この話題はここまでだ、と胤道は話を切り替えた。「東都で何かあったのか?静華の話では、用があるそうだな」棟也は東都で起きたことを、胤道に詳しく説明し、最後にこう言った。「助けに来てほしい。あの女たちは、ずっと僕を目の敵にしている。秦野家を受け継ぐ権利が僕の手に渡るのを恐れて、必ず何か仕掛けてくるはずだ。胤道、僕は相続権を失うわけにはいかないんだ」彼の話し方はいつも穏やかで、鋭さを避けて世渡り上手な印象を与えていたが、今の口調には氷のような冷たさが混じり、その決意を物語っていた。「安心しろ、必ず助けに行く」棟也はそれでようやく安心した。「もう少し寝るよ。一晩中話していたから、よく休めていないんだ」「ああ」通話を終えたが、胤道の顔は声色ほどには晴れやかではなかった。彼は静華と離婚する準備はできていた。だが、今静華と離婚してしまっては、棟也を助けることに間に合わなくなる。しばらく考えた後、彼は身を翻してドアを開けた。静華はベッドにぼんやりと座っていたが、ドアが開く音を聞いてすぐに立ち上がり、不安げに両手を握りしめた。「話は終わったの?」胤道は彼女の緊張を見抜き、頷いた。「ああ」「どうだった?」静華は不安な顔色を抑えながら尋ねた。「彼を助けてくれるの?」「俺には時間がない」胤道は彼女の顔にしばらく視線を留めてから、逸らした。「この件が厄介なのはさておき、お前との離婚もある。涼城市まで往復するだけで、少なくとも二日は無駄になる。割に合わん。それとも――」彼は嘲るように言った。「お前は棟也のためなら、俺と離婚する機会を犠牲にできるとでも?」その言葉に、静華は呆然とした。胤道が離婚に同意してくれたのは、またとない機会だった。彼が気まぐれな男で、いつ心変わりするか分からない。早くこの機会を掴まなければ。だが、棟也の件は待ったなしだ。彼が胤道に頼みに来るからには、よほど重要なことに巻き込まれているに違いない。静華は、たちまち葛藤に陥った。胤道は冷ややかに彼女を嘲笑った。「棟也が先日、お前を庇って去っていくのを見て、どれほど仲が良いのかと思ったが、結局のところ、その程度だったというわけか」静華は息を吐き出した。「いいわ」胤道が彼女を見上げると、静華は
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