「お願いだ……行かないで……」そう言いながら、再び目を閉じた。瑠璃は眉をひそめ、不快感を隠さずに手を振りほどこうとしたが、彼が握る力は想像以上に強かった。「隼人、放して」「嫌だ……もう二度と、離さない……」酔って眠っているはずの彼が、まるで彼女の言葉に応えるように、はっきりとした拒絶を口にした。瑠璃はしばし呆れ、しぶしぶながらも諦めたように言った。「わかった。行かない。でも、せめて手を放してくれない?」その言葉が聞こえたのか、隼人はまたゆっくりと目を開け、かすんだ視線の中に、夢の中でも思い描いていた彼女の顔が映った。しぶしぶながらも、瑠璃は彼がまだ意識のあるうちに、なんとか部屋に運び入れた。身長168センチの彼女が、186センチの彼の体を引きずるのは大変だったが、どうにか客間のベッドへと放り込んだ。熱を下げるために薬を飲ませようとしたが、再び彼に手を掴まれてしまった。「行かないって言ったよね……」彼は半分閉じた目で、まるで子供のように言い募る。瑠璃は苛立ち混じりに彼の手を振りほどいた。「私はあなたと違って約束は守る。行かないって言ったら行かない」そう言って彼を睨みつけた後、退熱薬とぬるめの白湯を用意して戻ってきた。だが、戻ってきたときには隼人はすでに深く眠っており、薬を飲める状態ではなかった。体温を測ってみると、やはり高熱だった。瑠璃はやむ
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