外はすっかり暗くなり、もうすぐ7時になる。会議も終盤に近付いた。司会者が陽一の名前を呼びだすと、陽一は会場の注目を浴びながら壇上に上がり、この学術交流会の最後の挨拶を行った。その間、スマホは二回震えたが、陽一には出る余裕がなかった。なぜか、急に胸騒ぎがして、まぶたもぴくぴくし始めた。まず交流会のいくつかの議題について簡単にまとめ、ポイントを説明した。交流会の人々はうなずきながら、興味深そうに聞き入っていた。しかし、陽一の発表をよく聞いている人なら気づいただろうが、今日の陽一はいつもと少し違っていた……普段なら細い部分にまでこだわり、順を追って説明する陽一は、この日は最短で全てを切り上げ、礼をしたあと、驚く同僚たちの視線を背に、会場を背にして大きく歩き去った。陽一はスマホを取り出し、すぐに折り返し電話をかけた。しかし向こうは――「プー、プー、プー……」ブロックされたわけではなく、本当に今は通話中なのだ。陽一が電話に出ないため、早苗は他の人に助けを求めるしかなかった。実験室の落成儀式の日、コンピューターサイエンス学科の高橋教授もお祝いに来て、凛さんと親しそうにしていたことを思い出した。高橋教授の人脈は広いから、助けてくれるかもしれないじゃない?明和は最近、コンピュータプログラミングチームを率いて、X国で大会に参加していて、早苗の電話を受けた時、会場外で焦りながら待機していた。もともと緊張で落ち着かないところだったから、凛の失踪を知り、さらに慌てふためいた。陽一の最近のスケジュールが詰まっていることは知っているから、電話に出られないのも当然だと思っていた。他の人を探すなら……ふとある人物が頭に浮かび、考えれば考えるほど適任だと確信した。「……こっちはもうすぐ試合が終わるから、抜けられない。そうだ……後で携帯番号を送るから、その番号にかけて詳しい事情を伝えてくれ。きっと力になってくれるはずだ」「ありがとうございます、高橋先生」通話が終わった途端、早苗のもとにショートメッセージが届いた。早苗はすぐにその番号にかけた――「はじめまして、川村早苗と申します。高橋先生から連絡先を教えていただき、詳しい事情を伝えるようにと言われました……実は、雨宮凛さんが……」時也は最初首を傾げていたが、「凛
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