美桜はその言葉を残して、佐藤邸を去った。真奈の胸に、言いようのない不安がふっと広がった。この女、やはりただ者ではない。そのとき、真奈の携帯が鳴った。電話の向こうから、女性マネージャーの明るい声が響く。「瀬川さん、ご注文の機械が届きました。今、1号倉庫にありますが、ご自身で確認なさいますか?」機械が到着したと聞き、真奈は口元をわずかにほころばせた。「わかった。すぐに向かう。運んできた方々に少し待っていただけるかしら?すぐ行くので」そう言って、真奈は電話を切った。ちょうどその時、階段を降りてきた福本陽子と鉢合わせた。真奈の視線が相手に止まり、上から下までじっくりと観察する。福本陽子は美しく、全身から傲慢なお姫様気質がにじみ出ていた。しかも海外の福本家の令嬢で、美容医療にも強い関心を持っている。――悪くない、むしろ好都合だ。「……な、何をじっと見てるの?」真奈に見つめられ、福本陽子は居心地の悪さを覚えた。真奈が言った。「前に、美容医療を受けてみたいって言ってたよね。一緒に行ってみない?」その言葉に、福本陽子はますます警戒心を強めて真奈を見返した。理由もなく医美に誘うなんて……怪しい、絶対に怪しい!そう心の中で繰り返しながらも、体は素直だった。次の瞬間には、福本陽子はすでに真奈のスポーツカーに乗り込んでいた。「美容医療に行くって、どこでやるの?普通の美容医療なら興味ないわよ!」福本陽子は口を尖らせて言った。真奈は言った。「ご安心を。福本さんには根本から手を入れるわ。場所も機械も安心できるものでなければ、体に使えるはずがないから」真奈のその言葉に、福本陽子はどこか引っかかるものを覚えた。やがてスポーツカーは1号倉庫の前に停まった。……これって、直接メーカーに来たってこと?「根本からって……そういう意味なの?」福本陽子は呆気にとられた。真奈は福本陽子の手を引き、倉庫の中へ入っていった。そこには数千台もの機械がずらりと並んでいる。荷物を運んでいた男たちは私服姿で、年齢は三十歳前後。体には刺青がのぞき、髪は派手な金色に染められていた。真奈は、荷物を運んでいる男たちの指に挟まれたタバコと、あの傲慢な視線を見て、一目で彼らが裏社会の人間だと悟った。今回ここへ来た以上、もし
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