明日香は直感的に、目の前の男にまともに立ち向かうだけでは何の得にもならないと理解していた。しかも、この狭い廊下はいつ誰が通るか分からない、危険な場所だった。彼女は息苦しさと妙な不快感を必死に飲み込み、低い声で言い放った。「あなた、商談の最中でしょう?私が出しゃばる必要なんて、どこにもないわ」「メッセージさえ送れないのか?」遼一は苛立ちをあらわにし、眉をしかめながら指先で彼女の腰をなぞり続けた。その仕草には隙のない狡猾さと、彼女への支配欲がにじみ出ていた。「こんなことばかり......嫌いよ」明日香の言葉がまだ終わらないうちに、遼一は獣のような荒々しい呼吸を彼女の耳元へ吹きかけた。彼のスーツから漂う、見知らぬ女物の濃厚な香水の匂いが、彼女の胃を嫌悪感で掻き回す。「じゃあ何が好きなんだ?俺がこうしてキスするのが?」無遠慮にも彼女の顎を掴む遼一。その手に抗う時間さえ与えられず、唇を奪われた。彼から漂う酒の苦味が、舌先に淡く広がる。明日香のかすかな「やめて」という声は、かえって彼の欲望に火を注いだ。遼一の手が腰から徐々に下へ滑り落ちた瞬間、明日香の瞳は驚愕に見開かれた。「ここでは......だめ!本気で正気じゃないの!?」「余計なこと考えるな。すぐ終わる、10分で済む」「やめて、お願い......」「いい子だ」侮蔑的な言葉と共に、遼一は自信に満ちた仕草で彼女の唇端へ軽くキスを落とし、次の瞬間には無情にも服のジッパーを引き裂く音が廊下に響いた。「遼一!この最低野郎......!」怒りで彼女の全身は震えた。遼一の目に映る自分はただのおもちゃに過ぎないのか?呼べば即座に駆けつけ、逃げ場もない人形のように。そうした攻防が終わった後、30分がどれほど長く、そしてどれほど短かったか彼女にはもう分からなかった。全身の力が抜け、よろめく彼女を支えていたのは、皮肉にも遼一だった。彼はまるで自分が勝者であるかのように、優しげに彼女を拭き清める。その動作からは、不釣り合いなほどの平静さが感じられた。その瞬間、不意に明日香の足取りがふらつくと、遼一は何の迷いもなく彼女を横抱きにした。頬が赤らみ、羞恥に燃える彼女は自分でも気づかぬうちに、彼の首に腕を回していた。「どこへ連れて行くつもり?」明日香の声は震えるように甘くかす
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