香澄は尋ねた。「それは、いつ決まったことですか?」取締役会の人が答えた。「半年前です。ただ、手続きに時間がかかりまして、送金が完了したのは、つい先月のことです。それが、何か?」香澄は何でもないことのように言い、向かいに座る静華に視線をやった。静華の顔から、血の気が引いていった。半年前から計画があった?まさか、香澄もこの件に一枚噛んでいたというの?いや、違う……半年前、香澄はまだ涼城にいなかったはずだ!彼女は問い詰めた。「契約書はどこですか?神崎さんの口先だけでは、おっしゃっていることが事実だとは、到底信じられません。この目で確かめないことには!」「アシスタントに持ってこさせますわ」香澄はさも静華の立場を慮るように言った。「濡れ衣を着せられるなんて、誰だって我慢なりませんわ」静華の瞳が複雑に揺れる。茂に視線を移すと、三郎もまた、ひどく意外そうな顔をしていた。今の香澄の態度は、どう見てもやましいところがあるようには見えない。むしろ、自信に満ち溢れている……まさか、三郎の調査が間違っていたとでもいうのか?いずれにせよ、もう後には引けない。茂は、契約書が届くと聞くや否や、そわそわと立ち去ろうとし始めた。「俺は会社でやることが山ほどあるんだ!あんたたちの遊びに付き合ってる暇はねぇ!」その態度は、かえって彼にやましいことがあるのだと物語っていた。三郎がそれを阻んだ。「ここに来る時、何と言ったか忘れたのか?母親の潔白を証明したいと言っただろう。今になって立ち去るなんて、どういうつもりだ?」茂は一瞬固まり、さらに激しくもがいた。玄関から一歩踏み出したその瞬間、背後から不意にフォークが飛んできて、目の前の床に突き刺さった。「動くな」胤道は冷徹な表情で言い放った。「俺の命令なしに、誰も一歩も出るな!」茂は腰を抜かし、その場にへたり込んだ。香澄のアシスタントが、すぐに契約書を届けに来た。彼女がそれを胤道に手渡すと、香澄が言った。「これが、茂さんと交わした契約書です」胤道は契約書に目を通すと、三郎の方を向いた。三郎は眉をひそめて言った。「では、あの六千万円があまりに都合の良いタイミングで振り込まれたのは、どう説明するんですか?茂さんの会社が突然問題を起こし、資金繰りが困難
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