7時半、凛は研究室に到着した。他の人はまだ来ていないようだった。急に、休憩室から物音がした。足音と共に、陽一は中から出てきた。視線が合わせ、二人ともその場で固まった。陽一は昨日、自分が逃げ出したことを思い出し、少し不自然だった。凛は仮寝の後ろめたさと、偶然目にしたあの光景を思い出して……やはり落ち着かないようだった。「おはよう」男が先に口を開いた。凛はすこし頷いて返答した。「おはようございます」そう言って、すぐ自分の実験台に逃げるように向かい、作業に没頭し始めた。おかげで持ってきた昼ご飯を冷蔵庫に入れるのを忘れてしまった。「ちょうど休憩室に行くところだったから、僕が入れておくよ」「……ありがとうございます、先生」昼休み、凛は実験室を離れた。研究館を出た途端、時也がポケットに手を突っ込み、少し離れた所に立っているのが見えた。男はシャツをだらしなくも気ままに着こなし、襟元は少し開いて、スラックスと合わせても見苦しくなく、むしろ独特の洒脱さがあった。「ごめん、待ってた?」「今来たところ」「高橋先生はどうしたの?」男はあるファイルを取り出し、彼女に渡した。「これは高橋先生が専門科目の期末試験用に出した問題だ。自分で書くのが面倒だから、俺が一度解いて、参考用の解答を作ったら、その解答に沿って院生に採点させようだって」あのじじい、ほんとに仕事一切したくないんだな!全部自分に押し付けてきた!でも、これでもまだマシで、一番ひどいのは——「問題は解いたし、参考用の解答も作ったけど。渡しに行ったら、あのじじい、信用できないから、お前にチェックして、間違いないか確認してくれって言い出したんだよ!」その試験の問題は、全て前回凛からただで貰ったものだ。「彼女にチェックしてもらって何か問題でも?」なんてずる賢い人なんだ!「先生がチェックすればいいじゃないですか?」明和は考えてみた。確かに、秋恵からの話だと、あの子は最近実験や論文で忙しくて、時間がないらしい。提案を受け入れようとした時、時也は何かを思い出したように、急に前言を取り消した。彼はまず真面目に頷きながら言った。「先生の言う通り、凛にチェックしてもらうのが一番良いです」そして隙を見て提案した。「先生はお忙しいでしょ
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