パトカーは静かに郊外へと進んでいく。道はどんどん寂れていき、私の心も同じように荒んでいった。頭の中で何度も雲香が私に放ったあの言葉がこだまする。「佳奈、あなたはどれだけお兄ちゃんを傷つけたのか、全然分かってないんだよ」雲香のくりくりした大きな瞳はもう怯えていなくて、むしろ面白がるように私を見ていた。まるで彼女は、慎一の苦しみを語れば語るほど、私が罪悪感を抱くことを期待しているかのようだった。彼女は自分のスマホを取り出し、私に動画を見せてきた。それは少し画質の悪い監視カメラの映像だったけれど、慎一が何をしているのかははっきり分かった。慎一はただ黙々と何かを書いていた。だが、ふとした瞬間、動きがピタリと止まる。まるでゲームのキャラクターが、一度に大量のコマンドを受けてフリーズしたみたいに。彼の頭の中で何かが整理されると、もうペンは書くためのものではなくなっていた。数人の男たちが彼の部屋に押し入り、腕に刺さったペンを取り上げた。そして正体不明の注射を一気に彼の体内に打ち込む。大柄な体はその場で力なく崩れ落ち、まるで物のようにベッドへ運ばれていく。その日から、彼の部屋にペンは置かれなくなった。次の動画では、明らかに慎一が雲香と何かを激しく言い争っていた。彼の怒りに、雲香の小さな体が震えていた。けれど、雲香がスマホを慎一に渡すと、彼は急に静かになり、スマホを両手で抱きしめて壁に寄りかかったまま、午後中ずっと口をきかなかった。夜になり、スマホが取り上げられても、彼は何一つ反応を見せなかった。雲香は私に尋ねた。「佳奈、どうしてお兄ちゃんがもうスマホにこだわらなくなったか、わかる?」私は首を横に振った。雲香は言った。「お兄ちゃん、こう言ったの。彼女は一度も俺に電話してこなかったって」私は深く息をつく。「どうして、彼は私に何も言わなかったの……」雲香は手錠を揺らしながら、いたずらっぽく笑って言った。「さぁね、男なんて意地っ張りなもんでしょ?」私は黙り込んだまま、雲香のスマホの写真フォルダをめくった。そこには、彼女自身の写真よりも慎一の写真や動画の方がずっと多かった。雲香が慎一にどれほど執着してきたか、よく分かった。「医者は何て?治る見込みはあるの?」私は尋ねる。「あるよ。でも、急がなくていいの。私には時間がたっぷりあ
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