真奈は、立花が自分の腰に回した手をちらりと見下ろし、わずかに眉をひそめた。本能的には身を引きたかったが、結局こらえて言った。「これがダンス?これじゃただの曲芸だわ」「余計なことを言うな」立花は不満げに答える。「次はおまえの番だ」「私もそのつもりよ」真奈は、再び立花に放り投げられて回されるのだけはごめんだった。その後は真奈のリードで、立花は少しぎこちないながらもワルツを踊り切った。案の定、舞い終えると周囲からは雷鳴のような拍手が湧き上がった。ただ、会場の隅にいた楠木静香だけが、密かに拳を握り締めていた。舞が終わると、真奈はすぐに立花の手を放した。晩餐会はちょうど最高潮を迎えていた。立花が手洗いに立った隙をつき、冬城が真奈の前へと歩み寄ってきた。人目につかない片隅で、冬城は冷ややかな笑みを浮かべた。「新しい男の懐に飛び込むとは早いな。黒澤が知ったら、おまえのために冬城家に刃向かったことを後悔するだろう」「冬城、わざわざそんなことを言いに来たの?」真奈は鋭く、向かい側で馬場がこちらをじっと見ているのに気づき、苛立ちながらも冬城を追い払おうとした。だが冬城はまるで離れないガムのようにそばに貼りつき、「明日の夜八時、立花家のカジノで待っている」と言い放った。「え?」真奈が反応する間もなく、冬城は突然彼女の前に立ち、馬場の視線を遮った。馬場は眉をひそめ、その位置からは二人が密着しているようにしか見えなかった。しばらくして、立花が洗面所から戻り、辺りを見回す馬場に気づいて声をかけた。「瀬川はどこだ?まだほかの企業の社長と話しているのか?」「いえ、瀬川さんはあちらです」馬場が指さした先では、冬城が真奈をすっかり遮っており、その姿はほとんど見えなかった。それを見た立花は冷ややかに鼻で笑い、歩み寄るやいなや真奈をぐいと引き寄せた。あまりに突然のことで、真奈はよろめき、危うく倒れそうになる。不意に邪魔された冬城は、不機嫌そうに口を開いた。「立花社長、俺が元妻と少し話すくらい、立花社長には関係ないだろう?」「こいつは今、俺の同行者であって、お前の元妻じゃない」立花は冷たくそう言い捨てると、真奈の腕を掴んだまま、宴会場の外へと引きずっていった。「ちょっと!立花っ!放して!」真奈の足にはまだ傷があり
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