深夜、佐藤邸の中。青山は冬城を佐藤茂の書斎へと通した。今夜の佐藤家には警備の姿がなく、冬城は佐藤茂がまるで心配していない様子を見て口を開いた。「俺をここへ呼んでおいて、誰かに見つかる心配はないのか?」幸江、伊藤、それに福本英明と福本陽子も最近はここに住んでいる。もし真奈と黒澤が夜中に戻ってきたら、冬城と佐藤茂の密会は隠し通せないだろう。佐藤茂は淡々と答えた。「黒澤はあなたに刺されて、今も病院で治療を受けている。当分は戻れまい」「じゃあ、福本英明と福本陽子は?」「福本英明はあなたの味方だろう?まさか裏切られるとでも思っているのか?」佐藤茂はいつも全体を掌握しているような顔をしていて、その本心が読めない。青山は冬城に座るよう勧め、お茶を注いだ。佐藤茂が言った。「こんな手を出したら、瀬川さんはあなたを完全に恨むだろう。こんな大騒ぎになれば、冬城グループの社長の座も危うくなる。本当にそれでも構わないのか?」「とっくに冬城グループの社長などやりたくない」冬城は佐藤茂を一瞥して言った。「お前が引退したくないとは、とても信じられない」佐藤家の重責を別の誰かに背負わせれば、三日ともたずに潰れるだろう。幸い目の前にいるのが佐藤茂で、これほど大きな佐藤家の家業を長年支えてきたのだ。佐藤茂は椅子の背にもたれ、「ただ、瀬川さんも馬鹿じゃない。あなたが今日急に手を出したとなれば、動機が単純ではないと疑うだろう」と言った。「真奈の目に映る俺は、冬城家の利益を最優先にする人間だ。無茶なやり方だと疑うことはあっても、動機そのものを疑うことは決してない」冬城は手にしていた茶碗を静かに置き、しばらく黙ったのちに言った。「佐藤さん、これからのことはよろしく頼む」この一件があれば、三ヶ月の期限が来て真奈が冬城グループを引き継いでも、誰も異議を唱えることはないだろう。なにしろ真奈の背後には海城四大家族が控え、彼女自身もMグループの実権を握る存在で、かつ冬城家の元女主人だ。黒澤が後ろ盾となり、さらに以前に交わした権限譲渡の協定があれば、株主たちもすぐに、この妻殺しの汚名を負った社長を切り捨てるに違いない。結局のところ、金を生み出せるかどうかがすべてであり、冬城グループの社長は冬城家の人間かどうかなど、株主たちにとっては大した意味は
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