彼は真奈が常に安全でいることを確認したかった。その時、玄関から執事が突然駆け込んできて、慌てて叫んだ。「黒澤様、伊藤社長、大変です!」黒澤は、佐藤茂の側近である執事が取り乱す様子を滅多に見たことがなかった。すぐにただ事ではないと察し、立ち上がって佐藤茂の書斎へと向かった。そこでは、佐藤茂の表情が硬く、顔色も幾分青ざめていた。黒澤が入ってくると、すぐに口を開いた。「部下に連絡して、すぐにこちらへ向かわせろ」黒澤は真剣な面持ちで問いただした。「何があった?」「立花が来た」その一言で、部屋全体に張りつめた空気が流れた。「どういうことだ?立花がなんで来るんだ?」伊藤が声を上げた。「瀬川さんが立花にとって、そこまで惹かれる存在だったとは思わなかった。立花は瀬川さんをまるで獲物のように見ているらしい。さっき番組スタッフが、リュックを背負った二人の男が未開発エリアに入っていくのを目撃したそうだ」黒澤は怒りを露わにした。「問題があるって分かってたなら、なんで止めさせなかったんだ!」「番組スタッフは問題があるとは知らなかった。それに、あの未開発区域には普段誰も入らない。番組が買い取ったのはその一部で、連中は境界線ギリギリを通り抜けた。番組側にはどうしようもなかった」黒澤には佐藤茂とやり合っている余裕などなかった。すぐに伊藤の方を向いて言い放った。「電話だ、うちの連中をすぐに呼び集めろ!」「わかった!今連絡する!」黒澤は他のことなど構わず、そのまま階段を駆け下りた。伊藤は慌ててその後を追いかけながら叫んだ。「遼介!もう!せめて避難用具ぐらい持っていけ!」あそこは未開発区域だ。少しの判断ミスが命取りになる!だが黒澤は何も聞こえなかったかのように、車の鍵を握って海島の方へと全力で駆けていった。その頃、真奈と冬城はすでに順調に最初の補給所に到着していた。そこは番組側が用意した小さなテントで、中にはスポンサー提供の機能性ドリンクが置かれていた。真奈と冬城は簡単に一息ついた。カメラが自分たちに向いていないのを確認すると、真奈はそっと身をひるがえし、咳を二度抑えた。冬城はすぐにその様子に気づき、低い声で尋ねた。「風邪はまだ治っていないのか?」「大した病気じゃないの。出かける前に薬を飲んだから、今日汗をかけば治るわ」真奈
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