冬の夜は早く、七時前だというのに、道路の両側の街灯が次々と灯り、寒々しい夜に小さな温もりを添えていた。地下鉄の駅からB大学までの道のりには商店街があり、様々な屋台が並んで、何でも売っていた。凛が橋を渡る時、近くで焼き芋を売る呼び声が聞こえた。風で痛む目をぱちぱちさせながら、陽一の方を向いて「ちょっと待っていてください」と言った。陽一がその場に立っていると、二分後、彼女は熱々の焼き芋を二つ抱えて戻ってきた。「はい」熱い焼き芋を割ると湯気が立ち上り、一口かじると甘くて美味しいが、少し歯にしみた。手に持って少し息を吹きかけ、また少しずつ噛んでみると、甘みを感じた途端、笑みがこぼれた。凛は彼の方を向いて「甘いですか?」と尋ねた。陽一は頷いた。こんなに甘い焼き芋を食べるのは初めてだった。凛は急に得意げな様子を見せた。「でしょう?私、運がいいですよ。いつも一番甘いのが選べるのです」陽一は彼女の笑顔に影響されて、口元が緩み、目にも微笑みが浮かんだ。二人が家に着く頃には、もう七時になっていた。玄関を開けると、床暖房の温もりで全身がポカポカになった。凛は持ち帰った本とペンを書斎に運んだ。机の上には何冊もの本が重なって広がっていた。一冊ずつ片付けて本棚に整理していくと、その中の一冊が先週陽一に借りた専門書のようだと気付いた。本を手に取り、隣のドアをノックした。陽一は帰宅するとすぐにシャワーを浴びる習慣で、ちょうど浴室から出てきたところだった。髪はまだ濡れているのに、ノック音を聞いてドアを開けた。「これ、先週借りたドイツ語の原書です。返すの忘れてました」ふんわりとしたミントの香りが漂い、凛は何故か胸が締め付けられるような感覚を覚えた。陽一が手を伸ばして受け取ると、付箋が貼ってあるのに気付いた。もう見慣れた彼女の文字。左下には頭にはちまきを巻いた、元気いっぱいの表情のデフォルメキャラが描かれていた。凛は彼の顔に浮かぶ笑みを見て、自分が残したブックマークに気付き、慌てて剥がした。「あ、これ、暇な時に描いて遊んでただけです」彼の目の笑みが深まるのを見て、彼女は話題を変えた。「そういえば、最近時間ありますか?試験が終わったら、お礼の食事に誘いたくて。この間ずっと助けてもらってますから」受験のことも、あの別荘での一件も
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