二人の男の目には、凛が柱にもたれ、頬を赤らめ、全身を震わせながら、自分の体をしっかりと抱きしめている姿が映り込む。「凛?雨宮凛?!大丈夫か?」陽一は凛を起こそうとした。しかし凛は目を閉じたまま、まつげを不安げに震わせ、浅い眠りから覚めきらない不安定な状態だ。陽一は胸騒ぎを覚え、凛の額に触れてみると……「ダメだ!凛の熱はどんどん上がっている。このままではドアが開く前に危いことになる」時也も苛立ちを抑えきれなかった。「俺は分かってないとでも言いたいのか?ここには何もない。どうしろというんだ?」解熱剤もない、ヒーターもない、まともな風の当たらない場所でさえない。陽一は時也を一瞥すると、片手を体と直角になるように、前に伸ばした。「何がしたいんだ?」陽一はすぐには答えず、数秒経ってから手を下ろして、説明した。「今は北西の風が吹いている。凛を向かいの柱の陰に移動させよう。風を完全に遮断はできないが、少なくとも向かい風にはならない」「わかった」時也はすぐに行動し始めた。作業を終えると、時也は反射的に陽一を見た。「次は?ライターを持ってる。乾いた薪を集めれば、火を起こせる」「駄目だ」陽一は首を振った。「北と南の方を見ろ。煙感知器が設置されている。不用意に火を起こせば警報が作動し、園内全体に噴水する」「警報」という言葉を聞いた途端、時也は少し震えた。「じゃあ俺にどうしろっていうんだよ?何ができることはないか?」陽一は眉を上げた。「瀬戸社長は僕の指示に従うつもりか?」「はあ」時也は口元を歪ませた。「今はそんなこと言ってる場合か?お前は好きじゃないが、今は緊急事態ってことくらいは理解している」陽一は2秒くらい時也をじっと見つめた。「バッグに解熱剤がある。探して、お湯に溶かして飲ませてくれ」時也は呆れた。「っ!薬を持ってるのか?!早く言えよ?!」「聞かれてないから」「……」時也がバッグを探してから訊いた。「……これか?」「ああ、説明書通りの量にすればいい」時也が凛に薬を飲ませている間、陽一はバッグからガーゼとアルコールを取り出した。そして、ガーゼを細長く裂いた。時也は眉をひそめて聞いた。「何してるんだ?」「アルコールで手の平や額、耳の後ろを拭いて、物理的に熱を下げられるかを試すんだ」陽一
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